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 ただ、菓子材料を買いに行く。だけだったのに。

 製菓材料店はルイの学校こと、お菓子学校の本当に近くだった。ここはおそらく、お菓子学校にも品物を卸しているんだろう。

 店内はスーパーの菓子材料の売場より、菓子材料に特化。というかそれしか売ってない。材料にラッピング関係、菓子作りの道具なんかも豊富にある。


 当たり前だが、俺は見たことないものだらけです。何とか分かったのが上のようなものたちだ。

 そんな俺からは、『すげー』くらいの感想しかでません。


「すげー」


「さっきから、そればっかだな……」


「すげー?」


「何で聞くんだよ。疑問形にしても言ってること同じじゃん」


 とりあえず、店内を探検し終えたので満足した。

 感想は『すげー』しかないが、感想以上に面白かった。

 専門店というやつは、知らない人にも楽しめるんだよ。見たことないものと、知らないものばっかだからな。知ってる人が一緒だとより楽しめるよ! 説明してもらえるし!


 しかし、それをつまらないと思う人にはオススメしないがね。つまらないと言うやつは、だいたい全部つまらないと言うからね。


「で、目的のカカオマスはどこだ? そんなんあった? というか、カカオマスがどんなのかも知らないんだけど」


「まぁ……そうだろうな。確かこっちだ」


 店の中は迷うほど広いわけではないのだが、所狭しと商品が並んでいて、無知な俺にはさっぱり何がどこにあるのか見当もつきません。

 見て回りしたあとでも分かりません。カカオマスが何なのかも分かりません。


「これがカカオマスだ」


「えっ、これ……。オ○オじゃん。カカオマスって、オ○オなのか? クリーム挟むのか?」


 見た目はそんな感じの、黒くて平べったく丸いやつ。表現するなら、オ○オのクリーム挟まってないやつ。そんな感じのやつだ。

 あっ、5円型チョコの穴が空いてないバージョンでもいいかもしれない。


「なんだその表現。カカオマスだって言ってんだろ」


「5円型チョコの穴が空いてないやつ!」


「つまんない。チョコじゃないし。カカオマスだし」


 本当につまらなかったらしい……。

 ウケるとは思わなかったが、マジの真顔をされるとも思わなかった。オ◯オの方がマシだった。


「ごめんなさい、カカオマスでした。カカオマスさんは、どのくらい必要なんでしょうか?」


「失敗するのを計算すると、それなりにあった方がいいな。多少は量の多いやつを買うべきだ」


 カカオマスは量も形も様々なものがある。

 オ◯オ型は一例だ。細かくなってるのとか、四角いのとか、変な形のやつとかある。

 どれにするべきか。悩むな……。


「よし、決めた! これだ!」


「──1キロもいらないぞ! そんなにどうすんだ!」


 沢山の種類があるが、俺はやっぱりオ○オ型のやつが欲しい。だから、ルイはそんなに要らないというがこれにします。


「おい、零斗(れいと)! そんなにいらないって、聞いてないな。すでにカゴに入れてるし」


 あとはカカオバターだったな。砂糖もか。しかしアレだな。

 売ってるっていいね! 材料を探すところからやんなくていいんだもん! 素晴らしい!


「聞きゃしないな。昔から少しは変わったのかと思ってたけど、何も変わってない……」


「次はカカオバターだろ。どこにあんの?」


「はいはい。まったくこいつは」


 こんな感じで、製菓材料店での買い物は無事に終わりました。必要なものは買えました。

 それで、キミたちに1つ聞きたいのだが、俺はいつもと同じように見えただろうか?


 実は今日、ルイと2人で歩いてみて、一緒に買い物してみて気づいた。

 小学生の時は、全然感じなかったものに。意識したこともなかった。するはずもなかった。


 きっかけは駅前でのやりとりだろう。そこから時間が経つごとに自覚してきた。俺はこいつを意識しているのだ。

 そう改めて自覚するとヤバい。ルイを幼馴染ではなく、女の子として見ている。


 ……おそらくこれは急にではない。今日まで気づかなかっただけで。多分、謝りに行った日からだ。

 好きとかではない。そんな段階には至っていない。


 しかし、当たり前にいた幼馴染は、離れていた間にいなくなってしまったのだ。

 今現在、俺の目の前にいるのは、成長した幼馴染の姿をした女の子だ。


 ──これはヤバい!


 俺が今まで普通に接していられたのは、ルイが昔のままだと思っていたからた。

 女の子ではなく幼馴染だったから。だが、それが急に逆転した。


 ルイも俺と同じなのかは分からないが、意識しているのだろう。だから、学校のくだりで頬を染めていたのだ。

 俺はそれどころじゃない! 平静を装っていたように見えたのなら、お姫様には感謝だ。あの、お姫様とのデートがあったから……。


 おやおや、今のこれはどうなのかな?

 放課後に2人きりでお買い物。友達でも、幼馴染でもなく、女の子と。2人きりで。


 あっ──、考えるのやめよう。


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