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 ここまでの集大成。チョコを作ってみる!

♢22♢


 ルイちゃんのチョコレート講座が昨日。今日はいろんな意味で休みの日曜日。

 俺は、朝から異世界に来ています! 時間は有効に使わないといけないためです。


 今日は自分のチョコレートを試作しないといけないのと、城のシェフ〜たちに、チョコレートを教えておかないといけないのだ。


 チョコレートの材料である、カカオ豆、カカオバター、砂糖。この3つは悪魔たちにより生成完了しました。

 あとは必要なら買ってきます。材料調達クエストには、しばらく、できれば一生行きたくないので!


 このように材料はあるし、バレンタインのチョコレートを、もう作り始めてもいいかもしれない。

 食べよう会にはチョコレートの量が必要だし、作ったとして日持ちするわけだしな。


 そのためには、カカオ豆からのチョコ生成法が必要だったが、必須ではなくなった感がある。

 理由はカカオマスの残りの量がヤバいためだ。ルイが言った通りだった……。1キロもいらなかったわ。


 無駄にあるカカオマスを使って、いくつか作っておいてもいいんじゃないだろうか。というわけだ。

 もうね、一生分くらいのチョコレート作れそうなんだ。本当にできるかは分からないけどね。


 とりあえず、シェフ〜たちの腕前を見て、できるようならチョコレートを作成していこうと思う。

 試作に使うチョコレートは作らなきゃだし。


「おはよう! 今日はキミたちに、チョコレート作りを実践してみてほしい。今日のお城のご飯は、全部チョコレートでいい。もし文句を言われたら、肉にチョコレート載せてやれ! では、始めたいと思います」


