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147 勝負の時(3)

「……やはり、気づいていなかったのか」


 どこか呆れたようにそう零すジェフリーに、メリアローズは憤慨する。


「だって……あなた、昔っから私に会うと嫌味ばっかり言ってきたじゃない! 私のことが好きならどうしてそんなことするのよ!」

「メリアローズさん、男には少しそういう傾向があって……」

「ちょっと、何であなたまで庇おうとするの!?」


 ぷりぷり怒るメリアローズをウィレムが宥めていると、ジェフリーは苦笑を漏らす。

 そして、メリアローズとウィレムに背を向けるとさっさと歩き出した。


「……約束は守ろう、ウィレム・ハーシェル。それに、メリアローズ」

「な、何かしら……」

「……幸せになれよ」


 そう言って、ジェフリーは唖然とするメリアローズの前から去っていった。

 その姿が宵闇に紛れて見えなくなったところで、ウィレムはそっと傍らのメリアローズに声を掛けた。


「メリアローズさん……」


 その声に反応するように、メリアローズがそっと顔を上げる。

 薄闇でもぼんやりと彼女の表情が見える。

 白い頬はわずかに薔薇色に染まり、アメジストのような瞳はうるんでいた。

 ウィレムはそっとメリアローズの頬に指先で触れ、そして――。


「こ・ん・な・夜中に!! いったい何やってるんですかあなたは!!」

「いひゃいいひゃい! ふぁにふんのよ!!」


 柔らかな頬をぐにぐにと引っ張ると、メリアローズは情けない声を上げる。

 だが、ウィレムはいつになく憤っていた。

 現在の時刻は真夜中過ぎ。ここは王宮の敷地内とはいえ、ほぼ人通りのない練兵場。

 どう考えても、公爵令嬢がたった一人でうろうろしていいような状況ではない。


「また一人でこんな風に歩き回るなんて……どんな危険な目に遭うのかわからないのに――」

「あー、ストップストップ。一応一人じゃないんだって」


 その時割って入ってきた声に、ウィレムは俊敏に振り返る。

 そこにいたのは、少し申し訳なさそうな表情をしたバートラムだったのだ。

 いったいいつの間に……と、ウィレムは驚いてしまった。


「メリアローズは俺がここまで連れてきたんだって。だからあんまり責めないでやってくれ」

「お前は、何で……」

「メリアローズはこの一件の当事者だ。ちゃんと何が起こってるのか知る権利がある」


 にやりと笑ったバートラムに、ウィレムは内心で舌打ちした。

 おそらくどこからかウィレムとジェフリーの決闘のことを察知したバートラムが、独断でメリアローズを連れてきたのだろう。


「そうよ! 私に黙って一人で勝手に決闘なんて……私、怒ってるのよ!」

「うっ……」


 復活したメリアローズにもきゃんきゃんと怒られ、ウィレムは言葉に詰まってしまった。

 ウィレムはたった一人でけりをつけるつもりだった。

 だからあえて誰にも知らせずにここまで来たのだが……逆の立場で考えれば、当事者でありながら勝手に賭けの対象にされたようなものだ。

 メリアローズが怒っているのも納得である。


「その、すみませんでした……」


 ここは誠心誠意謝っておこうと頭を下げると、メリアローズは不安そうに眉尻を下げた。


「私、心配したんだから……」


 どうやら、思った以上に心配をかけてしまったようだ。


 そっと体を引き寄せてもメリアローズは抵抗せずに、身をゆだねるように力を抜いた。


更新遅くなって申し訳ありません……!


【お知らせ】

本作のコミック2巻が12月15日に発売予定です。

メリアローズとウィレムのデート回! 真の悪役令嬢登場! …な2巻です!

イタチサナ先生の細やかなアレンジが随所に入っておりますので、原作既読の方も是非読んでみていただけると嬉しいです!


公式サイトやAmazonさんでは既に表紙も出ております。

見知らぬイケメンがどーんとセンターに陣取っていますが誰なんでしょうね?(すっとぼけ)

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― 新着の感想 ―
[一言] ちょっと男子~! 好きな子に意地悪するのが許されるのはもっと手前の年齢までだぞ! いや、実際は許されてなどいませんが。 気を引きたいなら優しくしたほうがいいはずなのに、それに気付かないから当…
[良い点] ジェフリー、最初から素直に接してればよかったのに、ひねくれ男子はしょうがないですね〜。 無事にウィレムが勝ってよかったです! [一言] コミック2巻の謎の金髪男子、思わずキュンとする主役級…
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