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 る、ルイちゃんのチョコレート講座。その7。

 俺は『また』やらかしてしまった……。

 女の子の家に行くのに、女の子を連れてくるのはマズかったらしい。

 確かに。今、考えれば流石に分かる。『それはないなー』と。


 だけど、お姫様も元気なかったじゃん!

 やり方はアレだったが、俺はお姫様に元気付けられて……はないけど、お姫様のおかげで材料調達は成功したのだ。俺も立ち直ったし。


 全部、落ち込むお姫様のためだったんだよ!

 それも、だいたい俺のせいだけど……。


 うん、分かるよ。『全部お前のせいじゃね?』って言うんだろ?

 ──正解です! 全部、俺のせいです!


 ふっ、俺はとんだ悪役だったな。悪気はないが、結果だけ見ると最悪とか。もうヤバイよね。

 バトル要素があったら、確実にやられてるよね。良かった。バトル要素がなくて。


 そんな、やらかしてしまった俺は現在、トイレに行くと嘘をついて逃げ出し。戻るに戻れず、襖の陰に隠れて気づかれないように、女子たちの様子を伺っています。

 何故なら、沈黙しかない空間に入る勇気も、ギスギスしてる空間に入る勇気もないからです。


 俺のメンタルは、豆腐以上こんにゃく以下だからです。ちなみにメンタルのランクは、豆腐、こんにゃく、石、鉄と大きくランクがあります。

 こんにゃくから上は、100年くらい修行しないとなれません。メンタルが豆腐でないだけマシだと思ってください。


「──なのよ! いつも──」


「だいたい──」


 しかし……ここからでは断片的にしか、中の会話は聞こえてこないな。分かるのは、お姫様とルイは会話しているということだ。

 なるほど、おばちゃんの言ったのはこういうことか。理解した。


 まず、ルイは初対面の人と仲良くできるタイプではない。お姫様が社交的だったとしても、おそらく無理だ。

 しかし、俺が席を外したことにより女子たちには、お話するきっかけになったと。しなくてはいけない雰囲気になったのかもしれない。


 つまり、結果的にあの選択は正しかった! そういうことだろ! やったぜ!

 どうなるのか心配だったのに、勝手に仲良くなってくれるとか! やったぜ!


 何か共通の話題でもあったんだろう。

 世間知らずなお姫様と、すぐに手が出る幼馴染に、共通の話題があるとは思わなかった。

 ほんと世の中ってわからないねー。


「いや、待たせたね。そろそろ始めようよ。チョコレート作り!」


 大丈夫そうだと判断し、襖を開けて部屋の中へ入った瞬間に、危機察知能力が発動した。『──あれっ?』そう思った。


 2人の視線は、部屋へと入ってきた俺に自然と集まる。これは分かる。

 しかし、会話はピタリと止まり。その2人の視線から、何か話していたのは、決して楽しいことではなかったのだと分かった。


 2人の共通の話題とはなんだったのか?


 暴力について。チョコレートについて。思いついたこれらはたぶん違う。

 この刺すような2人の視線が示すものは……俺じゃね? それが共通の話題であり、結束を固めるにはもってこいかもしれない。


「ずいぶんと」「遅かったわね?」


「キミたち、すごく息が合ってるね!」


 共通の敵がいれば、初対面でも仲良くなりやすいらしいよ。覚えておこう!

 なんだろう、これ。さっきバトル要素とか思ったからかな……。いたね、バトル要員が。お姫様(物理)と幼馴染(物理)がさ。


「何か言うことがあるんじゃなくて?」


「態度で示すってこともできるよな」


 もし、それぞれから物理攻撃を同時にもらえば、1人からの攻撃でなら残るはずのライフは1も残らず、俺はデスるだろう。

 圧力も倍なら、ダメージも死のリスクも倍らしい。ここはこれしかない!


「──すいませんでした!」


 余計なことは言わずに謝罪の言葉だけを口にする。これならば、余計なツッコミはもらわず、ただ納得するしかないはずだからな。


「「……はぁ」」


 予想通りに2人はため息をつくだけだった。

 俺の評価は下がっただろうが、何ごともなくて良かったです。2人同時攻撃とか無理だから。


「いつも大変なのね」


「ずっとこんな調子だからな」


「わかる。たまに殴りたくなる」


「そういう時は遠慮なく殴っていいよ。そのままにしておくと、余計に調子に乗るから」


 ──暴力反対! と思っても、まだ口には出せない。まだほとぼりは冷めてない。

 許されそうなところなんだ。不用意な事を言って鉄拳制裁されてはたまらない。


「そろそろ、本当に始めるか」


「チョコレートを作るのよね!」


 よし、流れはチョコレートに向かった! 俺は許されたのだ!

 何も準備されたふうがないが、ルイが言うんだし始まるんだろう。


「「いつまで頭下げてんの? 早く準備して!」」


 あっ、準備は俺がやるんだね……。そうなんだ。

 何にせよ、2人が仲良くなったようで良かったです。



 ※



 ルイからの『あれやれこれやれ』を全てこなし、お姫様からの『ワガママ』も全部叶え。

 ルイちゃんチョコレート講座の開始まできた。もう疲れた……。もう帰りたい……。


「今日、俺は調理には参加しない。アシスタントはヒメちゃんにお願いする」


 えっ、別に疲れたから参加しないわけでも、帰りたいから参加しないわけでもないよ。

 それはそれ。これはこれだよ?


「なんで?」「どうして?」


「俺にはやることがある。それはこれだ!」


 俺はそう言って、家から勝手に持ってきたそれを取り出す。昨日買ってきた、オ◯オ型カカオマスを含む材料たちと一緒に。


「何それ?」


 お姫様からは、まあそう言われるだろう。


「どうするんだ。撮影して」


 ルイからも、まあそう言われるだろう。

 さっき急遽思いついたから、今初めて言ったわけだしね。ビデオカメラは勝手に持ってきたわけだしね。


「今日のチョコレート作りを撮影して、明日使うんだ!」


「「明日?」」


 もうバレンタインまで日数がないのだ。1日たりとも時間は無駄にできない。

 そして、チョコレート作りの手順があれば自作もできる。そのための時間は明日しかないし、もう1つのことにも動画はあったほうがいい。


「明日、俺は1人でチョコレートを作る!」


「「あーー」」


「そういうわけだから、今日は調理には参加せずにカメラマンとして参加します」


 補足すると、お姫様とルイの『あーー』には、それぞれ意味合いが違うところがある。

 ルイは逆バレンタインのためだと思っているし、お姫様もそれは知っている。そこにプラスして、異世界でのバレンタイン事情があるわけだ。


 向こうは、まだチョコレート自体が無いのだから、もう無駄にできる時間はない。1日も1時間も1秒もない!

 そこで思いついたのがこれだ。今日の様子をバッチリ撮影し、それを明日異世界で使う。


 買うときにルイに言われたが、カカオマスは余る。1キロも買ったからだ!

 つまり、今日の再現なら明日可能なのだ。


 今日の動画は、城の料理人たちにチョコレートを覚えさせるのに役立つはず。

 いくら料理人たちでも、いきなりカカオ豆からチョコレートは作れないだろうから、いい練習になるというわけだ。


 実は、俺はそこまで考えてオ◯オ型を購入していたのだ! ……嘘だよ? 本当は上手いこといっただけだよ……。


 だが、本当に練習にはなる。ぶっつけ本番よりはいいに決まってる。

 俺もルイに作るチョコレートを、試作しなくてはいけないから、チョコレートがあるに越したことはないしな。


 今日の、ルイちゃんのチョコレート講座は大事! というわけだ。次回に続く。


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