寒天が固まるのを待つ
「寒天を冷やしましょう」
これで、寒天水が固まるんだね、あっ湯気出てるから寒天湯か?
「ふふっ、では冷たい所に、寒天水を入れましょう」
「どれくらい待つの?」
「保存する場所によりますが、今回は冷たい所におきますので、一時間といった所ですね」
「一時間でござるか~」
「え~~待つのはやだな~~もっと早いのがいい~~」
メスガキはせっかち。
「早いのがいい……なんだかエッチです……」
「そろそろ心配になってきたでござるね……」
「でも一時間も待つのはちょっと不満でござるね~~」
「ほっほっほ……その気持ちはわかるがの」
天代がほっほっほと笑いながらあらわれる。
「この待つ時間も考えようによってはよいものじゃよ」
天代が口を開いた。
「菓子には固める時間というものが往々にしてある。片栗粉を使った葛餅やゼラチンを使ったゼリー……天草……を使った寒天もそうじゃの」
「そうですね、天代様」
天代の言葉を忠実に肯定する風守のお姉さん達。
天代が語る天草の部分のニュアンスに少し強さを感じたものの、言ってる事はその通りである。
「菓子が出来上がるまで待つ、その時間は菓子の事を考えるのじゃ」
「考える、でござるか」
「うむ、待つのじゃ。待つ時間が会う気持ちを高めてるのじゃよ」
「ほぉ~なんだか含蓄ある言葉でござる~~」
「さすがです、天代様」
「あはは~~♪
なんだか恋の話みたいだね~~♪」
「さて、どうじゃろなぁ」
淡く笑う天代。
「ここに虚神がいたなら……」
「『待つ時間それもまた良し』、というのじゃろなぁ」
そんな話しをしながら、風守の女達は涼菓を待つのであった。