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最終章 回想
――あれから何年経っただろう。
圭介はひとり、山の上にあるクミの墓の前に佇んでいた。母と暮らした日のことが、ついこの間のことのように思われた。圭介を見つめる母の毀れるように優しいまなざし。どんな時でも、何も言わずに受け入れてくれた母クミ。
クミは圭介の為にだけ生きた女性……。
いまクミの一生を思うとき、圭介はそんな風に思えた。
≪圭ちゃん、頑張るんだよ。家族なかよくね≫そう呼びかける母の声が聞こえるような気がした。
山の坂を下りながら、圭介はつぶやいた。
≪おかあさん、ありがとう。僕は幸せだよ。おかあさんの子供に生まれて≫
圭介の心にはいまも尚クミは生き続けている。
完




