豪快に笑う彼女の武器は向日葵のような笑顔一
一条と図書室で話し合うぐらいでしか用がなかったので俺も教室に戻ることにした。時刻は四時になったばかりだ。この時間なら教室で一息つき、それから家に帰宅したらちょうどいい時間になるのではないか。
まぁ、教室に戻ってもどうせ俺一人だけなんだろうからゆっくり向うとするか。私の所属している二年A組は西側に建っている一号館の三階の奥にある。ちなみに図書室はというと一号館の四階の奥に設置されている。
そんな奥同士ということもあり、三階と四階を繋ぐ階段が備えられており行きも帰りも一分あれば足りるぐらいだ。
図書室を出、こつこつとリズミカルな音で階段を降りると教室が見えてきた。そこで俺は今日一息つくことが出来ないという事実を知ってしまった。
教室から多数のクラスの人が談笑しているのがきこえてくるではないか。驚いたもあるし、けど一番はこの陰キャな俺が多数の人達が談笑している教室に入るのがものすごい抵抗があるということだ。やっぱり陽キャには敵わんな。とにかく誰か俺の代わりにドアを開けてくれ---。
すると、廊下でたまたま歩いてたのか分からないがいつも元気はつらつな同じクラスの女子がにやにやしながらこちらに近付いてきた。
「どうしたんや。山崎君こんなところでじっとして。誰か待ってる人でも居るんか?」
そう。そうだ。まさに今俺はドアを開けてくれる人を探してではなく、待っていたのだ。
「い、いえ別にそんなのではないんですけど。」
「あーぁ、分ったぞ。君小さい子が親戚のおじさんとかおばさんに初めて会った時とかに縮んでしまう人見知りいうやつやろ。」
この人えらく喋るし、遠慮も何もねぇなぁ。陽キャおそるべし。ていうか早くドア開けてくれないかなぁー。腕時計を見れば四時十五分を指していた。
「あー。ごめんごめん。邪魔したみたいやな。あのさぁもしかしてなんやけど荷物取りに行こうとしてたけどあまりの教室の賑やかさにびっくりして入れんかったとかそんなんちゃうやろな?もしそれやったら大笑いやで。」
彼女は尚もニヤニヤしながら俺の顔を見つめ、その表情はというととても上機嫌のようだった。
そして・・・俺の表情はひどく動揺していた。そんな表情を見た彼女は今までより格段にニヤニヤし始め遂には
はははははと大笑いするのであった。それも笑ったが上に涙が出るほどだ。
「山崎君、それはおもろ過ぎやって!!本間面白いわ。しゃあないなぁ。大笑いさせてくれたお礼として一緒に教室入ったるわ。」
「ちょ、ちょっとそこまで笑わないでよ。今回は人が残ってるとは思ってなかったから。ただそれだけ。」
「今回はっていうことは山崎君はいつも人が居なくなる時間までどこかでゆっくりしてるんやね。そんなに人見知りなん?」
「なんていうかものすごく恥ずかしくなって、上手く人と喋るのが出来ないんよね。」
本当にこれが世の言うくそ陰キャなんだろな。きっと今もこの子に変に思われてるんだろな。それは当然の事実であり、受け止めなければならない。だが、別にそれが情けないとは思わない。そんなことをぼやいているとふと
「くそ陰キャだよな。俺って」
と心の声が漏れてしまった。しかし、それは目の前の少女によって温かいものへと変わった
「それは仕方ないことだよ。最初から上手くいくはずがないから。だから自分自身だけは責めたらあかんよ。」
「う、うん。」
「じゃあ、教室入ろっか。」
そういやこの人の名前聞いてないなぁ。
「なぁ、名前教えてよ。聞くの忘れてた。」
「せやね。」
彼女はまた俺に飛び切りの笑顔を見せこう言うのだった。
「私の名前は大宮麻衣よろしくな。折角やから麻衣って呼んでくれてもいいで。後靴箱まで行こな。」
折角だが下の名前でいきなり呼ぶのはハードルが高いっきゃないので普通に苗字で呼ぶことにしよう。
陰キャには何~さんとかで呼ぶのが精一杯だ。