色鮮やかな日常は案外簡単?ただの思い込みか・・・
教室での話し合いが終わると、俺はなぜか四人と帰ることになった。女子四人が前を歩き俺が後ろで彼女らをついていく感じだ。これは俗に言う陽キャみたいなもんじゃないのか。我ながら今のこの状況は誇らしい。
だがしかし、俺は彼女らの姿と比較すると自分が全然陽キャじゃないと言うことが歴然とした。俺は陽キャにはなれないな。そういや一条は俺に陽キャと陰キャの真ん中を教えてくれるみたいなこと言っていたけど本当に教えてくれるのか。
そんな俺の考えを知らないだろう彼女らはさきほどからガヤガヤワイワイとトーキングしているのであった。
なかでも一番多いのはやはり俺の廊下前での様子についてだった。しかも主に俺のディスリがほとんどだった。
「本間に教室の前で縮んでた山崎君、怯えてる子ウサギみたいでさぁ、一瞬可愛ささえ感じたわぁ。」
「まみー、私の好きな動物一位うさぎと山崎君を一緒にしないでよ。後山崎に可愛さなんて感じるわけないじゃん。」
「それはたしかに言えてるわね。麻衣、山崎君はうさぎより蛙の方がお似合いだわ。」
これは聞き捨てならんぞ。ここまで酷くディスられるとさすがに黙っては居られない。
「ちょ、ちょっと一条さん蛙っていうのはそれはあまりにも俺に失礼じゃないかな?みきの発言はまだ許せるとして」
俺は一条の顔を数秒の間睨み、悪巧みの笑みを作り---
「小説の続きは見せなくていいんだな?」
と小声で言った。
一条は少し本音交じりの声で
「悪かっったわ。さすがに蛙は言い過ぎたと思うから反省するわ。なにせ続きを早く見たいもの。」
「大宮、俺って普通の人になれるかなぁー?」
「っはははは!!!それじゃまるで山崎君が普通の人じゃないみたいやん?!!あぁー本間におもろいわぁー、腹筋痛いわぁ。」
大宮は満足するまで笑い続け、やがて俺には眩しいほどの満面の笑みで
「大丈夫や、君が理想とするような普通の人にきっとなれるよ」
と言い、女子たちが話している方へ駆けていった。
そうして話しながら歩いていると皆の帰る方面の分岐点石橋駅に着いた。今までは一人でしか帰っていなかったのでこの駅に着くのは十分程しかかからなかったが、こうして多数の人と帰るとまぁまぁかかるもんなんだな。
後こんなの青春みたいで多少は憧れもしていたのでこれも良いなと思い、ふと笑みが零れた。
大宮とみきは商店街を通り池田方面へ、京は梅田方面の電車に乗り、俺と一条は宝塚方面の電車に乗り、今日
という言う普通の一日が過ぎようとしていた。
「いや、今日はいつもとは違ったな。」
俺のこの小さな呟きは誰にも聞こえずにサラリーマン同士、学生同士の笑い声などの大きな声に掻き消されてしまった。
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「何口をポカーンと開けてるの?さすがに好きなプエルト先生だとしてもこんな格好悪い顔されていたら引いちゃうよ?もはや減滅の域までいっちゃうわね。」
「最後のそれは余計だったと思うんだが。ちょっとだけ嬉しくてな・・・今日の事が」
まだ電車が来ないのでベンチで二人腰かけている。今この状況では一条と俺は仕事モード(オフモード)になっているため、会話は学校の時よりもよりラフになっている感じだ。こんなのを後の三人が聞いたらびっくりするだろうなぁ。
「まぁ、学校のあなたは普段皆と帰るとかやってないってのは分かってたからこうなるだろうとは思っていたけど、それにしてもチョロイもんよねぇ。」
「え、チョロイ?それは何を見て言っているんだ?」
「あなたの行動とかさっきの言葉よ。」
今まで恋愛や友達などに興味がなかったから何がチョロイのかいまいちピンとしなかったが、彼女いはく俺は
チョロイのだそうだ。
「あなたこれからはもっと心身共に強くならないといけないわ。じゃないと直ぐにあなたの心がズタボロにされるわ。」
「え、なにそれ・・・ズタボロにはされたくないなぁー。なんか対策法はないのか。あ、いっその事じっとしていたら酷い目にあうことはないか。ふぅ。」
これで一旦落着か。
「あなたそれで許されると思うの?まさか放課後のこと忘れたとか言わないでしょうね。あなたには私が自慢できるぐらい生活面でも完璧になってもらわないと困るんだからね。諦めて心身共に強くなりなさい。そしたらそこま
でズタボロにされることはないわ。」
「なぁ、自慢できるほどってさっきから言ってるけど、それって俺に彼氏になれって言ってるのか?どういう真意で言ってるんだ?」
「そ、それは御想像にお任せするよ。ねぇ、それよりも喫茶店で一息つかない?」
「良いな。賛成だ。」
俺と一条(担当編集)は電車に乗り、帰宅するのであった。