3・短気は損気とか
「あ、出てしまいましたね」
絵梨に手を伸ばした男が言うと、気短あんちゃんはハッとする。
「ようこそハーセルド国へ」
もう一人の金髪青目の高級そうな服が、彼女の手を取りながら話し出した。
「勇者様、聖女様、魔法使い殿。よく来てくれた。
私はハーセルド国の王太子ウィリアム・ハーセルドだ。
後ろの者たちは召喚の儀式を執り行った魔導士だ。
勇者殿、ここではもてなしができぬ。
宮殿の方へ案内いたそう。
さ、聖女様。」
とかなんとか言って、白い服の彼女の手を取って歩き出した。
「待って!
私は帰りたい!
日本へ帰して、もと居たところへ帰してよ!」
できるだけ大きな声を出したつもりの絵梨。
だが皆さっさと歩いて行く。
「え~~っ、いやだ、なんでよぉ。」
肩をポンポンたたかれた。
「勇者殿が陣を超えられたので、もうお返しすることはできません。
どうか落ち着いてください。」
革の男がにっこり笑っている。
絵梨はまだ陣の中だ。
「いや、だって、私、まだ外に出てないよ。」
「3人のうち1人でも出られたら変わってしまうのです。」
「そんな、あいつのせいなの!くわっ!」
絵梨は般若のようだ。だが勇者は
「俺のせい?知らんかっんだからしゃーなしだろ。
とりあえず説明を聞くぞ。」
「失礼いたす。」
「って。」
絵梨は革の男に荷物のようにかかえられ皆の後に続いた。
「自分で歩けるわよお」
じたばたする絵梨はそっと床に立たせられた。
「ローフ・マーテルモンと申します。」
「私は野田絵梨よ。」
とりあえず名乗っておいた。