最初で最後の親子ゲンカ
翌朝、死体が見つかった。
顔は原型をとどめておらず誰かは不明。
「これは、酷い....」
勿論、大会の参加者が集まっている。中には気分を害し嘔吐する人もいた。
「ナル、これ、大会中止じゃない?」
「かも、知れないね」
かも、ではなく、絶対だろう。
「これは大会中止ですね....」
やはりか....けど、観客者になんて説明する?
「ナル、ヒナちゃん」
「あ、お父さん」
「とにかく一度この場を離れよう」
「うん」「はい」
私とヒナはお父さんの後を着いていく。
「大会が中止になることは分かってるね」
「さっき聞いたよ」
「それで参加者以外にはなんて説明を?」
「ああ、それは....大会の舞台を破壊する」
え?お父さんなんて?
「え、もう一回いい?」
「舞台を破壊するんだ」
お父さんは凄く真剣な顔で言った。
「よく、見てろ。これは絶対詠唱が必要な魔法だ」
ゴクリと唾を呑み込む。
お父さんは左手を上にあげ詠唱を始める。
「神よ....私の呼び声にお答え下さい....そして光の加護を私にお授け下さい」
いつもと詠唱のセリフが違う。そしてお父さんの左手に光の線が漂い始める。
「暖かな光をありがとうございます。有り難く使わせていただきます!デウス・ザ・サギッタールー・ミニス!」
お父さんは左手を振り下ろす。
すると眩い光が辺りを包んだ。
光がおさまり目を開けると舞台は消し飛んでいた。
「ねえ、お父さん。どうしてこの魔法を?別にサンダーボルトでも消し飛ばせたんじゃ?」
「ああ、もしかしたらもう会えないかも知れないから」
「え?」
お父さんは悲しそうな顔で私を見つめ頭を撫でる。
「ど、どういうこと?」
「僕はね、これから魔女討伐クエストに行くんだ」
「ま、魔女?!でも、魔女は....」
「確かにまだ、本来の力を取り戻せていない。けど、今の魔女でも十分この世界を滅ぼせるんだ」
「!!」
「だから、少しでも弱まらせる為に僕は行く」
「そんなのお母さんが!」
「お母さんは納得してくれたよ。冒険者だものねって....」
「わ、私も行く!」
「ダメだ!!」
お父さんは大きな声を出す。
「今のナルじゃ、勝てない」
「でも、足手まといには!」
「じゃあ、僕と戦ってみるかい?」
お父さんは剣を構える。
私には分かるお父さんはあの時よりも強くなった。
「分かった」
私は剣を抜き構える。
「ごめん、ヒナちゃん。ちょっと親子ゲンカに付き合ってね」
ヒナは黙って頷く。
冷たい風が頬を撫でそれが開始の合図となった。
「はぁっ!」




