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 やっと来る木曜日

♢13♢


 ミルクちゃんのコンビニを後にした俺たちは、再びゴンドラのところに戻り、再び民衆に崇められ、再び調子に乗ってしまい、再びお姫様に足を踏まれして、城へと戻ってきた。ボクは今……とても足が痛いです。


「ぐおぉぉ……。馬鹿力め。怪力姫め!」


「ふん、本気でやってたら足の骨は砕けてるわ。うんと手加減してあげてるのよ。感謝なさい。そして、バカばかりやってることを反省して!」


「反省はするとも。命に関わるからな! そうやって俺のことばかりを責めるがキミこそ、もーーすこし、ミルクちゃんのように、女の子らしくできないのかい? 人前であれはどうなの? みんな引いてたよ?」


「──はぁ!? あたしのどこが女の子らしくないって言うの! む……身体的なことを言ってるんだとしたら、ぶっころすわよ!」


 そういうところが、女の子らしくないって言ってんだよ……。

 幼馴染大明神様はすぐ手が出る。お姫様はすぐ足が出る。これが女の子らしいかい?

 しかし、もっとおしとやかにはできないのかい? とは、本人たちには言えません。手が出るし、足も出るからね。


「落ち着きたまえ。糖分が足りていないんじゃないかい。もう、おやつの時間だろう。おやつ食べて落ち着いて」


「──誰のせいだと思ってんのよ!」


「まあまあ、こないだコンビニで買ったチョコを食べて」


 そういえばチョコで思い出したが、トリュフチョコの存在をすっかり忘れていた。ケーキにばかり意識が向いていて、同じ冷蔵庫に入っていたのに持ってこなかった。

 まぁ、保存期間は問題ない。次来るときにでも持ってこよう。


「もういいわ。お疲れ様。あたしの用も済んだし、もう帰っていいわよ」


「……」


「あーあ、最後までバカに関わって疲れたわ。本当にチョコ食べよう」


 用が済んだら、はいさよならと……。

 社交辞令だとしても『私、これからお茶しますの。ご一緒にいかが?』とか、『い、一緒におやつ食べていってもいいんだからね!』とか言えないのかね。

 まあ、どちらもお姫様のイメージとは違うんで却下で。


「小僧。悪魔にも出来ることと、出来ないことがある。今回はなんとかなったが次はない。同じことを次したら、貴様にツケを払って貰うことになる。来れない時は事前に知らせろ」


 お姫様と入れ違いに、クローゼットのところで時間とやらを調整していたセバスが現れた。

 いきなり脅してくるあたりが流石だと思う。この悪魔め!


「……どうやって? 緊急の連絡先があるわけでもないのに、どうやって? あとツケとは?」


 だが、セバスも無理なことを言うもんだ。

 クローゼットしか行き来する方法がない俺に、どうしろというのか。


「時間のツケは時間だろう。寿命に換算すると1秒で60年ほどだ。24時間なら──」


「──ストーップ! それ以上はいけない。2秒で俺の人生が終わるのは分かった! もういい……」


 こわぁ……。時間は買えないのは知ってるけど、払いが寿命って! この件をこれ以上は考えない!

 ──以後、約束は守る! これでいいんだ!


「連絡方法はこれだ。番号を書いておいた。必要な時だけかけてこい。必要な時だけだぞ」


「……」


 数字の書いた紙を渡され、そこには11桁の数字が書かれている。0から始まるやつだ。

 固定電話ではない。これは、携帯の番号だね!


 んーーっ、俺はもう悪魔については何も言わない。きっとなんでもありなんでしょう。

 チョコレートも頼んだら、用意してくれるんじゃないかと思ったりもするのですが、後が怖いのでやめました。



 ※



 丸一日、異世界で過ごしてしまった……。

 帰って、寝て、起きて、学校とか。やだなー、行きたくないなー。


 本日、世界間にきっかり1日のズレが発生した。なので、この期にセバスはいろいろやってたらしい。

 いろいろが何かは怖いので聞かなかった。どう考えても怖すぎるでしょう。

 普通の人はね、世界とか時間とかに関わってはいけないんだよ?


 それにより異世界に行ける人間(つまり俺だけ!)だけ、1日が1日多くなったり、1日が100日になったりできるらしい。戻った時、完全に浦島太郎現象になるからやらないけどね!

 夏休みを2倍3倍にすることはできるが、その場合、俺だけは現実から切り離されているわけだから、異世界の時間の中で過ごした分だけ、歳とるというわけだ。


 夏休み明けクラスメイトが1人だけおっさんになってたらどうよ? グレたとか、夏休みデビューしたとかとはわけが違うよ? 完全に同じ人でもきっと別人扱いされるよ?


 時間とは誰にも同じく流れているようで違うらしい。光が地球に届くまでの、時間と空間の話的な話だと思え。難しくて俺も分からなかった!

 だけど、人はそれぞれ寿命も違うのだから、違うと言われれば違うのだろう。産まれる時も、死ぬ時も一緒ってのはない。


 同じ時間の中にあっても、同じ時間を過ごしていても、それでも違うのだと悪魔は言った。


 寝てから起きるまで、時間の意識はあるか? 夜に寝て朝に起きるから、そう思うだけじゃないか?

 その空白に世界がどうしていても、人間には何も感じられない。その空白に時間が何をしていても、人間にはどうすることもできない。だってさ。


 まとめると『よく分かりません!』だ。けど、それでいいんじゃね? 分かったところで意味があるとは思えない。はなから気にしてもしょうがない。


 今大事なのは、俺は明日も早起きしなければいけないということだ。また、学校に行く前にスーパーによらなきゃならん。

 ルイのメールをちゃんと見て、間違えないように材料を買わないとまた走ることになる。明日は何を作るんだろうか……。


 この日は夢を見た。女の子からバレンタインにチョコを貰う夢を。

 たぶんあれは小学生の時だ。相手はルイじゃなかった。それに……。


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