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少女黙示録  作者: 狩川藍
02『非日常でもいつも通りに振舞えるのは凄いというより寧ろ恐怖だ』
10/43

『物語は主役が不幸なほどに面白くなる』

000

問2どれ程、貴方の人生が不幸で救い様がなくても立ち直る事はできますか?


001

彼女は不幸だった。

何故不幸なのかは一切合切分からないが、彼女は余りそうは感じていない。それでも他人よりは不幸だと言う事は自覚している。でもそこまで酷いとは思っていない。(今は)

だが、実際10人が10人共々全会一致で不幸だと言ってしまうほどのレベルであるのだ。

しかも一瞬で決まるだろう。名前出したら決まるんじゃないくらいには。

では、どれくらいのものか。例えを一つ。

1,000本の籤があり、その中に1本だけハズレ、まぁ外れたら死んでしまうとする。ハズレだ。見間違いではない。大分右端から左端へ行くような極端な例である。

1,000分の999は当たり。

当選率99.9%。

こんな当選率の籤など絶対にない。

普通の人でなくともこれはふざけまくりの舐めまくりとしか言いようがない。

この馬鹿にしているほどの高い当選率でも彼女は慎重になる。

ならざるを得ない。

だってそれでも外すような実力をもつ彼女なのだ。

逆に言えばそれは運がいいと言えるのかも知れない。逆に言えばの話であるが。

0.1%の確率。 

それを当てる。そして死ぬ。(例えばの話だ。実際彼女は一度も死んでいない。)その確率を当ててしまうのは決まって悪い時である。要らない強運、凶運。

そう言う状況下にあるせいで、彼女の「非情」と言った性格が生まれてしまったのだろうと予測する。

ある種、人というのは希望というものに縋らないと生きていけない。だから「努力をしなさい。努力は必ず報われる。」とか「なんとかなる」とかいう言葉が生まれた。だってこれはまだ不確かな存在に幸運が訪れることを願っているように思える。今行っている事は幸運に繋がると。

だが、彼女には効かなかった。

希望などなかった。

無駄だった。

希望があると望んで努力をした所でそれ以上の不幸がのしかかり、結果的、彼女はマイナスのままだった。 

なんとかなるとか思っても一時の不幸でそれは再起不能にまで陥ったのだ。

この事実が寿命が尽きるまで続いたなら寿命の前に精神が追い詰められて自殺してしまいそうだ。

自分を殺すのは自分になってしまいそうだった。

だから彼女の脳内に改革が起こった。

これは本能であろう。

当選率99.9%でも安心はしない。出来ないの間違い。

残りの0.1%のための用意をしなければならない。

で、ないと死ぬ。本気で死ぬ。

小さな不幸の積み重ねというのが人を精神的に追い詰めていくのだ。勿論大きな不幸一つでもだ。

それが同時に彼女の中では進行している。

そう、大きな不幸も小さな不幸も積み重なっていくのだ。その不幸がのしかかるのは常人が体験する不幸の数十倍のものが、である。

これでは身体が耐えられず、自殺に追い込まれる。

なので彼女の身体は、脳は、元も子もないことを実行した。

人間の情緖、感情と呼べるものを消去することを。

感情があるから、不幸になる。そう思うから良くないと。

これはいつ誰かに殺されそうと怯えて人間を絶滅させるくらいの暴挙だとおもうのだが、矢張りそれくらいしか対処法がなかったのだろう。原因から根絶する。

おそらくこれは仮説に過ぎない。

何故ならこの進化、不幸的進化とでも呼ぼうか…。それは半年前、中途半端な形で収束した。

以前の情緖の起伏から大凡半分ほどになって突如止まったと思うのだ。

原因は不明。

それで十分だったのか、それとも人間的情緖の良さに賭けたのか。まぁそれもあり得るのかもしれないな。人の意思によって故意に起こされる不幸な事件は、人間らしい決定的欠点が隠れていたときに見つけやすいというのもあって半分くらい残したということなのだろう。

