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あ、いらっしゃいませ3人共。店長達が応接室でお待ちですよ


 午後の鍛錬が終わってからログイン。全員で『電脳遊戯倶楽部』へと向かう。店内に入ると、カウンターにはシャマールがいた。


「あ、いらっしゃいませ3人共。店長達が応接室でお待ちですよ」


「ありがとうシャマール。ログインする許可は貰えたんだな」


「えぇなんとか」


 そう言って苦笑するシャマールに手を振って応接室へ行くと、マリッサ達が思い思いの場所でメニューを開いて作業をしていた。彼女達は俺達に気付くとを手を挙げる。


「来たわね。リットン、全員分のお茶を」


「はいは~い」


 リットンがお茶を用意している間にいつものソファー席へと座る。そうして俺達の対面にマリッサ達が座ると、全員分のお茶は差し出された。お茶請けはいつも通りル○ンドだ。

 ひとまずお茶を飲みながらル○ンドを食べていると、マリッサが呟く。


「高級和菓子もいいけれど、私達にはル○ンドくらいが丁度いいわ」


「でもあの芋ようかん、めちゃくちゃ美味しかったですよね~」


「私も食べたかった」


 リットンのそんな感想に、ナリンセンが羨ましそうに言う。その事に苦笑しながら俺は問いかけた。


「また次来る約束があるからな、その際にはナリンセンも食べられるさ。それで、反物屋には連絡したか?」


「えぇ会社に戻ってすぐに。随分手回しされていたようで、すぐに作業に取り掛かってくれるとの事よ」


「それは何より。これで現実でもお前達の服が着られるな」


「ソウさんには感謝」


 ナリンセンの感謝の言葉に笑顔で頷く。俺もナリンセンのデザインした着物が楽しみだ。


「それで、リアル時間の明日だが。いよいよ九堂武術道場がやってくる。みんなには申し訳ないが手伝って欲しい」


「それはもう。ここまで来たからには最後まで付き合うわよ。それで当日はなにをすればいいかしら?」


「まずは何よりも武器を配ってやってほしい。全員を道場の建築現場まで運ぶから、そこで。あとはこの世界の服の分配とかだな」


「なるほどなるほど。あと皆さんの食事とかも用意しておいた方がいいですよね~そこらへんはどうします?」


「あぁそれも必要か。ならそれも頼んでいいか?金は出すから」


「了解で~す」


 こうして明日の予定をみんなですり合わせていく。纏めてみると、やることがいっぱいあって大変だ。


「当日は簡易テーブルとかも用意しておいた方がいいわね。リットン、準備しておいて」


「了解です~。そんなに多くは持ってませんから近隣から借りましょう」


「あとはテントの設営か。私とリフレさんでやる予定だけど、マリッサ達からも人手を出せないかしら」


「いいわよ、そちらも手伝うわ。ソウさん達がアジンからこっちに運んでくる時間もあるしね」


「はぁ、やること多いなぁ」


「ん、人がいっぺんに増えるから仕方ない」


 ナリンセンの言葉に苦笑する。確かに仕方ない。一つずつやるべき事をこなしていこう。こうしてマリッサ達との打ち合わせを終え『電脳遊戯倶楽部』を後にして昼食。今日は住人の普通の飲食店だ。

 そうして昼食を食べた後で闘技場へと向かう。いつも通りガント達を転がして鍛錬をつける。この連日の鍛錬もそろそろ一区切りだなと思いながら、みんなで夕食を食べる。


「それで、現実時間の明日には道場の門下生達が来る。お前ら明日は頼むぞ」


「任せて下さい。先達として教えられる事は教えます」


「えぇ、それが我々の役割ですから」


 俺の言葉にガントとシュンが快い返事をくれる。イロハッチとメープリーも決意の表情で頷いた。うむ、これならば大丈夫だろう。心の中で安堵してゲーム内の夕食を終え、ログアウトした。

