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プロローグ

約二年ぶりに書きます。文章がぐっちゃぐちゃで読みにくいですが、評価の方よろしくお願いいたします。

挫折した作品もありますが、この作品だけは書き抜きたいです。

興味を持ってくださった方々、感謝いたします。



神は人間が信じているものであって、実際にはいない。そんなことを口にした瞬間、シスターに殴られてしまうだろう。そんなことは二度とごめんだ。

 歯が軋むぐらい殴られれば誰だって軽口を言わないだろう。それが、人形姉妹の二人であってもだ。

 海に近いアルギスは、今日も雲一つない晴れ模様で、ここ数週間は雨が降った試しがない。潮風が小高い丘にある教会にまで運ばれてくるのは、教会内のスタッフだったら誰でもが知っていることだし、アンダー・アーキソンだって知っている。

  教会の近くに、人気は高い木が、自分の存在を大きく見せるために、一本生えている。アーキソンは木の七文目のところで横に伸びた太い枝の根元に、幹へ背を預けて寝ていた。緑の葉が生い茂り、ちょこちょこ日光がアーキソンの顔に当たるも、気にすることもなく目を閉ざしていた。

 まつ毛は長く、顔は小さい。髪は見事な金髪だ。服装は、女子とは思えないほど、親父臭い。胸元にデカデカと‘男魂’の二文字が書かれている長袖ジャージを着ている。一方、寝息は優しく、静かなもので小動物が寝ている光景を彷彿させる。これで寝言が可愛らしければいいのだが


「ん、そこは」「油増し増しが妥当でしょ?」「麺は固めじゃなきゃ………」「カルボナーラ」


 訂正しよう、外見が小動物でも夢の中までか弱くはなかった。

 しかし、ここまで天気がいい日はここ数日なかった。いつもは風が強く、街は騒々しいほどにぎやかである。賑やか、というのは活気に溢れているイメージがあるが、ここはかなり違う。

 活気に溢れているというのは、あながち間違っているわけではない。ここは、‘捨てられた街’なのだ。

 この世界は、魔術で統一されている。移動手段も魔術。料理をするものも魔術。機械なんて珍しいもんだ。魔術師の大半は、機械は効率が悪く、しかもコスト等がかかりすぎるため、負の存在でしかない、と嘲笑った。

 そこで機械派の人間が魔術に対し、武力介入を行った。人間は、ある一定のフラストレーションが溜まると、それをぶつけるが如く、対象に攻撃する。

 それが積もりに積もった結果、戦争が始まり、世界が壊れた。国の至る場所に要塞を作り、進撃していく。補給を行い、敵を殺す。

 結果、辛勝という形で魔術派が勝利。だが、世界は二つに分かれてしまった。

 

 機械と魔術、に。


 二つの組織が手を組み、人類の文明を進歩させれば各なる発展が期待されていたが、双方はそれを拒んだ。信用というのは、人それぞれで違い、誰でも簡単に信用してしまう輩がいれば、他人を受け入れない輩だっている。

 信じるというのはそういうものだ。人のさじ加減で覆すことはない。長年の経験がそれを牽引しているし、短い月日で信用を得るなんて、そんな上手い話はない。

 負の連鎖はここで終わるわけではない。戦争が引き起こされて、世界が二つに分かれただけでは終わらなかった。

 後処理が追いつかないのだ。世界の至る所に要塞やら補給所を作ったと言ったが、終戦によりそこが奇襲されたり、略奪されたりしたのだ。なぜ、自分たちが戦わなくてはならないのか、一部の魔術師や機械の人間たちはそう思った。戦争をしなくても話し合いなどで解決できた内容ではないのか? 

 機械が攻めてきたとはいえ、性能でも人員でも勝る魔術が辛勝なんてしてしまったのか。今まで魔術を信用していた魔術師は、逆に魔術を疑うようになった。一部の人間は次第に増え、拡散し、最終的には魔術に信仰していた魔術師まで拡がっていた。

 機械派も同じことが起こっていた。どんどん広がった結果、アルギスのように救済しきれなかった‘捨てられた街’が至る所に出来てしまった。

 多くは殺しと言う名の救済活動を行って、治安の良い環境の街が復興した。一部は日常から殺人が繰り広げられる街もあるようだが。

 アルギスは、その殺人に特化した輩が根城を立てる場所として、復興していった。

 だから、毎日街が壊れるとか臓器が道端に転がっていて、鳥がそれをつばみにくるなんてご法度である。昨日だって、二地区のアレックス邸に爆撃があったとアーキソンは耳にしている。

 まぁ、アレックスは素性も人相も性格も子分も腐っているのだから、誰もが心配していない。むしろ、我が身を心配していなければ、明日食う飯どころか今日死ぬかもしれないのだから。


「起きな、アーキソン! ほら、起きな!」

 アーキソンが寝ている木の下で、どなる声がした。


 どうせ、シスターだろうしおつかいだろうな。シカトしとけば誰かに振るだろう。

 そんなサボり上等なことを思っているアーキソンが目が覚ましたのは、背中に痛みが走ったときだった。

「だぁっ!?」


 あまりの激痛に跳ね起き、両足を地に付ける。あれ、おかしいな? と思い、アーキソンは下を見た。お気に入りのピンクのビーチサンダルの下に、固い土を踏んでいた。アーキソンの傍らにはさっきまで寝ていた木の幹がゴロリと横たわっていた。

