大宮麻衣らしくあるために
休み時間俺は一条に言われたように大宮、みっきー、京そして一条と共に過ごしていた。話の内容は来週の火曜日から行われる期末テストについてだった。あぁー全く意識していなかった、確かに来週から期末テストなのか。どうりで教室の雰囲気がいつもと比べてしーんとしてるわけだ。そしてこのグループの中にもテストを危機としてる人が居た。
「テスト一週間前とか全く意識してへんかったわぁー。今回十教科もあるとか詰みやん。あぁー、嫌やなぁ。」
「そんなこと言ってても結局はどの教科も六割以上取れてるのだから詰みとか言わないでよ。まみーが六割以上で詰みだったら私は終わりじゃん。」
そう、大宮は詰みだとか言っているが実際は彼女七割後半を普通に採り余裕なのだ。しかも最もびっくりすることは十教科のなかでも英語の能力が突出していて学校の筆記テスト然りリスニング能力、スピーキング能力も完璧で英検では一級を所持している。学校の定期テスト及び学年模試では常に英語の順位が一位である大宮が無理だとか詰みだとか言っても何の説得力もない。誰も彼女には敵う筈もなく学校では敵わないのは当然と決定づけされてるぐらいだ。
「でもみっきー私よりかはそこでいつもひょうひょうとしている香音や山崎にも言ったってぇーやぁー。私は平均
七十やけどあの人らは九十以上やねんで。自慢してもいいぐらいやのに...いつも大謙遜なんだから...ちょっとなんだかなって思っちゃうんよね。」
少し曇った顔をした大宮は俺の方を見つめ---やがて…「どれもこれも山崎に敵わんのか...私は」と俺にしか聞こえない声で呟き、またいつもの笑顔に戻っていた。だがその笑顔はいつものではないと俺には分かった。
今の彼女の姿や眩しくもない彼女の笑みを見せられても俺はトキメカナイからだ。彼女はあぁでなくちゃならない。
「テストだけが全てじゃないし、それに...それに自分と他人を比較して何が面白いって言うの?そんなの続けていたら自分の事が嫌いになっちゃうし、あなたは立ち上がれないわ。麻衣勝ち負けなんてどうてなるじゃない!!」
一条の言っていることは正しい。自分と他人を比較して何も良い事なんてない。それで良いことがあったのなら話は別だ。例えば国民栄誉賞をもらったとか一年間買い物が無料だとか…。それなら別に他人を比較することなんて躊躇なんてしないだろう。だがどうだ。結局良い事なんてないのだ。比較された相手は幸せか?片方が幸せでも両方はどうなんだ?そんな都合のいいことなんて起こるはずがない。現実はあいつが当たり前のことを出来るのに、なんでお前は出来ないんだ。とかそんな人の事を知らずに自分勝手で言ってくる奴が大半だ。しかし
勝負は違う。確かに負けたら悔しい、悔しくて悔しくてもうこんなもんやってられるかと思ってしまう時もある。けど勝負の結果が良い形で終わらなくとも勝負に至るまでの努力は無駄ではない。それは多少なりともいい思い出になることは間違いないのだ。
「一条、一つ間違いがある。大宮よく聞いてほしい、先ず自分自身を憐れむのはやめてほしい。俺は大宮の嘘偽りのない最高の笑顔に惚れたんだ。ただ、そんなので大宮の心が救われないというのなら俺は勝負までやめろとは言わない。俺は大宮の最高の笑顔をいつも見ておきたいからな。」
「っはははは、なるほどね!!山崎君勝負をまさかそういう風に使うとはさすがね。確かに勝ち負けに拘っている人の笑顔はそれが多少汚くとも輝いて見えるわね。まぁ、それなら賛成するわ。」
「はぁーあ。やっぱなんか悔しいなぁ。憐れんでるように見られてたとか可哀想な奴やん。はははは...」
あれ?俺が勇気出して笑顔に惚れたって言ったのに無視されたの?ちょっとそれはあまりにも哀れ過ぎる。その時の俺の顔はきっと複雑だっただろう。驚きとがっかりとで。そんな俺の顔を見て可笑しく思ったのか京は
「あははは、せっかく勇気出したっていうのに完全スルーとかしんど、ははははは。」
「ぐぅー、心の奥底からムカついてきたけど、まぁいいや。大宮の笑顔が見たいだけだから。」
「え、それってどういう事?ねぇ、山崎もしかして私のこと好きなん?好きやったら...そう言ってくれる方が嬉しいんやけど。」
ニマニマとしているのが一人、さっきからゲラゲラ笑っている人が一人、物凄い内心を覗うようにジロジロと見てくる人が一人、なんかものすごい怖い顔をして睨んできてる人が一人。
「とりあえず俺は大宮の最高の笑顔が見たいだけなんだ。」
「あぁー、好きかどうかは言わないんや。なんやめっちゃ期待しとったのになぁー。」
そうニマニマしながら言っている大宮は今度こそ最高の笑顔になって俺を見つめるのであった。
いや。。。そんなに見つめられると本当に好きになっちゃうから。まぁ、好きになりかけてるかもしれないけどさ。
「休み時間終わりのチャイム鳴るから私ら席に戻るな。じゃあ、また昼休憩やね。ザッキー」
あ、あだ名が山崎からザッキーに変わってる。
「おう、後でな、大宮」
「ザッキー、もう私らは友達やねんから大宮とか堅苦しい呼び方は辞めてマミーって呼んでくれると嬉しいな。...
さっきはありがとう。私どうしても自分と他人の事比較してしまうところがあったから...。それと学校終わった後付き合ってくれへんかな?」
俺は出来るだけの笑顔で「分かった」と言い、自分の席に戻った。正直こんなのやりたくねぇー。本当大宮スゲェわ。
更新遅くなって申し訳ありません。
今回はテスト一週間前の教室を背景にし、大宮さんの事を中心とした話にしました。
次回はこの続きからになります。
乞うご期待を。