妹の葛藤を聞いて自分がまだまだだと実感したりする
翌日、俺はいつも通りの朝食をとっていた。普段なら早く済ませれる朝食も今日は一段と遅かった。
「はぁー・・・なんで朝からこんなこと考えないといけないんだ?」
「ちょっとそこのバカ兄貴、、クソやかましんやけど。独り言言うならトイレに行ってくんない?」
「あのなぁ、独り言が聞こえるぐらいに大きい声出てたのはっ悪かったとしてもだ、トイレに行けってのはないんじゃないか?あと、最初のバカは要らないよな!!」
妹の朝陽は俺より二つ下だが彼女の発言力は本当に凄い。一度親の代わりに授業参観に行ったことがあるのだがその時目にしたのは彼女の友達がたまたま机に置いていた男子のイヤホンを落としてしまい、それが男子に嫌がらせで落したんじゃないかという誤解で苛めの対象になっていたことだ。私はその場面しか目にしなかったが、その後の数日も苛めが続いたそうだ。本当は当たってしまっただけだと言って誤解を解いたらいいだけなのだが、しかしここでも「陽キャ」と「陰キャ」という隔たりがある。こんなことを言ってしまったら彼女の友達を傷付けるかもしれないが妹と比べて遥かに消極的な子だった。元から正義心の強い妹は友達を苛める彼らをほんの一日で粉砕したそうだ。後に本人から聞いたのだがもうそれが恐ろしくて恐ろしくて、身震いするほどだった。
内容はこうだ。まず最初に友達本人からわざとやったのか偶然やってしまったことなのかを聞き、それを彼らに何故苛める前に事情を聞かなかったのか暴力的な言葉攻めで黙らせ、最後に彼女にしたのと同じように罵倒しクラスに広めることだ。その後男子は彼女に謝り事は丸く収まったそうだ。
「お前もうちょっと口をよくしたら本当に良いやつになるのにもったいないなぁ。」
「うっさい、バカ兄貴。うるさくて鬱陶しいのはイライラするけど、ねぇ私の性格ってどう思う?」
「お前の性格はよく分からん。けどなお前の決断力と実行力は本当に凄いと思う。なぜなら友達を救ったんだからなぁ。まぁ方法が残酷すぎだけどな。」
「仕方ないでしょ。あぁするしか友達を救えそうになかったから。一時的に止めさせるのは何でもよかったんだけど、あいつらは何回も何回も繰り返すと確信したから。」
「そういう隔たりってどこにでもあるんだな。で、お前はどこなんだ?」
「私はどちらかと言うと中立的な方かな。けど立場的には若干陰キャなんだけど・・・」
「お前みたいなやつが陰キャなのか?それは信じられんなぁ。」
俺が訝しげに妹を見ると「あぁ、言い方が悪かったかな。私はね中立的だけど、友達を守るには私自身も武装して強くならなきゃならないの。じゃないと陽キャ達の波に呑まれてしまう…私自身が、、、そんなのは私には出来ない。」
自分が自ら陰キャ側に入れば陽キャの波に呑まれることはない。それは恐らく正しいことなのだろう。しかし、妹の姿は俺からはとても我慢して頑張って無理しているようにしか見えなかった。だから・・・俺は
「あんまり無理するなよ。俺も出来るだけ相談に乗ってやるよ。」
「バカ兄貴にそんなこと言われたら恥だわ。私。まぁ、その・・・ありがとう。そうなったらよろしくね。」
「おう。」
こうして妹との朝食の会話は終わった。