 現実に戻って少し茶の間でお茶を飲んでから現実での夕食。その後再びゲーム内へとログインする。寝るまでの間だがどうしようかと思っていると、ネスが提案してきた。


「東の森に行きましょう。あそこなら多少はブラックドッグの狩りができるでしょ」


「そうですね、余り深く入らなくても来ますし」


「それじゃあ東の森にいくか」


 そうして3人で東の森へと入って数十分。俺達の予想に反してブラックドッグは未だに姿を現さなかった。


「……おかしいですね。いつもならブラックドッグが来てもいい頃なのに」


「そうだな。なにか変だ」


「これは、運がいいかもしれないわね」


 俺達の疑問に、ネスが意味深に答える。どういう意味かと思いネスを見ると、彼女は不敵に微笑んだ。


「ソウ、探索範囲を広げてみて。多分赤色熊がいるわ」


 ネスにそう言われ、目を閉じて探索範囲を俺の持てる限界まで広げる。するとその範囲の中に、一つの一際目立つ気配を感じた。


「……なるほど。確かにでかいのがいるな」


「ブラックドッグは赤色熊の餌になるらしいわ。だから赤色熊の周囲にはブラックドッグは現れないの」


「なるほど、そういう事なんですね」


「それじゃ、そこへ行きましょう。ソウ、先導して」


 ネスに言われるまま気配の方向へと歩を進める。しばらく茂みをかき分けると、茂みの先に大きな赤色の熊がいた。いや、かなりでかい。


「四つん這いになっていても自動車くらいの大きさがあるぞ」


「中々の大物ね。運がいいわ」


「それで、作戦は事前の通りで大丈夫ですか?」


 リフレの言葉に頷く。そうして赤色熊の討伐が始まった。


「先行するわ」


「リフレ、合わせろ」


「はい!」


 ネスと一緒に茂みを飛び出す。急加速で近づくネスに気付いた赤色熊がその場で立ち上がり、その前足でネスを迎撃しようとするが、遅い。

 ネスはその手を掻い潜り首をクナイで切り裂いた。大量の出血にこれだけでも時間を置けば失血死するだろうが、それでは遅い。

 俺はネスとは逆方向に回り込み、その横腹に一撃拳を叩き込む。ドン、という衝撃と共に一瞬赤色熊の身体が持ち上がった。


「ガアァッ!」


 苦悶の声をあげる赤色熊。これで内臓はいくらかイカれただろう。そして最後に、裂帛の声と共にリフレが突っ込む。


「はっ!」


 その槍の一突きは見事に赤色熊の胸を貫き、引き抜き後ろに下がると同時に、赤色熊は前のめりに倒れた。夥しい血を流しながら倒れる赤色熊を数秒構えを取ったまま眺め、その構えを解く。


「終わったか」


「えぇ、お疲れ様」


「お疲れ様です」


 さてそれでは楽しい剥ぎ取りタイムだ。これだけの大きさなので全員で手分けして毛皮を剥ぐ。途中ネスが腹を裂いて内臓を一つ切り取っていた。


「ネス、それは?」


「肝よ。調薬ギルドに持っていくと買い取ってくれるの。解毒した後干して薬の材料にするらしいわ」


「なるほど、そんなものも売れるんですね」


 ネスの説明に感心しながら剥ぎ取りを継続する。数分かけて、全身の剥ぎ取りが完了した。


「いや倒すより剥ぎ取りのほうが時間かかったな」


「これだけの大きさですからねぇ」


「『電脳遊戯倶楽部』も喜ぶわ。大物の毛皮だもの」


 剥ぎ取った残りの死体は土に埋めて処分する。野ざらしにして腐ったりしても困るからな。


「さてそれじゃあ今日はもう街に戻るか。『電脳遊戯倶楽部』に毛皮を卸そう」


「そうですね、そうしましょうか」


「いいわね」


 そうして俺達は今日の森での探索を切り上げ、『電脳遊戯倶楽部』へと訪れる。カウンターではやはりシャマールが対応してくれた。


「いらっしゃい3人とも。今日は素材の買取ですか?」


「あぁ、赤色熊に遭遇できたんでな」


「赤色熊ですか!それは良かったですね。それでモノは?」


「結構な大物よ」


 そうして俺が毛皮と前足をカウンターに広げると、シャマールがおぉーと声をあげた。


「かなりの大物ですねぇ!それに状態もいい、毛皮の傷も少ないです!これはいい査定をつけられますよ!」


「それじゃあ査定を頼むよ。俺達はちょっと調薬ギルドへ行ってくる」


「あ、肝の売却ですね。了解しました、またあとで」


 そう言って一旦店を出てドゥヴァリエの調薬ギルドへと向かう。調薬ギルドで肝を売却すると5000ロンの値段がついた。結構な値段だが、やはり赤色熊の素材は貴重品らしい。大変ありがたがられた。

 そうして再び『電脳遊戯倶楽部』へと入ると、シャマールが査定を終わらせて待っていてくれた。


「おかえりなさい。査定終わってますよ。毛皮と前足で8万ロンですね」


「結構するんだな」


「えぇ、汎用性の高い素材なんですが何分供給量の少ない素材なので。なので高額買取ですよ」


「分かった、ありがたく頂いておくよ」


 シャマールから差し出された袋をインベントリに入れて金額が合っているのを確認する。よし、これで今日はおしまいかな。


「それじゃ俺達はこれで。あぁ現実時間の明日、よろしく頼むよ」


「えぇ。ウチの店総出でお手伝いしますから」


「それは助かるよ。それじゃまた」


「はい、またいらしてくださいね」


 そうして『電脳遊戯倶楽部』を出て宿へと戻る。自室でログアウトして、今日のゲームを終了した。

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