 幹の根元からしっかりと折られている痕跡まではっきりとあった。

「おいババァ! ざっけんじゃねぇよ! 可愛い可愛いアーキソンちゃんが死んだらどうすんるんだよ、加減を知れ! 早死にさせんぞクソ尼がぁ!?」

 中指以外の指を折り、しっかりと中指を立てる。その手をシスター姿の初老に向ける。


「うるさい餓鬼だねぇ、それでも将来お嫁さんが夢の娘かい?」

「ガチファック! こんな天気のいい日に昼寝をするっていうのを聖書に書いてねぇのか? それか歳取り過ぎて、寝てることさえ忘れてるのか。あと、嫁ネタは言うんじゃねぇよ!」

「そうかい、あぁなんということ。こぉんなに可愛かったお嬢ちゃんがこんな口汚い子に育っていたなんて……。あたしぁ、悲しいよ。よよよ」

「あ、おい! 赤ちゃんのころの写真持ってるんじゃねぇよ! 出すな、しまえ!」

「あのころのアンタときたら……、そりゃあ我が子のように可愛かったさ。夜、トイレに行けなくて、あたしを起こしてねぇ。しすたぁ、おしっこもれちゃう。なーんて、そんなことを言ってねぇ。あれだねぇ、あれ。ある一部の人間が言っている言葉、なんだっけか? そうだ、萌えだ萌え。ありゃあそれは悶絶する萌えだってさね」

「いい加減にしろ、馬鹿! なんか用事があんだろうが!」

「あと、そうだね。教会で走っててころんじゃったときは、もうねぇ………」

「あーもう! わかったよ、うちが悪かったよ! だからその話はやめてくれよ! なんでもするからっ!」

「よしわかった、お願いしよう」

 なんということだろうか。驚きしかない。


 シスターの初老は、手に持っていた茶封筒をアーキソンの前に差し出した。

「? お使いか?」

「そんなところだね、これをタクトに送ってほしい。おっと、中身は見ちゃあ駄目さね。アンタじゃ処理できない」

「何が入ってんだよ? どうせ、防衛術とかの術式とかじゃねぇのか?」

「いんやぁ、そんなチンケなもんじゃない。簡単に言うと、タクトにしか使えないモンだね」

 タクトか。そういや、アイツどうしてんだろ。アーキソンは彼のことを思った。

 普通、魔術を心得ているものは、魔術に心を委ねてはいけない。もし、委ねてしまえばその力を魅了してしまい、自我を失う。テンプレートとしての言われだが、先の戦争において、魔術に心を売った人間は少なくない。危機に迫りくる圧力は図りしきれない。

 もしかすると、記録を超えたいがために違法薬を使用する輩と同じ心理なのかもしれない。魔術に真の意味で取り込まれてしまうと、一定以上の魔術は使える。小さな火の玉から巨大な火の玉に使えると説明すればいいか。リミッターを解放する、と表現すればいいのか。人間が力を一〇〇%発揮できないのと同じように魔術にもリミッターが存在する。自分の能力以上のことをすれば、身体に激痛と似た痛みが走る。実際は、それは痛みではなく、脳が危険信号を表示している。


 タクトはその禁忌を超えた。


 結果、魔術という一つの個体は彼と分離し、一人の魔術師として生み出された。こんな神様も驚くようなことがあっていいのかと思われるが、シスターがいうにタクトの他にまだいるらしい。らしい、というのはそれに耐えきれず、自決するものやそんな森羅万象を覆すことの現実に目を背け、魔術を断ち切る者がいたからだ。タクトの場合、魔術を受け入れ、他の地域へ出向いている。だが、ここで疑問が生じる。


「なぁ、シスターツヴァイ。タクトはまだ帰ってきてねぇんだろ? だったら、なんで内に渡す? まさか探せって話じゃねぇだろうな?」

「今日、あたしのところに連絡が来てね。奴が帰ってくるらしい」

「本当か!?」

 思わず、アーキソンの顔がほころぶ。


「いつだ!? いつ帰ってくるんだよ!?」

「あーたしに聞かれてもねぇ。ただ、あいつは俺の家にいる奴に渡せばいいとしか言ってなくってねぇ」

「わかった、じゃ行ってくる!」

 タクトが根城にしている地区は、たしか六地区。アルギスの中で比較的治安がいい。とはいえ、油断をしたら鉛玉がこめかみを抉ることは確実なのだが。

「待ちな、あんた一回落ち着きな」

「なんだよぉー、おにい……、タクトに会っちゃいけねぇのかよぉー」

「まったく、お前という餓鬼は……。あんたは今日気付いていないのかい? もしかして、あたしの教育方針が間違っていたのかねぇ?」

 きっかり一〇秒、キャリアの言っていることが分からなかった。思考が停止したが、耳に入ってくる音に対して気が付いた。


 カモメの鳴く声が聞こえるのだ。


 アルギスは、日常茶飯事、銃やら魔術やら機械の音で活気づき、臓物が流れ出る死体が転がっているなんてアーキソンはもう慣れた。首だけの男でサッカーをしたことだって、幼少期にしている。だが、その音がしない。どこの地区からもしていない。これは、おかしい。

「シス」

「どうやら、外から何かが来たようだね。全く、こんな時に限って……。タクトが連れてきたんじゃないだろうねぇ。まぁ気を付けるんだ。あぁ、緊急時には武装解除していいからね。攻撃した野郎は」

「こっぱみじん!」

「そう、それを忘れるな。ルシファにはこのことを伝えてあるから。気を付けていくんだよ」

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