何処なんだよ
此処は、どこなの_?
目が覚めると、見覚えのない場所へ来ていた。
おかしい…私は普通の高校生活を送っていたのだ。
家から徒歩十五分くらいの土地に建つ高校へと、何の問題もなく通っていた。
その私が、此処はどこ…なんていう言葉を発するとは思いもしなかった。
とりあえずこの状況を把握しないと…。
回りを見渡すが近くにはうっそうと生い茂った竹やぶがあるだけで、特に場所を特定できるようなものはない。
遠くの方に夜の中で光るの星が見えるだけだ。
お先真っ暗とはこのことか。いや、遠くに明かりは見えるけれど。
どうしたものかと悩んでいると、すぐ隣でもぞもぞと動く気配がした。
そうだ、忘れていた…。
寝起きのような顔で目をしばたき、魂が此処に在らずといった様子でいるのは幼馴染みでもある、赤咲圭だ。
その気だるげな雰囲気とおとなしそうな…いや存在感の薄さに今まですっかり忘れていた。
私が少し反省している横で、また寝ようとしてるし。おいおい、状況分かってる!?
「…ねえ、あやめ。どうして俺たち此処にいるんだろうね」
「こっちが聞きたいよ。圭、なにかしたの?」
「うーん…寝てたから記憶がない」
そうだったわ。圭は寝ることしかしないからな。一日に対して起きている時間よりも寝ている時間の方が絶対多いもんね。
「とにかく歩いてみる?此処がどこか分からないし」
「分からないなら下手に歩かない方がいいんじゃない…」
ああ、それもそうか。ていうか歩きたくないだけだよね。うん、分かってたけどさ。
ここで立ち止まってても何も変わらないよね。
また懲りずに寝ようとしている圭を連れて、あの微かな明かりを目指した。
目指したはいいものの前途多難。五里霧中。
明かりは見えるがなかなか着かない。いやいやそんなことってある?
歩いても歩いても着かないとか、怖すぎるよ。
こんな状況でも幽霊のようについてくるだけで、まったく危機感のない圭は違う意味でも尊敬するわ。心臓に毛が生えてるのかな。
まったく…普通はこういう意味分からない状況のときは、女の子が怖がってそれをイケメンが助けるんでしょう?
圭にそういうの求めても望みがないことくらい分かってる。それに、圭には…
「…あやめ、俺明日あいつと出かけるんだけどそれまでに帰れるかな」
圭には…恋人がいる。とても優しくて可愛い彼女。
紹介されたときには驚きが隠せなかったから、あまりよく見れなかったけれど
圭とは柔らかい雰囲気が似ていてお似合いかもしれない。
なんて、いまは物思いにふけっている場合ではないんだった。
とりあえず歩いてみるか。