 城の1階にある調理場には、城のお抱えシェフ〜たちが勢ぞろいしている。

 調理台を並べてもらって、黒板的なやつを持ってきてもらって、調理実習のようなスタイルでチョコレートを作成していく。


 ところで……なんでシェフ〜たちの中に、お姫様が混じっているんだろう。

 初め気づかなかった。いつものドレス姿ではなく、昨日覚えたエプロン姿だからだ。エプロンはルイがくれたらしい。


「なんでいるの?」


「あたしも参加するわよ。ルイに教えてもらったからかしら、自分でも作りたくなったの。邪魔はしないわ」


「別にいいんだけど事前に言おう。シェフ〜たちの心の準備とかあるからね」


 シェフ〜たちはみんな、お姫様の様子を伺っている。いつものお姫様大好きマンたちとは違う。

 俺には分かる。彼らはお姫様にビビってる。

 そして、シェフ〜たちがビビってる理由なんて1つしかない。


「今日はシェフ〜をいじめるなよ。みんな、初めてチョコレート作るんだからな。いちゃもんつけないようにお願いします」


「何よそれ……。あたしが、いつもしてるみたいじゃない」


「してたでしょー。みんな気を使ってたの! 口うるさいお姫様に忖度して、日々ご飯を作ってたんだよ」


「彼らはそれが仕事でしょ。気に入らなければ注文くらいつけるわよ。 ──それと口うるさいってなに!」


 お姫様は俺を掴もうとして手を伸ばすが、俺たちの間には調理台があって、更に俺は危機察知してバックステップしたため、お姫様が手を伸ばしても俺には届かない。

 よかった。調理台がなかったら俺は、チョコレートを作れなくなっていただろう……。


「ほら、みんなビビってるから。もう少し優しく。短気は損気だよ。仲良くチョコレート作って」


「──誰のせいよ! ちょっと、無視して始めようとすんな!」


 これは俺のせいじゃないだろう。お姫様の日頃の行いが問題のはずだ。

 お姫様はギャーギャー言っているが、チョコレート作りが始まればそっちに集中するでしょう。



 ※



「──と、材料と工程は説明した通り。お姫様が黒板に書いてくれたので、分からなくなったら各々の確認するか、俺かお姫様に聞いてください」


 背後の黒板的なものに、まったく読めない文字でチョコレートのレシピが記されている。

 読めない俺にも分かるくらい、お姫様は字も綺麗! お姫様はいろいろ万能だな。


 そして城の料理人たち。その包丁使いは慣れたもので、カカオマスは瞬く間に刻まれていく。


 ──はやっ! もう砂糖をゴリゴリしてる。


 シェフ〜たちは動きに一部の隙もない。これには、流石と言わざるをえない。プロだ、プロ。

 変わりばえのしない食材で、日々料理してきただけはある。


 実際、素材の味料理は美味しいのだ。タレが欲しいとか、贅沢言わなければな。

 あれらは、彼らの料理の腕の良さが分かるメニューだ。工夫はないようでされていたし。


 しかし、そう思うと疑問が残る。『誰も何にも気づかなかったのだろうか?』と。

 悪魔という『不可能はないんじゃね?』そう思わせるヤツらがいるんだ。料理の幅なんていくらでも広がるはずだ。それこそ、俺なんていなくてもだ。


 これが当たり前。そう言うのは簡単だ。だが、何かが不自然。

 食が発展しないのと、戦関係は別問題のはず。それなのに、代わり映えのしない食べ物しか存在していない。


 悪魔たちは、どうしてなんの力も貸さないのだろう? 二つ返事で了承しそうなのに。コンビニだって作ってくれるのに。

 意図的にそうされているってわけじゃないよな? まさかな……。


「あんたもやるんじゃなかったの?」


「お、脅かすなよ。考え事してたんだよ」


 料理人たちを眺めて、考え事していたら、お姫様が隣にいた。びっくりした! 集中し過ぎてたのか、気づかなかった。


「ルイのことね。どんなチョコレートにしようか悩んでたのね」


「えっ、全然違うけど」


「隠さなくてもいいわよ」


 本当に全然違うんだけど……。まあ、疑問は今度セバスにでも聞いてみよう。

 今はチョコレートだ。異世界事情はまた今度だ。


「全然違うんだけど、それも考えないといけないな。普通のチョコレートじゃ、ありきたりだよな」


「そうね。ルイはチョコレート作れるしね。ただのチョコレートじゃダメじゃない」


「しかし、普通のチョコレートと、トリュフチョコと、ブラウニーチョコしかバリエーションがない。アレンジは……雑魚には無理だと言われたしな」


「とりあえず全部作ってみたら? 何か閃くかもしれないわよ」


 それが一番か。幸い刻む作業と、砂糖をゴリゴリする作業は、料理人たちが終わらせたみたいだし。

 ──って、はやっ! 連携も見事だ。まあ、城中の料理を作ってるんだから、当たり前か。


「だが、その前に温度の話だ。生臭いチョコレートにならないようにしなくては! お姫様そっちから声かけていって。俺は逆からいくから」


「美味しくないチョコレートなんて嫌だしね……」


 書いてはあるが、テンパリングとコンチングは直に説明した方がいい。完成するチョコレートに差が出る。

 どうせなら、美味しいやつがいいに決まってる。



 ※



 作業開始から1時間くらいで、カカオマスから作るチョコレートは完成した。あとは冷やすだけだ。

 冷蔵庫はある。しかし、電気で冷やすのではないらしい。まぁ……冷えるんだからなんでもいいよね。


「もう、ビックリです。レシピに材料があれば、チョコレートくらい余裕なんだね。次は作ったチョコレートを使用した、お菓子を作っていきます。レシピはまたお姫様が書いてくれるので、確認しておいてください」


 俺とお姫様も、それぞれチョコレートをつくりました。俺はそれほど甘くなく、お姫様は死ぬほど甘く。

 こ、これは個人の自由だから。俺は絶対にあのチョコレートは口にしないけどね!


「昨日のことだし、この作業は問題なかったな。ただ、カカオマスがまだまだ残ってるんだけど……」


「これから試作するんだからいいんじゃないの」


「毎食チョコレートにしたら、みんな怒るかな?」


「……本気で言ってるの」


 1回に数十グラムしか使わないカカオマスを、1キロは買いすぎました。今日使っても残るとは!

 お姫様の言う通り、いろいろ試してみよう。


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