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 悪魔放送

※オープニング※


「はい、今日の悪魔放送は生放送にてお送りしております。本日のゲストは現実の世界からの有名人。皆さんご存知のプロデューサーこと、白夜(はくや) 零斗(れいと)さんです!」


 プロデューサーと紹介された神官のような格好の若い男が、スタジオ内に用意された椅子へと歩いていき、プロデューサーと紹介した女の悪魔の隣へと座る。

 プロデューサーが短い距離を歩いていく間も、周囲からは拍手が巻き起こる。それを慣れた様子でプロデューサーは治める。


「いやー、まさかの大物。まさかの有名人の登場に、ワタクシかなり驚いております! プロデューサーさんは人間でありながら、異世界をプロデュースなされているとか?」


「はい、私はそれが天命だったと思っています。おっと──、失礼」


「ちょっと、セクハラはやめてくださいよ〜。いくらプロデューサーさんでも、訴えちゃいますよ?」


 明らかにわざとしたセクハラ行為。

 着席する際、わざとオーバーな身振りをして倒れ込んだ先には女の身体があった。それを、いやらしい手つきで触れる男がプロデューサー。


「貴女が魅力的だったので、つい。申し訳ないです。ただ、今となっては私を訴えたところで、全て揉み消しますよ」


「おぉ──、ブラックな発言! 確かに、アナタに逆らって世界から消えてしまった人たちは大勢いますからね……」


「分かったら大人しくしていなさい。悪いようにはしませんから」


「──ワタクシ、何故だかピンチです! 放送中はずっと、セクハラを受け続けるようです。 ……しかし、わたくしにもプライドがあります。どんな目にあおうと、しっかりとお伝えいたします! あっ、ちょっと──」


 この放送は誰にも止めることはできない。

 何故なら、悪魔によって電波はジャックされているからだ。放送事故もない。


「プロデューサーさん。こんなことしていると、彼女さんにおこられますよ。いらっしゃるんですよね。この資料にありますよ」


「構いません。あれは私にゾッコン。なんだって許してくれますよ。それに、魅力的な女性を前に我慢する方が難しい」


「流石、実はクズと名高いプロデューサーさんです。全世界と繋がりがあるだけはあります! しかし、セクハラはこのくらいにしていただいて、質問コーナーに移ります」


 用意されている資料は本物。

 問題はリポーターと、このプロデューサーである。




Q.これまでのプロデュースについて


「まずは、ここまでの偉業についてお伺いします。全部、さも自分で考えたように振舞っていますが……全部パクリですよね?」


「ぶっちゃけそうですが、異世界では私が初。なら、パクリにはならないでしょう」


「安定のクズ発言いただきました! 中でも多種族のユニットによるアイドル活動。あれは、すごい人気ですよねー。どうやって思いついたんですか?」


「近年の無駄に人数が多いアイドルを見て、異世界の魅力的な女性たちを見て、思いつきました。人間が寄せ集まっただけで流行るんですよ? もし、多種族で出来たらと考えました」


「完全にパクったわけですが、それが大ブレイク。楽曲こそオリジナルですが、裏ではいろいろと揉めたみたいですね?」


「最終的には認めてくれましたよ。裏から圧力をかけて、『認めないとどうなっても知らないぞ?』。そう脅したわけですが」


「脅迫はプロデューサーさんの常套手段ですからね。プロデューサーさんはサブカルチャー以外に、食に関しても様々なものを持ち込み、それとなくアレンジして提供していたようですが、ぶっちゃけ儲かりましたか?」


「それはもう。新しいものを出すたびに、売れて売れて。今や、取り扱う店も数え切れないほどになりました。この2つだけでも、がっぽり稼がせていただいています」


「他にも手広くやられていますし、総資産はちょっと引くくらいの額になっていますよねー。少しくれません?」


「いいですよ。後で私の部屋に来てるくれるならね」


「これは、間違いなく如何わしい匂いがします! しかし、そうと分かってはいても、この誘惑には悪魔といえど抗えないかもしれません! あっ──、一旦ここでVTRを挟みます!」


 ここまでの偉業。そのタイトルの映像が流される。

 VTRのタイトルは、『始まりのバレンタイン』となっている。

 今は、ある程度プロデュースされた世界。



 ーーーーーーーーーー



※オープニング 裏※


「んっ、んん──、んっ。ん! ──んっ!!」


 俺は別に狂っているわけではない。これは単純に声が出せないのだ。

 これが何故かと言われれば、口をガムテープでしっかりバッチリとふさがれ、手足をしっかりバッチリと縛られているから。んで、床に転がされているからだ。


 あぁ、申し遅れたが、ここで『ん!』と言っている俺が本人だ。だ、か、ら、本物は俺!

 白夜(はくや) 零斗(れいと)という厨二くさい名前の人間は俺なんだって!


 そんな名前のやつは世界広しといえど、間違いなく1人しかいない。つーか、2人も3人もいてたまるか!


 こんな事になった事の発端は、悪魔放送という今考えると、どーーーー考えてもヤバい名前の放送局が、俺に取材を申し込んできたことだ。

 怪しいは怪しいが、『有名になったな、俺』そんな感じで、軽いノリで、取材を受けたのが間違いだった……。


 うん、周囲には相談せず勝手に決めた! だって、俺がプロデューサーだし!

 あのリポーターのお姉さんに頼まれて承諾してしまったのだ。色香に騙されたと言ってもいいかもしれない。


 ──で、そろそろいいか?

 今、俺の置かれている状況はざっくりだが説明したから、みんなは分かってくれたよな?


 はーーーっ。


 誰だ、そいつーーーーーーーーーーーっ!!!

 どこのどいつだーーーーーーーーっ!!

 何、俺だって紹介してんだーーっ!


 ねぇ、誰なの。アレは誰なの!?

 ナチュラルにセクハラしてる、しまくってる、あいつは誰だーーっ!


 バカなんじゃないのか。全世界に向けて何を放送してんだーー! そして何言ってんだーー!

 そんなことしてないからな。世界から消すとか無理だから……。そんな力は俺にはないから。


 おいおい、またセクハラしてるー。誰かその偽物を止めて! お願いだから!

 ヤバいってー。マズいってー。そして、ちょっとだけ本当のこと言うのやめて。


 彼女はいるが、ゾッコンじゃないから!

 このあと、ふつうにころされるから!

 俺が二度と目覚めなくなっちゃうから!

 そのくらいの暴力は容赦なく振るわれるから!


 誰か、その偽物をころせーーーーーーーーっ!




Q.これまでのプロデュースについて。裏。


 世界に向けてパクリとか言うな。そんなこと言い始まったら、全部パクリになっちゃうから。

 異世界になかったことを、始めただけだから。


 そして、なんだその発言は!? 『認めないとどうなっても知らないぞ?』俺はそんなこと言ってない。

 やつらは、俺をどんな権力者なんだと思ってんだ!


 しかし、これはどうにかしないとマズい。

 また、世界中から命を狙われる。つーか、その前にころされる……。


 それに、悪魔たちは知ってやがるな? アレが偽物だと。その上で知らないふりをしてるのか、全部アイツらの仕込みなのか。どちらにせよ……──だから、何を言ってんだーーーー!


 あの、セクハラ野郎は誰なんだ! 俺がなんかしたか!?

 VTRだと? そんなのまで用意してあるのか。『始まりのバレンタイン』確かに始まりはそこだった。

 思い出してみよう。その始まりの物語を。


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