表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/166

 机の中も異世界 ②

♢17♢


 たかーーい天井。上は屋根ではなくガラス張り。

 そこから眩しいくらいに太陽の光が降り注いでいる。

 しかし、ガラス張りなのに不思議と暑さはさほどでもない。ガラス張りなのに。超眩しいのにだ。

 上の感想はこんなところだ。続いて首を左右に動かしてみよう。


 まず総額おいくら万円か分からないくらいの家具の数々。あとザ・シャンデリアに、姫ご用達の天蓋付きのベッド。

 などなど、高価な物が溢れる白を基調としたひろーーい、たかーーい部屋。


 で、どこなのよ……ここは。


 俺は真っ暗な謎空間に取り残されていたはずなのに。目を開けたら、このゴージャスな部屋にいた。

 ここは部屋だよね? 死後の世界とかではなく。


 実は死んでいて、『ここは天国だよ』とか言わないよね!? かなり現実離れしてるところなんだけど!

 あるいは実は俺の妄想の中で、本当はまだ謎空間に取り残されているとかじゃないよね?!


 お、落ち着こう。一度、頭の中を整理しよう。


 俺は真っ暗闇の中、スマホの明かりだけを頼りに、謎空間から脱出する方法を探していた。

 そのうち無重力的な空間での移動にも慣れてきて、暗いところにも目が慣れてきて、『あっ、これは無理なやつだ』と諦めてきて……そこからどうしたんだろ?


 寝たのか? 寝た感はないけど寝たんだろうか?

 よくは分からないが気づいたらここだった。

 めっちゃ高級かつ、めっちゃ心地いいソファに横になっていた。何も分からない。ということしか分からないな。


 いっそ話を聞いてみようかな。誰にかって、いるんだ1人。

 先ほどから何やら、テーブルに向かって鼻歌交じりに書き物をしている、ザ・見た目から姫がね。


 この体勢からざっくりと容姿をお伝えするとだな。

 肩口までの薄い銀の髪。とても綺麗なルビー色の瞳。顔立ちも相まって人間とは言えない感じ。まずこの世のものではないと思う。以上だ。


 やっぱりここは死後の世界。そんでもってあの子は女神様とかじゃない?

 そうだとすると、俺はついに異世界転生とかするんだろうか。マジで嫌なんだけど。


 えっ、他? 俺の異世界転生話を流して他だと?

 みんなヒドイな。同じ状況になってみろっていうんだ。


 まあ、あれかなぁ。あの子も姫なドレスを着ている。なので他の姫と比較する。

 ルシアと比べてだけど、こう、お胸の辺りがスゴい! あのプニプニの威力は計り知れない!


 あれっ、俺は少し前にもこんなこと言わなかったか? その時にも同じような比較をした気がするな。あれは確か……。


「目が覚めたのね? 気づいたなら、そう言ってくださらないと。私ったら人前で鼻歌なんて恥ずかしい。もうっ!」


 こそこそ探っていたからだろうか、彼女に目覚めたことを気づかれたらしい。

 そして何というかシンプルに……可愛い……。私、怒ってますな反応も可愛い。


 ザ・姫なのは見た目だけでなく中身もらしい。俺の周りにはいないタイプの女の子だ。

 俺はたまにくる、この感じに弱いな。可愛い。


「すいません。つい見惚れてしまって」


「まぁ、お上手ですこと。いつもそんなことを言ってらっしゃるのね? 悪い人」


 くすくすと笑う姿も可愛い。表情豊かでおしとやか。まさに理想的な姫だ。

 ルシアもあれはあれで悪くはないけどね。すぐに手が出るのがなかったらね。

 そうすれば見た目だけでなく中身も理想的な……──違う、なんでもない!


