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 違和感とか成敗とか粛正とか

 ろくに働きもしないアンチたちを人として正しい道に引き戻し、今後お世話になることになる大工さんたちとの顔合わせと、現場の下見があるからと集合場所を伝え、俺は一足先に城へと戻るゴンドラのところへ戻ってきた。


 あんなクズ……やつらでも支度があるとのことだ。

 あまり時間をかけるなと言ってあるし、遅れはすまい。したらシバくだけだし。


 そんなことがあり、1人寂しく歩いて戻ってきたら、すでにニックさん始め大工衆は全員が集合していて、何だがさっきと服装が変わっている。

 みんながお姫様のように、気合いの入った格好に着替えてきたようだ。城に行くわけだし、正装ということなんだろう。


 しかし、あの格好は作業には向かないので、あれは今日だけにしてもらって、明日からは動きやすい普段の格好をしてもらおう。

 格好つけるのは大事だが、そんなんで本業がおろそかになってもらっては困る。


 というわけで、今は呼んだゴンドラとアンチ待ち。

 ゴンドラもまだだし、まだ集合時間にもなってないので暇だ。座っていられるところもないし……。

 というわけで暇だから、城へと行くためのゴンドラについて教えてあげよう!


 あれは乗ってきた人を降ろすと、すぐに上がっていってしまう。操作は上からしかできないのだ。

 ゴンドラの操作は専用の人というか、城門の警備と同じ人が操作する係だ。

 下からボタンを押すと上に伝わり、ゴンドラを下ろすかどうかを決めているんだろう。下が見えてるのかとかは知らん。


 まあ、これでは飛べでもしない限りは城への道はないということだな。

 あそこは完全に隔離された天空の城だ。セキュリティーとしてはこれ以上はない。地上からでは眺めるだけの城なんだからな。


 そう考えると彼らの今の反応も頷ける。普段から見えはするが、普段は入れない場所にいけるのだ。

 あんなふうにもなるだろう。たぶん。


「変なとこはないか? 喋り方は大丈夫か?」


 ゴリラの人こと大工のニックさんは、さっきからこんな調子だ。大工衆とあれこれ気にしている。

 これを『気にしすぎだ』と言ってはいけないんだろう。異世界の人にとって城に行くというのは、名誉ある、特別なことのようだからな。


「──おーい! すっかり遅くなってしまいました。すいませーーん!」


 集合時間ギリギリというところで、アンチたちが走ってやってきた。支度とやらに時間がかかったのだろう。

 しかし、遅れずにはきた。褒めはしないが上出来でしょう。だけど……俺はどっからツッコメばいいんだろう?


「──ど、どうしたんだ!? お前ら、本当にどうした!? なんでそんなに丁寧。なんでタキシード。なんで全員バッチリきめてるの!」


 こいつらは何しに城に行くつもりなんだろう。そう思わずにはいられない格好になったアンチたちが現れた。

 そのタキシードはどうしたの? キミたち、そんなの持ってたの?


「だって、城にお呼ばれしたからにはこのくらいは。オレ……ワタシタチも、きちんとしないとと思って」


「──違和感! 半端ない違和感。言い慣れてない『わたしたち』とかもうスゴく違和感だから! そしてお呼ばれはしてない! そういうのやめて。なんやかんや俺のせいになるパターンが見えるからね!」


「オレたち……ボクたちも、アレくらいきちんとしないと駄目だろうか?」


「──そっちも! 急にボクたちとかやめぇ! 普通にして。いつも通りにして。テメェら、お城のパーティに行くんじゃねーんだからな!?」


 急にみんなしてなんなんだよ。マジでなんなんだよ……。もっと職人気質と、もっと駄目な奴らだったはずだ……。

 そんなにか? そんなに城に行くのはアレなことなのか?


「あっ、始めまして。これからお世話になります。親方」


「親方だなんてやめてくださいよ」


「本当にどうしたんだーーーーっ!」


 みんな様子がおかしい。予定より遅れたゴンドラがくるまで、こんな感じが続きました。



 ※



「さっきから震えが止まらないぜ……」


「それは高さにか? それとも武者震いか?」


「──わからん!」


「そうか。なら、大人しくしてて。人数多くて1回じゃ運べないという現状と。上がるの遅いし、いつもよりグラグラいってる現状にね。俺もこんなに大人数が乗って大丈夫なのかと、さっきから実は不安なんだ。俺1人だけ最初に城まで行けば良かった。効率など気にしたばかりに……」


「……にいちゃん。これ、落ちたりしたいよな?」


「こんな人数が乗ってるの見たことないから知らん。仮に落ちるんだとしたら、お前らを踏み台にしてでも俺は生き残るつもりだ」


「……」


「そうなった時は、『──何っ!? オレを踏み台に!?』って言えよ。そうしたら俺は助かる気がする」


「……」


「ああ、今のは冗談ではないからな? 俺はやると言ったらやる。有言は実行する」



 ※



 重かったのか、いつもより時間が掛かったが、城まで無事に到着した。

 移動の間は、特に語るべきことはなかった!


