異世界転生したら、不細工な悪役令嬢になってしまった私の話。
前世の私は可愛かった。
自慢? いいえ、事実です。
街を歩けば数歩おきに芸能事務所からスカウトされ、登校すれば日替わりで学校中の男子から告白された。
毎日がバラ色の様な生活。
そんな私が、転生したら
「こんな不細工になっちゃったなんて!」
前世では大きく真ん丸だった瞳は、細くなり。
柔らかだった胸は、小さく平らに。
小柄で愛らしい体は、高々と存在を主張して。
ふわふわとウェーブがかっていた栗色の髪の毛は、刺さりそうな程真っ直ぐの直毛に。
「もうこんな姿耐えられない! それにお友達も出来ないなんて、どうしてよ!」
「また癇癪を起こしてるの?」
「ルー君!」
ルー君は、私の婚約者。
不細工な私と唯一仲良くしてくれて、綺麗だって褒めてくれる優しい人。
「リリは綺麗だよ。前にリリが話してくれた前世のリリの姿も可愛らしいけれど、僕は今のリリが大好きだ」
「でも、またお友達が出来なかったの……」
「可哀想に、きっと君が綺麗だから皆近づけないんだよ。僕の言った通りにしているんだろ? それならその内友達が出来るさ」
「うん、ルー君が教えてくれた通り、人と話さない様にしてるし、姿勢良くしてるし、皆と目を合わさない様に気をつけてるよ!」
「そうだね、リリの見た目でその話し方だと皆ビックリしてしまうし、猫背は印象が余り良くない、仲良くない人と目を合わせるのも失礼だからね。ちゃんと覚えていて、偉いね」
「ありがと、ルー君!」
***
僕の可愛いリリ。
彼女は自分が可愛くないと嘆くけど、それは大きな間違いだ。
細いと嫌がる瞳は切れ長で綺麗だし、胸や身長だってスレンダーでスタイルが良い。
少し細すぎて心配になる位。
髪だってこの国では珍しいストレートのプラチナブロンド。
彼女の言う前世の彼女は確かに可愛らしい姿。
でも、今の彼女はそんな物を遥かに超越した女神の如き美しさなのだ。
綺麗と可愛い、その方向性の違いに彼女は気がついていない。
幸いだったのは彼女が素直で、僕の言う事を真に受ける純粋な子だった事。
君は知っているかい?
陰で悪役令嬢と呼ばれている事を。
美しく、高潔な君は見る者から見れば恐れすら抱かせる。
僕の言った通り、人と話さず、目も合わせない事も上手く働いて、他人を見下してると皆勘違いしてくれた。
そう、それでいい。
君がこんなに愛らしい人だと知っているのは僕だけで。
誰にも知られず、僕の近くで君が何処にも羽ばたかない様。
いつまでも、君はそのままで。
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宜しければ連載中の拙作「私モブだけどヒロインの代わりに逆ハーして世界を救ったら、最推しと恋愛しても良いよね!」もご覧頂けると幸いです!
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