でも、逆にこの中途半端さが空っぽの優しさ、空っぽな感情を生み出してしまった訳だ。

優しいだけの非情な少女の誕生だ。

外面だけ優しく、内面では何も感じちゃいない。正しく偽善的。

でも、一年前まではマシだっただろう。でも矢張りこれは先天的に身につけたものだとも言えるがまあ、いい。

約1年前までは常人の情緖の起伏の4分の3はあった。これも感覚の問題か。戯言だと思って聞いてくれ。

今よりは常人的であった。4分の1が欠けてはいるけども。

だが、この1年間は不幸が続いてしまったからだろう。

いや、1年とは言わず私が悪性腫瘍…癌にかかってしまってからだ。

肝臓癌であった。移植でなんとかなったが、(移植してくれた人に感謝しかない。それも空っぽかもだけど。)その癌に罹っていた際に感情が4分の3から4分の2に。約分して半分に減少した。半分どころでは無いかもしれない。わから無い。専門家じゃないからね。

不幸を不幸と思うのを低くする為に本能がそうしたのだろう。こういう事態が次々に来るという予測の元に。

そしてその予測は当たり、その後に階段から落ちたり、小指を切ったり、交通事故にあったりと、最悪だった。多分。

でも絶望はない。

死んでしまいたいくらい辛い筈なのにそんな気持ちは幾度とない。

彼女は絶望の中に生きてしまっている。嘘つき村の住人ではなく、絶望村の住人なのだ。

で、そんな不幸が立て続けに起こっているせいで、そりゃあ怪我がないわけがない。ありまくりのありで、痛みも感じる。不幸に鈍感、幸福に鈍感であるが痛みには常人並みに感じる。ここが中途半端さである。

痛覚無効ではない。治癒能力も高い訳ではない。

ちゃんと病院にいく。

何度も何度も何度も行くので医者に名前と顔を覚えられているほどには。よっぽどのことだ。

私もちゃんと覚えた。

医者の名前を覚えるなんてよっぽどだ。

確か比愛病(ひめや)先生だ。女性医の。

私の肝臓癌の手術をしてくださった先生でもある。

本当にありがたい。文字どうり命の恩人だ。

その比愛病先生が言った言葉は印象的であった。

「君は癌に罹った自分は不幸だと思っている事だろうが、まだ命を落とすなんて事はしていない。死ぬ事が不幸だとは思っていないが、不幸中の幸いと、いうか悪運が強いだけまだまだマシかもしれない。」

ベットで点滴を打っている私にそう言った。

確かにと納得してしまった私の表情を伺いながらに話す。

「でもこれは一般論に過ぎない。アイスキュロスという人物を知っているか?知らないだろう。その人物は辛い人生より死を選ぶという名言を残している。これも納得は出来る。だから、正直いって私には分からない。分からなくても生きていけるし、自分で考えに考え導くしかない。」 

そう言われても自分の考えが変化するかと言われればしない。もうこの時には私の感情は半分の2分の1にまでに減少しているのだ。だから何も思わないし、感じない。

無理に思うのなら十人十色の考え方があるんだなぁ。次回の参考にしよう。ぐらい、かな?

そして最後に一言比愛病先生は

「人生にヒントは欲しい。」

とかる〜くいって病室を後にした。

私はその言葉に一番同意したと思う。

だって私も僅かながら考えたことがある。

どんな不幸が分かるのかを知っていれば対処できたかもしれ無いのに。

世界の仕組みに苛立つ。とは言っても本気で苛立った所で常人の2分の1でしかないけど。

比愛病先生にはたわいもない、ただ思いつきで言っただけであろう言葉に共感?(彼女は共感しないのに?)を示すよりも前言に共感?の様なものを示してもらいたかっただろう。

まぁそれについて言及される事はない。

その前に退室したのだから。

でも「人生にヒント」は放何故崩無に必要なことではないだろうか。

彼女は余りにも無慈悲なほどに人生を総合的に見て不幸すぎるし、酷すぎる。

よって神というのがいたならば平等主義者ではないらしい。

神がヒントを与えてやればどれほど救えた命があったのだろうか。ヒントがあったとしても避けられ無いこともあるだろう。けれどあるに越した事はない。

いや、なくとも崩無は死な無い。

彼女は不幸中の幸いに強い。悪運が強い。

どれ程不幸であっても死な無い。死んだことがないのだから。

その生き様は正しく不死鳥のようであると言えよう。



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