なんで「ダッキーニ」って名前かというと
「誰が『あほう巻』だよ、『恵方巻』だろうが。ふざけてんじゃねえぞ!」
誰もそんなこと言ってやしない。だって、この東向きのワンルームマンションには、ネコのオレしか他にはいないのだから。
ただ・・。ネコのオレは、ちょっと前に確かにそう思った。
「今年は西南西だ」
と、中の下の生活水準のくせに、一本六百円もする上巻にかぶりつく飼い主を見て、確かにオレはそう思ったんだ。 こいつ、人の心は読めないくせに(というか無神経)、どうしてネコの心は読めるんだ?
子猫のオレがこのニートみたいな三十前の男に飼われて、早三年。
だいたい、イタリア人じゃあるまいし、ネコに「ダッキーニ」なんて名前を付けやがって。じゃあそれがイタリアと何か関係性があるかというと、まるでありはしない。そもそも、茶トラのオレをなぜコイツが飼い猫に選んだのか。特別ネコが好きということでもないくせにだ。
飼い始めて早々、彼いわく、
「ギャンブルのためなんだ」
なんと、「荼吉尼天」(だきにてん)を、しゃれた呼び名にしたつもりだという。お稲荷さん(仏教ではイコール「荼吉尼天」)は財運をもたらす。そのお稲荷さんの使いはおキツネさま。そのおキツネさまを、自分のギャンブル人生を守護してもらうために、身近に置こうということらしい。キツネはさすがに飼うのはたいへんだから、茶トラのネコにしたってわけ。
「荼吉尼天」の使いの、ネコの「ダッキーニ」。
本来ギャンブルは、勝とうが負けようが、自己責任のはず。「苦しいときの神頼み」も、ここまでくるとただあきれるばかり。