「他の女の子のことを考えてますね。私が目の前にいるのに。悲しいです……」


「そ、そんなことないです。貴女のことを考えてました! そういえば、お名前は?」


 彼女をなんとお呼びしたら。

 姫呼びでは駄目なんだ。その枠はもういっぱいだから。


「あーーっ、ミ……アミカと言います」


 アミカさん。いや、フレンドリーにアミカちゃん? あみたんとかもいいか。

 いや、まずは自分も名乗らないと。こういうのは最初が大事。知ってた!


「僕は白夜(はくや) 零斗(れいと)と言います。お友達からお願いします!」


 し、しまったーー。勢いあまったーー!

 最初が大事とか思ってたからか、握手を求めて右手を前に出してしまった。俺は何をやってんだーー!


「はい、お友達です。零斗さん」


 そしてお友達になったーーっ!

 なんとも友好的な姫だったーーっ!

 両手で手をギュッとされたーーっ!

 あと、零斗さんなんて初めて言われたーー!


「楽しい人。私、お友達というのは初めてです。だから嬉しいです」


「それは、こんなに姫感をだしていたら恐れ多くて、誰もお友達になってとは言えないと思います」


「そうなんです。私は構わないのですが、皆さん私を特別と扱ってしまうようで、お友達になってくれないのです……」


 アミカちゃんも、姫ならではの悩みをお抱えか。

 確かに同じ姫であるルシアも友達は少ないからな。普通に考えて声掛けにくいもんな……。

 だが、俺が友達になってしまったからには、ここは俺が友達として頑張らなくてはいけないな!

 お悩みの1つや2つ軽く解決してあげないとな。


「他にお悩みは?」


「学校でも皆さん良くしてくださるのですが、やはり一線があり、その距離も中々縮まらなくて、最近では授業も個別で受けているんです。私、本当は皆さんと一緒に学校生活も送りたかったんですが……」


 なるほど。なるほど。それは教師側からもだいぶ気を遣われているようだな。

 一般生徒と同じでは無理だと判断したな。ダメ教師が。教育委員会に訴えられるぞ。


「確かに。こんな子がクラスにいたら気を遣ってしまう。クラスメイトの気持ちも分かる。しかし、それではアミカちゃんは可哀想。歩み寄るにしても、一愛(いちか)くらいなヤツがいないと繋ぎにならない。よし! 俺が転校してクラスメイトとの仲を取り持ちましょう!」


「…………」


 今のは割と本気な発言だったのだが、聞いたアミカちゃんが停止してしまった。

 その顔はひどく驚いた表情をしている。


「どうかしたか……しましたか?」


 もしや、アミカちゃん呼びがマズかったか?

 あまりにも気安かったか。姫だし、アミカ様じゃないといけなかったかな。

 むしろ様を付けた方がいいんじゃなかろうか。


「いえ、少し……。いえ、やっぱりお聞きします! 零斗さんがお優しいのは、私が姫だからですか? それとも誰にでもそうなのですか?」


「誰にでもではないだろう。俺は野郎には全体的に厳しいと自負している。例えば、横で死んでいてもスルーできる自信がある。でもまぁ、助けてくれと言われたら、条件次第では助けるかもしれないけどな。死んでたらそいつはもう喋らないけどな! はっはっはっ──」


 そんなもんだろう。厳しく接していても、俺は頼まれたら断れない人だからな。

 そうなれば結局なんやかんや世話を焼くんだろうが、オープンに助ける人をやっていると、アンパン男的になってしまう。あそこまでいい人にはなれない。

 どちらかといえばバイキン男的に生きたい。たまにいい事したら褒められるくらいでいいと思う。


「……正直な人……」


「アミカちゃん。今、何か言った?」


「いえ、何も。話していたら喉が渇きますね。お茶を用意します」


 おぉ──、姫自らお茶を入れてくださるとは。

 物理が強い。すぐ手が出る。理不尽を押し付けてくるくらいしか姫のイメージがなかったが、お茶を入れてくれるとか、姫っぽくはないが女の子っぽい!


「だから、もっとお話しを聞かせてくださいね?」


「そんなこと言われたら断れないっす!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