第20話「結婚報告!?」
「起きてー! 朝だよ! すっごい朝!」
「んあ…?」
耳元でユミスが元気に騒いでいる。どうやら完全回復したみたいでひとまず安心。
「おはよう、ユミス。体はもう大丈夫なの?」
「この通り! もう大丈夫だよ、ありがとね」
窓から外を見ると、そこには元の美しいリージュの景色が広がっていた。
ドンドンドンドン!
突然、玄関がけたたましい音を立てる。
「お兄ちゃん、もう大丈夫なのーっ?」
騒音の正体は妹だった。
「鍵乃か…びっくりさせんなよ…」
「もう家に入っても大丈夫?」
「おう、全部解決したぞ。オールグリーンだ」
「そっか、良かったね」
「鍵乃、家に入る前にしてもらいたいことがある」
「なに?」
これを手伝ってもらわないと計画が狂う。もう一回、お祭りをするんだ。
「ミクと手分けして、村の人をユミス像の前に集めてくれ、お前はあまり遠くに行くなよ」
「突然どうしたの?」
「後で分かるさ、だからお願い!」
「分かった。お兄ちゃんはどうするの?」
「俺はユミスに伝えることがあるから後で向かうよ」
「ユミス…か、ふーん」
「なんだよ…」
「お兄ちゃんの女たらし」
「はぁ!?」
そう言うと鍵乃は駆け足で向かってしまった。三百メートル以内にいないと困るのだが。まぁ、ミクもいるし、そこは大丈夫だろう。
「ユミス、入るよ…ってうおぉぉ!?」
そこにはお着替え真っ最中のユミスがいた。この世界に来てからというもの、ラッキースケベの神からの加護がヤバい。
「燈矢!? ちょ、ちょっと待っ、っとと…うわぁっ!」
よろめき、足を滑らせ思いっきり転ぶユミス。正直痛そう。
「大丈夫か!?」
「こっち見るなぁ!」
高速で繰り出された鉄拳が鼻頭にめり込む。
「いったぁぁぁああっ!!」
「わああっ! ごめん燈矢!」
ーーーーーーー
「まぁ、なんというか、いきなり入ってすまなかった」
「私の方こそ突然殴ったりしてごめんなさい」
めり込んだ顔面をユミスに修復されながら、謝り合う空間は、なんとも言えないシュールさを醸し出していた。
「あっ、そうだった。今日、復活祭やるぞ」
「うぇぇ!? 今日だったの!?」
「あれ? 昨日も言わなかったっけ」
「言ってたような、言ってなかったような…」
ユミスの復活祭を行うために、村人を集めようとしていたのだ。
「ありがたい事だけど…もう祭りの準備は…」
「いや、やる。誰がなんと言おうとやる。たとえ、隕石が落ちてきても、龍が襲ってきてもやる。」
「どうしてそこまで…」
「ユミスはお祭りしたくて頑張ったんだから、その頑張りが報われないのはおかしいだろ」
「でも…」
「いいから、ほら行くぞ」
俺はユミスの手を取り、家を飛び出した。
「ちょっ、燈矢! どこに行くの?」
「お前の銅像の前まで」
ユミス像の前には、すでに村人がわらわらと集まっていた。
「ユミス様だ! お体は大丈夫なのですか?」
村人からのユミスに対する声が飛び交う。
「ごほん、静かに! 静粛に! ビークワイエット!」
突然の英語に戸惑う村人。この世界の共通言語が日本語ってやっぱりおかしいよな。シャスティに聞いとけばよかった。
「えー、今日集まってもらったのは他でもない。ユミス様の復活祭をするためだ」
村人がざわつく。
すると突然、ユミスに後ろから服を引っ張られる。
「ん? どうかした?」
「ユミスって呼んでくれないの?」
おいおい、この神様、昨日からずいぶん甘えんぼになってる気がするぞ。
「これには、時と場合ってのがあってだな…」
「そっか、燈矢にとって私はその程度の存在なんだ…たった一日面倒見てもらっただけだもんね…はぁ…」
めんっどくさぁ…こいつ超めんどくさい。てか重い。でも、正直こういう所は俺的にポイント高い。
「ごほん、うおっほん。えっと…村で準備してた祭りの道具とかはどこにあるんだ?」
「すぐ使えるように物置にしまっておいてるよ。何があるか分からないからねぇ」
「ありがとう、じゃあそれをそのままもう一回飾り付けよう。祭りが明日になったっていい、ユミスを喜ばせるんだ」
この言葉に再び村人がざわつく。もしかしてなんかいけない事言っちゃった?
「おいお前! なんでユミス様のことを呼び捨てにしてるんだ!」
「そうだそうだ!」
あー、地雷踏んだ。こうなるかもしれないから呼びたくなかったのに。
「黙りなさい、あなた達」
ユミスが一声で群衆の罵声を黙らせた。神様ってすげぇ。
「こ、こにょ…んんっ…ごほんっ。この人は、わ、私の…旦那さんになる人だから良いのです!」
「は?」
「「えええええっ!?」」




