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 材料調達。その2。カカオ豆。 ②

 二クスの悪魔スキルにより、炙られているスルメのようになり、大幅に動きが制限された毒い植物たちは呆気なく全滅した。

 俺は『悪魔こえー』と思いながら、毒い植物たちがいなくなったジャングルで、カカオ豆をみんなと捜索中だ。


 そのカカオ豆の捜索だが、図鑑はあるしニクスもいるのだが、難航しています。俺は飽きてきました。

 あるはずなのに見つからない。どこにあるのらや……。


「くんくん──。やっぱり毒い植物たちから、いい香りがする。これも何かに使えそうだな。取っていこう」


 ドラゴン肉に毒い植物。完成するであろうチョコレート。何故だか、とても美味しそうな気がします!

 なんていうか未知と未知が合わさってこう、化学反応を起こしてこう、爆発する感じ? 混ぜるな危険って感じ?


「みんな、そろそろ見つかった? カカオ豆っぽいやつ。えーっ、まだなの? しょうがないなーー」


 なかなか進まないので、俺も本格的に手伝います。手に入らないとマズイし。先に進まないしだし。

 見ているところは見てるんだから任せて、俺はこっちの方を探すか。見たことない植物が大量にあるところを。


「それにしても異世界すぎるな。城と城下町を離れたら、一面に異世界が広がっているとか。全然嬉しくない」


「こちらでしたか」


「二クス。何をしにきた……。向こうの方にある気がするよー、向こうの方に行きなよー」


「そう言わずに。残るのはこの辺りなんです。じきに皆さんもこちらに来ますし」


 人がいない方に来たら、来ることないのにイケメンもついてきた。助けてもらった手前、『クソイケメン死ねや!』とも言えないし困った。

 俺は義理堅い人間なのだ。助けてくれたやつを邪険にはできない。


「……ここは。すごいところだよね。みたことない。しょくぶつに。あふれているよ」


「もっと凄い場所は、山のようにありますよ。このくらいで驚いていては、身が持ちませんよ?」


「──そこを冒険して素材を探すとか、絶対にやらないからな! フラグじゃなくて絶対だ。毎度こんな目にあっていたら、命がいくつあっても足りない!」


 そっちの方が面白そうとか思ったキミ。自分でやってから言ってね? 本当に死んじゃうよ?

 ただの人間に異世界はムリ! ドラゴンもムリだし、植物すらムリだから!


「だいたい、戦闘力に差がありすぎる。剣一本であの重さなんだ。鎧を着てたら、その何倍もの重さを背負ってんだろ。何キロ着て動いてんの? あたまおかしいんじゃないの? 脳も筋肉なの? ……んっ、これじゃないか? カカオ豆は、こんな色と形だった気がする」


 異世界人の脳筋について語っていると、二クスの後ろに、目的のカカオの木らしいものを見つけた。

 実が木になっている感じが、図鑑に載ってるやつに似てる。図鑑で見たカカオ豆もこんなんだった。


「確認しますから、お待ちください」


「ああ、間違ってたらあれだからな。頼みます。俺はその間に、次を確認しておくよ」


 間違った材料を確保している暇はないのだ。二クスに確認させて、きちんとお墨付きをもらいたい。

 材料が確保できたら、次は加工になる。カカオ豆の加工方法と砂糖製造法を確認しておかねば。


 俺は懐から『内職し作成した』チョコレート生成の書を取り出す。どう、カッコよくない!

 これを本にして異世界に残そう。そして有名になろう。なになに……。


『カカオの実はカカオポッドと呼ばれています。カカオポッドは殻を持ち、殻の中に果肉。さらにその果肉の中にカカオ豆が入っています』


 ふーん。それでそれで。


『収穫したカカオポッドから、カカオ豆だけをすぐに取り出すことはできません』


 ……あれっ。


『バナナの葉に包んだり木箱に入れるなどして発酵させます。発酵により果肉が溶けて、カカオ豆が出てきます』


 あれ、あれー。


『発酵することでカカオ豆はチョコレート色に変化。独特の香りが生まれます。発酵はチョコレートの美味しさを左右する、大切な工程なのです』


 発酵って時間かかるよね。時間がないんだけど……。そういう話をして材料調達を急いでいるんだけど?


「ニクスくん。それはカカオ豆なのかな?」


「そのようですね。この木になる実がカカオで間違いないです」


「──よし、みんな急いで回収始め! ヤバい。発酵させないとならないらしい。書を作ったはいいが、読んではなかった! 回収始めーー!」


 ……待てよ。カカオ豆がこれだろ。砂糖はどうなんだろうか? 手作り砂糖とか聞いたことないし、いやーな予感がします。


『サトウキビをジュースにして、煮詰める。出来た結晶を遠心分離機にかける。原料糖となる』


 遠心分離機。そんなの必要なの。砂糖?

 異世界だけど……遠心分離機くらいあるだろう。今は先に読み進める。


『原料糖を再び溶かして、不純物を取り除く。それで、また遠心分離機にかけていくと。砂糖も生成まで時間かかる』ザックリ紹介しました。時間がないから!


「ニクスくん。遠心分離機って聞いたことある?」


「……初めて聞くものですね」


「ダヨネー。急げ! ニクスも早くその豆を回収しろ! 根こそぎだ! そして1秒でも早くだ!」


 材料はどうにか手に入ったけど、こっからどうすんの? えっ、次回に続かないでこのままいくの?



 ※



 俺はチョコレートの材料調達に大活躍だったから知らなかったが、セバスが予め時間が必要になるのを見越して用意していた。

 アレだよ。アレ。1日で1年分のアレができるやつだよ。要は時間を短縮する方法ってことだよ。


「流石、なんでもありの悪魔様。ありがとうございます。カカオバターまで教えてくれて」


 豆からのチョコレート作成にはもう1つ、カカオバターという材料が必要だったのだ。こいつはカカオ豆の加工の過程で手に入るらしい。

 知らなかったので、そのままいっていたら大変だった。セバスには感謝しております。


「小僧。貴様が自分で用意した資料に、全部書いてあったがな。何故、作った本人が知らない。呆れ果てる」


「作ったけど全く読んでなかったんだ。あまりの出来の良さに満足してしまって、読むとかしなかったんだ。しかし、有能であって良かった」


「まあいい……。後の行程はこちらで引き継ぐ。小僧はしっかり、材料をチョコレートにする方法を覚えてこい。資料にはあっても、体験が欠如していては伝わらんぞ」


 セバスの言うそれは、チョコレートだけに言ってるんじゃないよな。ルイのことも含まれてるはずだ。

 どうしてセバスは協力してくれたんだろう? まあ……悪魔の考えなんて分かりっこないか。


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