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前編

なぁ、水嶋…


僕はこの日に誓うよ…


おじいちゃんとおばあちゃんになっても…


ずっと僕らは一緒だよ…


そして…


水嶋の事ずっとずっといつまでも大好きだから…



っておぃ…水嶋…


聞いてるか?


どうしたんだよ。


はは…何泣いてんだよ。


今日は…


クリスマスなんだよ…




目を閉じれば今も思い出す。

二人で交わした3年前の約束。

岡田君の優しい眼差し、優しい声、そして私より背の高く少し日焼けした肌。


3年前のクリスマスのあの日…

私たちは永遠の恋を誓った…


高岡駅のターミナルには、大きな大きなクリスマスツリーが輝いていて、赤や青の幾重もの光を放ち、空から舞う雪を幻想的に彩っていた。街には静かにクリスマスソングが響き、私たちは、まるで昔観たディズニーの映画の中の主人公のようだった。

15歳の私の生まれて初めての恋だった…



中学に入学してから、ますます人見知りが強くった私は、クラスにほとんど話し相手のいなかった。だけど…岡田君だけは違ったね。くったくのない笑顔でいつもジョークを飛ばし、私を笑わせてくれたよね。あの時、岡田君はクラスで私が話せる唯一のお友達だったんだよ。


だけど…

気がつけば恋をしていたんだ…


1年生の時に出逢った恋は、笑ったり泣いたりしながら、3年生の夏に叶ったね。サッカーが大好きで、いつもグランドを駆けていた岡田君…。少しぶっきらぼうなところや、困ったようにはにかんだ笑顔好きだった。


『花火大会に行こう』


3年生の夏休み、中学最後の想い出だからって…一生懸命誘ってくれたよね。

私は顔が真っ赤になって、思わず走って逃げてしまったけど、ホントはすごく嬉しかったんだ。目には涙が溢れて…。だけど、どうしたらいいか分からなくなった私は気がつけば、走っていた…


そんな私を、一生懸命追いかけてくれて、


『水嶋が好きやから…』


って、そっと私の右手を掴んでくれたよね。

落ちてゆく夕日に照らされて、岡田君の少し焼けた素肌が眩しかった…。嬉しい気持ちと岡田君の優しさに、涙が溢れてとまらなかった。あの時、しゃがみこんで、ずっとずっと泣いてた私の右手を何も言わずずっと握っててくれたよね。

いつも泣いてばかりで困らせてごめんね。

そして、いつも私を見守ってくれてありがと。

岡田君が大好きで大好きでしょうがなかった…

どんなに言葉を集めても、足りないくらいに大好きだった。


二人で出かけた花火大会…もうすぐ最後の夏も終りだねって、二人でずっと手をつないで眺めてた天晴しの海…秋の遠足で登った二子山。二人で抜け出して先生に一緒に怒らた事もあったよね…何もかもがキラキラしていた毎日だった。


そう…



あの時までは…




『パパとママ東京で仕事することになったから…4月には東京に行くから…東京の高校の願書取り寄せたから見ときなさい…』




突然の出来事だった。普段は仕事仕事で忙しいパパとママが、久しぶり私に声をかけた言葉がそれだった。

私は泣いた。

ずっとずっと泣いた。

学校も何日か休んでしまった。

心配した岡田君が、毎日お見舞いに来てくれたけど逢えなかった。


岡田君の声を聞いたら…

岡田君の笑顔を見たら…


私の心は壊れそうだった。

毎日が辛かった。岡田君に逢いたい。でも逢いたくない。来年の4月にはどうせ離れ離れになるんだからと、私は岡田君を忘れようとした。


二人の恋に明日はない…


忘れる事が二人のためだと思った。

岡田君…一緒の高校に進学しようって、すごく勉強頑張ってたのに…。


それから…私はますます殻にこもった。繰り返される毎日に、私には意味がなかった…クラスでも誰とも口をきいてない…岡田君とも…悲しい恋に終りを告げるため、無視して殻に閉じ籠ることしかできない私だった。



『水嶋はサイテー女やちゃ。岡田の気持ち知ってるのに、全然口を開らかんねか。マジサイテー女やちゃ』



サッカー部の誰かが言っていた…クラスのみんなにもうわさになっていた。

だけど、何を言われても平気だった。来年の春、岡田君と離れ離れになると思う方が、心が痛かった。



だけど…



岡田君は…



ホントに優しかったね…



私は、東京の高校を受験する事や引っ越しをする事は誰にも言ってなかったのに…そっか…先生に聞いたのかな。明日から冬休みっていう2学期の終業式が終わったあと…



『最後に伝えたい事があるから今日の夜…高岡駅で待ってるから…水嶋が来なくてもずっとずっと待ってるから…』



私に真剣に話してくれたね。今まで知ってる岡田君とは全く違う真剣な表情で…。



そして…



中学生活最後の3年前のクリスマスのあの夜…



岡田君は高岡駅で約束してくれた…



「おじいちゃんとおばあちゃんになっても水嶋が好き」



「来年の春にはお互い離れ離れになるけど、今はまだ二人は世間から見たら子供やし…とにかくまずは高校を卒業しよう。だから今はお互いきちんと自分で大人になったって自信が持って言えるように頑張って、3年後の高校最後のクリスマスにもう一度ここで逢おう。その時が、ボクらのスタートだよ。」



岡田君は、そっと私に金色のリングを渡してくれた…



とっても華奢で、今にも折れ曲がってしまいそうなリングだったけど、そこには岡田君の大きな愛と優しさがたくさんたくさん詰まっていて、空から舞う雪と、鮮やかクリスマスツリーの光の中で輝きを放ち、私の心にもそっと灯を与えてくれた。



3月…

中学を卒業して、私は岡田君とめぐり逢えた大好きな富山から、東京へ旅立った…




そして――




2006年12月

いよいよ、今日約束の日が来た。

私は羽田空港へ向かうモノレールの中、岡田君との再会に胸を弾ませ、左手の岡田君に貰ったリングをずっと眺めていた…



今夜岡田君に逢える!!


東京の空からは、この時期珍しく雪が舞い降りてきていた。それはまるで今夜の二人のスタートを一緒に喜びはしゃいでいる天使たちが落とした、キラキラ輝く羽のようだった。




こんばんわ。

あいぽです。

クリスマスのこの日に読んでくれてありがとうございました。

あいぽが描くクリスマスの恋物語。

思ったより長くなり、前編と後編にわけました。

感動のラストは、明日25日の夕方更新します。

読んで頂いた皆様が最高のクリスマスが訪れますように…


Happy Merry X'mas


2006.12.24

あいぽ

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