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それにしても、本当に早いですね~


 夕食後、寝る前までのログイン。しかし今夜はやることがある。アダマンタイト争奪ギルドバトルだ。九堂武術道場のみんなは既に本拠地に集まっており、その時を待っている。そして『電脳遊戯倶楽部』からリットンとナリンセンが派遣されてきていた。


「それにしても、本当に早いですね~」


「申込みが速かったからな。こっちとしても都合がいい」


 そうリットンと話している所に、完全武装の集団がやってきた。なんか、全員金色に塗装された金属鎧着てるんですけど。ある意味怖い。その中で一番先頭の、なんかより一層キラキラした鎧を着た一人の金髪の男が俺に近づいてくる。その妙に顔の良い男は、変に作った爽やかスマイルを振りまいて俺に話しかけてきた。


「やぁ!君が【九堂武術道場】のソウだね!僕は【キングスロード】のギルドマスター、アーサーだ!!」


「あ、どうもソウです。よろしくお願いします」


 なにこのテンション。ちょっとついていけない。彼は髪をファサっと掻き上げると俺に告げる。


「早速だが、ギルドバトルを始めようじゃないか!場所を移動しよう!案内したまえ!!」


「あ、はい。こちらになります」


 いや本当についていけない。こういうのがロールプレイってやつか。そうして【キングスロード】と我ら九堂武術道場の一団でステップ方面へ5分ほど歩く。ここが今回のバトルフィールドだ。周辺に隠れる所は何もなし。完全に開けた立地で、正面衝突するしか戦法はない。これほど分かりやすい決着方法はないだろう。そうして俺達九堂武術道場はステップ側に更に500メートルほど歩き、【キングスロード】の集団と距離を取る。その中央地点でお互いのギルドマスター同士が対面し、ギルドバトルを申請した。


「条件はスレに書いた通り、100対100の集団戦。勝敗はお互いのギルドマスターの討伐。バトル開始は3分後という事で」


「それで構わないよ!こちらが勝てば約束通りアダマンタイトを頂戴する!!」


「いや販売権なんだけど……まあいいや。そういう事で、よろしくお願いします」


「ふふ、この勝負貰ったも同然だね!!」


 そうして申請を完了し、お互い自分達の陣地へと戻る。うん、最後までついていけない奴だった。俺達の構える陣地の中間地点にはリットンとナリンセンが動画撮影を開始している。よろしく頼むよ。そうして俺は一旦最後尾まで行ってから前方の門下生達へ指示を出す。


「全員、抜刀!」


 その号令に合わせて全員が槍を、太刀を、拳を構える。そうしてカウントに合わせ、号令をかける。


「諏訪八幡も照覧あれ!我らが九堂の剣、今真っ向から敵と戦い勝利するものなり!!」


 号令と共に全員の戦意が、殺意が最高潮に高まる。俺も自身の昂りを感じながら、カウントが0になるのを確認した。0になると同時に、アナウンスが流れる。


《ギルドバトルを開始します。【キングスロード】対【九堂武術道場】》


「総員、突撃いぃぃぃっ!!」


『おおおおおおおおおっ!!』


 号令と共に全員で突撃。全員が最高速で飛び出す。あ、しまった!俺最後尾だからどうやったって先頭に追いつけない!考えている間に敵グループから魔法が飛んでくるが、そんな見え見えの魔法当たる訳がない。というか魔法を放つのが遅い。全員の通り過ぎた後で魔法が地面に着弾する。その頃には既に先頭グループが敵の先頭に突っ込んでいた。


「《オートカウンター》!!」


 そんなアクティブスキル通用するかよ。アクティブスキルを発動した全員が首を刎ねられ、頭を槍で突き刺され、拳で顔面を殴られ沈んでいる。お前ら盾役なんだろ!もっと持てよ!俺が追いつくまで!!敵の盾に穴が空いて中央から食い破られる。おい、俺が追いつくまで持ってくれよ!そこから中央突破を狙う組と、それを阻止しようと横から挟んでくるのを抑える組に分けられる。結局中央に風穴は空いたままだ。俺はひたすら中央を走り、なんとか最前線に追いつこうとする。左右で剣戟が響くが、風穴はどんどんと広がっていく。俺の前に敵がいない!これなら最前線に追いつけるかもしれない!そう思っていたら、無慈悲な声が鳴り響いた。


「敵の総大将、九堂武術道場のアヤカッチンが討ち取ったり!!」


《ギルドマスターの敗北により、勝敗が決しました。勝者【九堂武術道場】》


 アヤカッチン!!なんでアヤカッチン!!その周囲にはドS組!!お前ら集団で一塊になって突っ込みやがったな!!ちくしょうやられた!!というか敵の大将もあんだけ余裕ぶっこいてたんだからもうちょっと頑張れよ!!そう思っていたら周囲の【キングスロード】の面々が次々と消えていく。あ、そうか。リスポーン地点に帰ったのか。俺が呆然としている間にアヤカッチンを先頭にドS組がやってきて、キラキラした視線で俺を見る。


