暗闇に住む、深海魚
もしよければ、縦書きPDFでお読みください。そちらの方が、より楽しめるだろうと思います。
昔と昔のそのまた昔、
私のママは、言いました。
「あなたはとても、かわいそう。きっと、私を恨むでしょう。それでも私は愛するわ。たった一人の子ですもの。」
私はぬるい、暗闇で、そんな言葉を聞いていた。
昔と昔のちょっと前、
パパが私に言いました。
「あの山越えた、さらに向こう。そこには大きな海がある。
海は綺麗な青色で、どんどんどんどん暗くなる。そこでは何も見えなくて、それでも魚は生きている。みんな必死に生きている。」
私は初めてそのときに、
「色」を知らない友達が、たくさんいるのを知ったんだ。
昔と昔のちょびっと前、
慣れた香りのする場所で、形も知らない人間が、
突然私の前に来る。
「こんにちは、久しぶりだねお嬢さん。」
私は必死に音を探す。
けれども音は、見つからない。
「忘れているのも、無理はない。
君と会うのは8年ぶりさ。」
そうしてこのとき私には、友達ひとり、できたんだ。
昔と昔、ぐらいかな。
パパが、私に言ったんだ。
「あともうちょっと、待ってくれ。
そしたら君の、友達が、
君の世界を変えてくれる。
私は意味が、わからない。
世界は暗くて怖いもの。音を頼りに生きてきたから。
昔のすこーし昔ぐらい。
私の周りに人がいる。
ひとりじゃなくて、5人ぐらい。
深呼吸をしてみると、なんだか眠く、なってきた。
昔はいったい、いつだろう。
私は何を、していたのかな。
なんだか記憶が曖昧だ。
それでも一つ、わかること。
聞かなくたって、わかること。
これが、光の、「色」なんだ。
私の世界は、変化した。
音と、色が、混ざり合う。
私はときどき考える。
深海に住む、お魚も、
色を知る日が、来るのだろうか。
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