飼い主決定
「ダッキーニ」。イタリア人みたいな名前を飼い主につけられたオレ。オスの茶トラのオレ。
捨て猫をレスキューしてくれる団体がこの世になかったら、橋の下のダンボールの中で、とっくにオレは野垂れ死に。カラスのエサになっていた。運よくレスキューされ、避妊手術を受け、トイレの躾も身に着けて、飼い主を待つ日々。ネコ好きのボランティアのおばさん(バツイチ?)のマンション(ほんとはペット不可?)が仮の住まい。オレはオーソドックスに「トラ」(仮名)、同じダンボールで二匹いっしょに泣いていたシャイなメスの子のは「ミケ」(仮名)と名付けられ、誰からもオファーが来ないまま、このお家に住み着いてしまった「クロ」(正式名・12歳)と同居。オレとミケに飼い主が現れたら、また同じようにレスキューされたニャンコがここにやってくるのだろう。人のいのちすら大切にしない畜生以下のやつらもいるっていうのに、なんてまあいいおばさんだろう。
選ぶのは人間サマ。オレには飼い主は選べない。 ネットでオレとミケの容姿が公開されて数週間。問い合わせが数件あり、おばさんのお休みの日に実物を見に来たのが三組あった。小学生の子どもを連れた親子、お水っぽい、茶髪のぽっちゃりしたお姉さま、それとニートみたいな青年・・。オレは好奇心旺盛な子猫そのままに、ねこじゃらしで初対面から遊んでもらったけど、シャイな「ミケ」はお部屋のすみに隠れてしまい、いくら呼んでも出てこない。これじゃあ、「クロ」みたいに一生ここでお世話になりそう。三組ともオレを希望したようで、案の定、ミケにはオファーなし。虐待の恐れはないか、ちゃんと育ててくれそうか、いろいろ育ての親が検討した結果、背の高いニートみたいな痩せたにいちゃんに、オレのいのちが託された。そうさ、オレには飼い主は選べない。