第二話 己の意地
「わっわたしは、宮崎 恵那って言います!」
すごく可愛い美少女と言うべき女の子がそこにいた。
その光景は、まるでこの世のものとは、思えないようである。
しかし、自分の頬をつねっても、眼がさめることはない。
「それで、何のご用でしょうか?」と、俺よりも先に、友達の方が先に口を開く…つか、友達くらい、名前で呼ぼう。
遠島 翔也。
読み方は、えんどう しょうや。よく、「とおじま〜」とか、「しょうた〜」とか呼ばれているらしい。
まあ、本人が気にしているかは、定かではないのだが…。
それはさておき、遠島が、俺の言葉を代わりに言ってくれた。
まあ、完全に、リングで燃え尽きたジOーのように、満足気の眼をした俺は、何も口にできなかっただからだろう。
でも、それは、ある意味死んだ眼とも言えるのではないかと心配になる。
そう考え込んだ表情をじぃ〜と宮崎さんが覗くようにして、見てくる。
「私は…」と、ごくんっと、ひとのみして、言葉を発した
「わたしは、貴方のことが好きです!大好きです!一目惚れ…というのもあるけれど、わたしはずっと、貴方のことを見ていました…」
…告白?それとも、ストーカーしてますよ宣言…?
いやいや、これは、正真正銘の告白というやつだろう。
生まれて初めてだ。このようなことを口にされたのは。
‘他人に言われたのは、初めてだ。‘
俺は、びくっと、敏感に反応すると、口が固く閉じた。
少々震えているというのだろうか?自分の体でないような、そんな感じで、開けようとしても、口が開かないのだ。
しばし、落ち着くまで、口が震え、しびれてきた。
そんなとき、唇のしびれが、その固く閉じた門を、ゆるめた。
「お…れは…俺には…」と、口にしようとした瞬間、宮崎さんは、一度目を瞑り、そして、数秒でパッと目をあけた。
「知ってます、古辺さんですよね、見てました…あなたが、彼女にきずく前から…」
・・・危ない発言ですね、それ、ストーカー宣言暴発してますよ、と注意すべきなのだろうが、今そんなことを言うと、明らかにKY(空気読めてない)だ。
「以前から知ってたの?」
と、遠島が口を開いた。
まあ、こういう時の助け舟といういうべきだろう。
「はい、彼が、幼稚園の頃からずっと、追いかけてました。彼があまりにも可愛くて…」
こっ怖いよ、貴重な人生の時間をついやしてまで、僕をストーキングとは、恐れ入ります。じゃなくて、俺は知らないぞ?
宮崎さんなんて…
「初対面な気がするんだが…?」
少々自分の口調に戻りすぎたか?
これはない。
「はい、わたしにとっては、正面で会いさらに、お話したことはありませんので、‘初対面‘と言ったほうがよいでしょうね」
なんて、お嬢様な言い方だろうか…というよりも、ほのかに、甘い香りが…いっいかんいかん!棒の謡さん!煩脳退散!つか、棒の謡さんってだれだよ!
「俺は、古辺さんが好きだからさ…ごめん」
とバッサリ振ったつもりだったんだが…
「いいです、それでも わたしが、貴方を‘ずっと‘好きでいますし、なにより今まで通りが嫌であなたに声をかけました。今でも、貴方の事を想っている…もしも、貴方が、古辺さんをお諦めになさるのなら、私はいつでも貴方を受け入れる準備は当の数年も前からできてます。だから安心してくださいね?照月君」
と言い残し、彼女は、去っていったという...