「貴様らは大工衆が来るまでここで待機だ。貴様らはジャンケンで勝っただけ。ずにのらないこと! 俺は誰か呼んでくる。その間に勝手して、しばきまわされても俺は責任を負わないからな。肝に銘じておけよ?」


「……あのにいちゃんは悪魔か何かなんだろうか?」


「おい、知らねぇのか。悪魔ってのは人の形をしてるって言うぜ?」


「オレたちを皆殺しにしても、自分だけは助かりたいというくらいだからな……。ただの人間じゃないのは確かだろう」


 ……反論するのもめんどくさいから、それでいいや。言わせておこう。

 それより近くに誰かいないかな? もうみんな城の中に入っていっちまったか?


 片付けてる兵士たちじゃ話にならないぞ。おっさんたちか、ニクスか、セバス。王様でもいい。

 誰でもいいから話の分かる、偉い人を探さないと……。


「「……遅かったわね」」


 その誰でもなく、ダブルお姫様が横並びかつ仁王立ちで、城の入り口で俺を待ち構えていた。

 2人ともボロボロになっていた状態から、着替えて綺麗になっている。


「た、ただいま戻りました」


 なぁ、『その服も大変お似合いになると思います』と言って誤魔化せないかな? ……無理? ムリかーー。

 何故かは分からないが、2人とも目が笑ってないんだ。おかえりも言わないのが只事でないのを物語っている。


「お姫様、誰か大人の人を呼んできてくれるかな? 今さ、修理の人たちが来てるからさ。クギを刺すようだけど、ここで暴力沙汰をしようものなら女神様の名が泣くよ?」


「あんなことしておいて……。今度はあたしを女神様とか言ってバカにするのね」


 あんなこととはなに?

 今日は俺は何もしてない……はず。

 考えてみても何も思い当たらない……よ。


「いや、アンチたちに本当に言われてたよ? そんなオレたちの女神様のピンチに、みんな来てくれたんだよ」


「……女神? なんで、アタシじゃなくてルシアなのよ。天使であるアタシの方が、女神と呼ばれるべきじゃないの?」


「そんなこと俺に言われても……というか、キミたちは何に怒ってるの? なにかはしらないが八つ当たりは良くないと思うな」


 何故だか天使も機嫌が悪い。

 さっき小汚いとか言ったから……か?

 それでこんなに怒りをあらわにしているのか?

 だとしたら気が短い。短すぎるよ。天使さん。


「八つ当たりじゃない! 乙女として正当に怒っていい案件よ。あんなに揉みしだくなんて……」


 えっ…………えっ!?


「──そんなストレートに言うな! もっと包み隠して!」


「何よ、そのためにここにいたんじゃない。というか、ルシアは正直言って揉まれるほどないじゃない。慎ましいくらいじゃない」


「──あるわよ!」


 初めは何事なのか分からなかったが、天使はお姫様の胸部分を見て今のを言った。

 そして俺は1つ疑問に思っていたことがあった。あの感触は何だったのかと。プニプニだか。フニフニだかが何だったのかと。


 あ……あれは……まさか……。


 思わず彼女たちの胸の部分を見て、ゴクリと喉を鳴らしてしまう。だが、そうなんだとしたらそうしてしまうよね。


「お姫様もフニフニだったよ?」


「な、なにを……──しっかり感想言ってんのよ! 成敗!」


「そういうことよ。諦めて粛正されなさい!」


 バトルの仲裁の際の事故。ラッキースケベ。

 確かにそれを俺はやったのだろう。だけど、意図してやったわけではない。だから大目に見て欲しいが、彼女たちは俺を成敗し粛正するつもりらしい。


「──お断りだ! 命がいくつあっても足りない!」


「「──逃げんな!!」」


 大人の人ではなく、──ニクス! ヤツはどこだ。ニクスなら荒ぶる女子たちを諌めてくれるはず。

 女子たちにしばきまわされる前に見つけなくてはーー。


「学習しないわね。あたしから逃げられるわけないじゃない」


 回れ右して全速力だったのに、ガッと肩を掴まれ、背後から腕を捻られる。

 そんなふうに呆気なく捕まった俺を見て、俺の行動を読めなくて出遅れた天使もこちらに走りだす。


「──速っ! そして、痛てててて──」


「ルシア、そのまま押さえてなさい、──きゃあ!?」


 足元の悪い。主に自分が壊したデコボコの地面につまずき、天使がつんのめる。


「「──なんでそこでつまずくの!?」」


 つんのめった天使のプニプニが俺に迫ってきて激突し、俺は後ろに倒れる。その俺の背後にはフニフニがあり、3人で再びさっきのような体勢になった。

 で、再びの感触を感じる。プニプニとフニフニだ。今度は触れているのではなく、ギューっと押し付けられている感じ。


「これ、俺のせいじゃなくね? 全部さ、天使が悪い気がする」


「そう思わなくもない。けど、触られたのは事実だから」


「痛いーー。誰よ。こんな場所に石置いたの!」


「お前だよ、ポンコツ天使!」


 さて、この後。成敗され、粛正されたわけだが……感想を述べよう。女子たちは柔らかい! 以上。


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