ネガティブな思考は考えるだけ無駄
朝の休み時間は彼女ら四人と話していると知らない間に終わろうとしていた。教室にはさっきまでは俺を含めての五人しか居なかったが、生徒が続々と増えてきていた。各々が各自の座席に座り、近くの人と談笑していた。俺も早いうちにこの陽キャ達のように出来ていたらもっとこれまでの学校生活が楽しかったのだろうか。いや・・・恐らくそれはなかったことだろう。俺はあまり他人に興味を持たなかった。持たなかったというよりも持たなくても生きていけるからだ。こんなことを言うと一条にそんなのただあなたが意地を張っているだけでしょうとか言われそうだ。そうだがこれは本当に思ったことなのだ。だからくれぐれも追求するなよ。
するとだ。一条がまた顔をニヤニヤし、腕を体の前で組みながらふーん、ふむふむと俺の前で呟いていたのだ。
「な、何?どうしたの?」
「別に大したことは思ってないわよ、私があなたに言うことがあるとするならばただあなたは不器用なだけでしょ?後もう一つあるのだったら面倒だから?とかかしら。」
違う。他人に興味を持とうとしなくて、持たない方が気が楽なだけなのだ。面倒とか不器用とかそんなのではない。
「あなたが今どう思っているのかは知りたくもなくても知ってるわ。なぜかってあなたがそういう臭気を出しているから分かるのよ。別にそんなに思う必要ないじゃない。あなたには今喋れる友達が居る。今はそれだけで十分って思えばいいのよ。今から背伸びして頑張ろうとか思う必要は考える必要はないわ。そんなの辞めなさい。気持ちが萎えて生きる気なんか無くなってしまうわよ。」
「生きる気がなくなるとは言い過ぎだろ。」
「いやいや、本当の事よ。少なくとも私の見てきた中では死ななくとも痩せこけている人は何人も見てきたわ。」
死んでいる姿も見たくないが、痩せこけている姿も同じくらいに見たくない。彼らは一体何が原因で痩せこけたのだろうか。
「痩せこけたっていう表現で本当に良いんだろうな?」
「まぁ、もうちょっと的確に言うならば一瞬にして老けたとか?」
「因みにその原因は何なんだ?」
「大体が失恋よ。立ち直れずにそのまま引きこもってポテトになってしまうのよ。」
「そんなに立ち直れないものなのか?」
「もうそろそろ始業のチャイムが鳴るけどまぁ別にちょっとぐらいは良いか。あなたは問題ないと思うけど、ずっと一途な人は傷つきやすいのよ可哀想なことに。」
一途な人って大変なもんだな。俺は恋愛なんか一切したことないから分からないから彼らの味方にも励ましも言える立場ではないが、、老けるのだけは嫌だなぁ。さらに自分の格好が哀れになってしまうじゃないか。
「安心しなさい。あなたをそんな無残な目にさせようとはこれっぽちも思ってないわ。あなたには私と同等ぐらいのノーマルになって陽キャ達を木端微塵にする役目があるのだから。あぁ、もうチャイム鳴るから私は席に戻るわね。」
俺はそんな一条の後姿を目で追っているのと同時に
「俺も一条が担当編集じゃなくなったらかなり落ち込むのだろうな…」
と呟いているのを遅れながらも気づいた。さぁ、授業の準備をしようか。
このとき山崎は一条が彼の発した呟きを聞いて動揺しているのを知らずに。