「師範代!!このアヤカッチンが見事討ち取りました!!」


「あ、あぁ。見事だった。お前ら!勝ち鬨だ!!」


『エイ、エイ、オーッ!!』


 そうして勝ち鬨をあげて、初戦のギルドバトルは終了した。終了してしまった。俺何もしていない。そんな俺達にリットンとナリンセンが駆け寄ってくる。


「いや~見てましたけどすごい速さでした。ていうか皆さん足速すぎじゃないですか」


「ん、最初の号令かっこよかった、諏訪……なんとか」


「諏訪八幡な。武士が使う誓いの言葉だ。要するに神様に誓いを立てて必ず勝利するっていう号令だ」


「そこから撮影してた。私は空撮担当。リットンが横視点担当。動画をチャットで渡す」


 リットンとナリンセンから同時に動画が送られてきて、その映像を一応確認する。横視点では少し遠目で両方の陣営の動きがわかりやすい。やっぱり俺達が通り過ぎた後に魔法が後方に着弾してた。そして正面衝突、完全にオートカウンター意味ないじゃん。食い破られてる。空撮だとより分かりやすい。中央に円錐のような形でどんどんと突っ込んでいき、その頂点が一番奥のギルドマスターにぶっ刺さっていた。やっぱりドS組一塊になって突っ込んでやがったな。やるなちくしょう。


「よし、問題ないな。早速この動画と結果を一緒にスレに上げよう」


 簡単に結果発表と動画を添付してスレに投下する。それでは本拠地に帰るか。


「それでは皆、本拠地に帰るぞ!」


『はい!』


「師範代、帰還の間に損害報告を頼む」


 そうして帰り道に報告された損害は本当に軽微。死に戻りなし、切り傷数名。間違いなく完全勝利と言っていい。


「いやーこれこそ戦争、これこそ実戦!」


「久しぶりに心昂りましたな!!」


 師範代がそんな事を言いながら笑顔で楽しそうに歩く。あんた達俺より前に出て敵斬り殺してたもんな。そりゃ楽しかっただろうさ。俺にも譲ってほしかった。俺より大人だろ、少しは年下に遠慮してくれよ。だが立場上そんな事言えないので口を尖らせるだけで我慢する。そんな様を見てフタバが笑っていた。


「拗ねてらっしゃいますわね」


「そりゃあな。敵を一人も相手にできなかった」


「また次がありますわよ」


 そう言って背中をポンポンと叩いてくる。昔からしてくる二葉の慰め方法だ。これをされるとまぁいいか、となってしまうのが自分のちょっとチョロい所だろう。こうして本拠地に戻るとマリッサと経営陣、今回参加しなかった居残り組が飲み物を用意して待っていた。


「戦勝、お慶び申し上げます。簡単ではございますが、お飲み物と食事をご用意いたしました」


「うむ、ありがとう。それでは皆、簡単ではあるが戦勝の宴だ」


 皆で飲み物を飲み軽食を食べ始める。俺も軽く摘んでいるとマリッサが声をかけてきた。


「お疲れ様。といってもそう疲れて無さそうだけれど」


「あぁ、他愛ない相手だった。俺はただ走っただけだったし」


「あの【キングスロード】相手にそれを言えるのはあなた達くらいのものよ」


 マリッサが言うならそれほどの相手だったのか。ドS組に刈り取られていたけれど。というか今だにドS組に出し抜かれたのが若干納得がいかない。ちくしょう次は必ず敵を相手にしてやる。そう決意していると、ナリンセンがスレを確認していた。


「ん。スレが騒がしくなっている」


「お、どうだ。新しい挑戦者来たか?」


「それどころじゃない」


 ナリンセンがウィンドウを可視化して見せてくる。スレには『諏訪八幡ってあいつらやっぱり武士じゃん』『魔法が着弾する前に駆け抜けるとかアリかよ』『オートカウンターが意味ないじゃん』といった動画に関するコメントと共に『【キングスロード】ちゃんと陣形組んでるのに中央突破されとる』『これ平原でかち合う限りどのギルドでも無理じゃね?』なんていう弱気なコメントが次々と。これはこれで都合いいんだけど、なんだかな。もっと強気に来いよ。


「こっちとしては都合いいわね」


「そうですね。別にこのまま挑戦者いなくなっても問題ないのでは」


 ネスとリフレの言葉に同意しかけるが、どうなんだろうか。これで奴らの市場介入は無くなるのだろうか若干心配になる。


「これで相場が安定するならいいんだけどな」


「一応市場には流さない宣言はしている訳だし、しばらくしたら落ち着くんじゃないかしら」


「そうですね~。期待したものが流れてこないなら手を引くのでは」


 そんなものかな。スレ立ての時点で市場に流さない宣言はしているのでその効果はあって欲しいと思う。というか無いと困るんだよな、これが。そうじゃないと何のためにスレ立てして挑戦者受け付けてるのかわからなくなる。


「アダマンタイトがそんなに欲しいなら自分達で倒せばいいのにな」


「普通の人にはそれは現状難しいのでは」


 俺の言葉にリフレが突っ込みを入れる。そうだな確かに。偶然に偶然を重ねないと難しいか。となるとやはり、確実に持っている俺をどうにかするのが一番手っ取り早いのか。だったら挑戦者来い来い。


「ん、挑戦者来た」


「マジか!?」


 ナリンセンの呟きにすぐ反応する。やった、挑戦者来た!!えーとなになに。


「【白銀騎士団】か。有名な所か?」


「そこも前線組トップクラスのギルドね。名前の通り騎士の集まりよ」


「へー、騎士ねぇ。じゃあ早速こっちも書き込むか」


 俺もすぐさまスレに書き込みを行い、予定を詰める。結果、現実時間の明日の午後、ゲーム内の夕方前に決まった。うん、この時間なら都合いいな。それではこの場にいるメンバーにまた通知するか。


「諸君!次の相手が決まった!相手は【白銀騎士団】時刻は現実時間で明日の午後、ゲーム内夕方前だ!各々予定を合わせて集合するように!!」


『おうっ!!』


 よしよし、次の相手は明日の午後。午前中は鉱山ダンジョンに行けるな。そして午後には戦争だ。明日の楽しみが増えたなぁ。

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