第17章 クミの入院
クミが90を超えてからは圭介の家族と同居し、安心して生活していたが、時々体の不調を感じることがあった。調子が悪くなると、懇意にしている医師の病院に入院して治療を受けた。
圭介が新しい車を買って間もなく、家に籠りがちのクミを楽しませようと、高原へのドライブを誘った。クミはそれまで患っていた腰痛が大分良くなっていたので、うれしそうに同行した。
爽やかな7月の高原は若草が生え揃い緑一色になっていた。久しぶりに遠出したクミは疲れた様子もなく、圭介が運転する車の後部座席で楽しんでいるようだった。
いつもベッドでテレビを見て過ごしてばかりのクミにとって楽しいドライブではあったが、数日後、再び腰が痛み始めた。クミは痛みはあるものの、いつも通りの軽い気持ちで入院用具を入れた箱を持参して入院した。
馴染みの病院での入院生活は至極快適で、若先生の朝夕の見回りの時には冗談を言い合っていた。これまでは数日の治療で回復して退院することができていた。
だが次第に痛みが激しくなり、毎日痛み止めを打たざるを得なくなったのだ。
入院して10日ぐらい経った頃ようやく回復の兆しが見え始め、いつになく陽気なクミはベッドの上に起き上り、自分で箸を持って夕食の病院食を食べていた。その状態を喜んで見ていた医師や看護婦も面白おかしく笑い合っていた。
圭介がふとクミに目をやった、そのとき――。何となく、クミの様子がおかしい。それを察知した圭介が医師に言った。
「先生!母は痙攣を起こしてるように感じるんですが……」クミはかすかにぴくぴく顔がひきつっていた。
それを見た医師は血相を変え素早く総合病院へ連絡し、病棟内は騒然となった。間もなく救急車が来て、クミは近くの総合病院へ搬送された。
病院に運ばれたクミには直ちに痙攣を止めの注射が打たれた。注射を打って間もなく、痙攣は治まりクミはうとうとし始めた。
圭介はずっと傍に付き添ってクミの状態を見守っていた。




