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fact makers  作者: 四条愛羅
2/3

議論以前

放課後。時崎と中森くんを近所の喫茶店に呼び、もっと細かい話をすることになっていた。


「チェリーミルクティをひとつ」

「かしこまりました」


聞きなれたドアの音に反応しても、二人とも来やしない。時崎は泉さんを呼んできてくれるのだろうけど、中森くんは…?


「お待たせしました」

ふわりと薫る、桜の香り。中森くんと初めて会ったのもここだった。


***


あれはまだ、私が中学に入る前。

「チェリーミルクティをひとつ」

「かしこまりました」

その時、ドアからすごく大きなガタガタ、という音。

「いらっしゃいませ」

入ってきたのは同い年くらいの大きなスーツケースを引きずる少年。

「…ミルクティで。」

「かしこまりました」

柔らかい春の陽射しのような、優しい雰囲気を湛えた人。


…好きかも


彼は隣の席に座ると、私に話しかけてきた。

「あの、この辺りの方、なんですか?」

「…ええ」

それだけ。町の喧騒からかけ離れたこの場所では、沈黙は驚くほど静かで。ただ、桜の香りがするだけの時間。


「あの…」

「なんですか?」

「あなたとは、またどこかで会える気がするんです。だから、これを持っていてもらえませんか?」


桜のモチーフは、以後、私の携帯が定位置となる。


「ありがとう。……名前、聞かせてもらえませんか?」

「中森善一、です」

「ありがと、中森くん。私は、新城彩希。また、どこかで」

「また、会いましょう」


***


「新城?」


柔らかい、春の匂いと共にまた、君は現れた。


「おーい?」

そこに見えた、現実。

「なんだ、時崎か」

「私もいるよ?」

「あ、泉さん。どうもです」

ひょこっと顔を出すしぐさが、可愛い。私と大違い。美少女って絶対得だと思う。

「中森くんに買い出し頼んだから…」

「あ、了解です〜」


泉さんの頼みなら仕方ないな。中森くんも断れまい。

それにしても、二人が羨ましい。この二人は俗に言う『カレカノ』ってやつだ。だから、ここに来ても早速二人て喋ってて、私なんかは蚊帳の外。


私だって、中森くんが大好きなのに


「いらっしゃいませ」


温かい春の空気に運ばれて。


「あ、皆さん、もう来ていたんですか」

「中森くん、遅いぞ〜」

「そうだそうだ!泉に頼まれた買い出しにどのくらいかかってる?」

「それは…」

おいおい、誰が呼んだかわかってるのかい?

「で、話なんだけど」

「あ、ごめんね、彩希ちゃん」

「この間の夢…皆、見たんだよね?」

「ああ」

「うん」

「…はい」


何か、おかしい。


「どうしたの、中森?」

「買い出し頼まれてたもの…」

「あ、泉さん。…何頼んだんですか?」

「フランス語辞典だよ!あの夢に関わるものかもしれないから、ね」

「何故だよ、泉?」

「高崎さん、説明してもらえますか?」


すぅ、と息を吸う泉さん。こんな時の泉さんは、大抵真剣だ。


「あのね、これ、うちにあった古い日記なんだけど…」


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