る、ルイちゃんのチョコレート講座。その9。
ある作業工程について、めんどくさいけど、めんどくさがらずに説明しようと思う。
ちゃんとしないと、チョコレートにならないからだ。失敗を避け、美味しく作るために説明する。
初めに、テンパリングについて説明する。これは板チョコを湯煎して、溶かした場合にも使える技術だ。
溶けてるチョコレートを、固める方法といえば分かりやすいだろう。溶かしたチョコレートを、そのまま冷やしてもダメなんだ。
チョコレートを固めるには、3段階の温度変化が必要になる。チョコレートは、あと3段階の変身を隠していると覚えておくといい。
まずは、溶かした温度だ。
チョコレートを湯煎して溶かした温度のことであり、今日の場合だと、カカオマスにカカオバターに砂糖を溶かした温度となる。
これが溶かした温度であり、数字にすると50度くらい。やる場合は、きちんと温度は測れよ。
次に、溶かしたチョコレートを下げる温度。
下げると言うらしい。冷やすは冷やすだから、別にこだわりがないなら、冷やす温度と覚えておこう。
チョコレートの温度が28度になるように冷やす。これには温めるのに使ったボウルとは、別のボウルを使った方がいい。
理由は忙しいから……。もう大変だよ? 俺は2人分やったから、余計に大変だった……。
チョコレートを10度から15度くらいの水で冷やす。水道水では無理かもだから、氷は入れた方がいい。
あと、言い忘れていたが常に混ぜながらだ。ゆっくりでいいが固まらないように混ぜてくれ。
最後は、上げる温度。
冷やして28度になったチョコレートの温度を30度まで上げる。最初と同じく、50度くらいで湯煎するのがいいだろう。
こうすることでツヤツヤなチョコレートになる。板チョコを湯煎でもできるから、気になったらやってみてくれ。
ここまでがきちんとできていれば、口どけのいい美味しいチョコレートになっているだろう。
冷やして上手く固まれば、テンパリングは成功。
わかったかな? これがテンパリングだ。
テンパリングは食べられない。これもわかった?
※
それじゃあ、次はコンチング。このクソみたいな作業について説明する。と言っても、テンパリングほど複雑さはない。
だって、コンチングってのは『チョコレートを練る!』。たった、これだけの作業だ。
カカオマスから。カカオ豆から、チョコレートを作るなら必要な作業だ。そうじゃないなら大丈夫だ。読み飛ばせ。次に行け。
気になる人と、必要かな? って思う人だけ読め。
初めに、普段お店で売ってるチョコレート。
みんなが、いつも食べてるチョコレートはどのくらい、このコンチングをしていると思う?
正解は24時間。少なくても12時間。もちろん人力ではない。そんなブラック企業は存在しない。機械の力だ!
余分な水分と、余分な成分を飛ばす。コンチングの目的はそれだ。それだけに24時間だ。こわいよね。
しかし、この作業がないと、口どけの悪い、なんか生臭い、そんなチョコレートが出来上がる。
もう最悪だよね。なんだ生臭いチョコレートって。そんなん出来上がってほしくないわ。
上記を避けるためには、少しでもコンチングしないといけない。わかりやすく言うと、めっちゃ混ぜなくちゃならない!
今日の作業は混ぜんの多いなー、とか思ってたらそんなもんじゃなかった! 全然、時間が足りてない。
今日作ったのは、チョコレートとしては形になったし、生臭くもなかった。
しかし、市販のチョコのなめらかさに、溶ける感じには遠く及ばない出来だった。
ルイがいてあれでは『機械の力ってすげー!』と言う他ない。そして、これが今日の感想だ。
カカオマスという、カカオ豆を加工した物を使ってこれなんだ。『カカオ豆からチョコレートを作る』の難しさが、よく理解できた。
月曜日が怖いよね。月曜日はさ、まずカカオマスを作らなくちゃならないんだよ? 豆から初めてね。
カカオ豆からチョコレートを作るのは、超高難度クエストである。死にたくなければやめておきたまえ。
ところで、ずっと1人で説明してきたのには理由がある。最近おなじみのアレだよ。
※
俺はこのように、チョコレート生成法をまとめています。
今日使った材料を書き留め、気づいたことや気になったこと。チョコレートの書に記載すべきところと。
ひたすら1人で、黙々と書き作業という地味な作業をしています。この場所には3人いるというのにね。
わかる? また俺だけ蚊帳の外だよ。
「今日は楽しかった。まさか、自分でチョコレートを作れるなんて思いもしなかった。丁寧に教えてくれてありがとう」
しかも、お姫様はそろそろ帰るつもりのようだよ。
作ったチョコレートも食べたし、お土産としても手に入れたし満足したのでしょう。食いしん坊さんだから。
「私こそ、苦労が少なくて今日は楽だった。また、必要なら言ってよ。教えてあげるからさ……」
「そうね。そうさせてもらうわ。今度はあたしがルイを招待するわ。ぜひ遊びに来て」
……それは無理じゃないか? 異世界にお連れするのは無理だし、やめといた方がいいと思う。
だが、あまり友達のいなさそうな2人に友達ができた。お姫様を連れ出した意味もあったし、ルイに合わせた意味もあったのだろう。
結果が良かったんだから、良かったんだよ!
「チョコレート生成法をまとめ終わりました。ビデオも問題なかったです。本日はありがとうございました」
帰ろう。このいい雰囲気のまま帰ろう。
「「拗ねないの」」
うん、キミたち最後まで息ピッタリだね!




