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9/22

デートの約束

やっと来た。

待ちに待ったゴールデンウィークが。

正確には明日からなのだが、帰宅した俺にとってはもう始まったようなものだ。

今年は振替休日がハマって、土曜日からきれいに5連休だ。

もちろん、俺は何の予定も入っていない。

ということは、突発的なことが起こっても柔軟に対応できるということだ。

何も起こらないことはわかっているが。


おそらく由衣も暇だから、一日くらいうちに来るか、由衣に呼ばれてあっちに行くかくらいのことはあるかもしれない。

意外に由衣も由衣で、家族や友達と出掛ける予定が詰まってるかもな。


期待に胸を膨らませて部活から帰った夕方、LINEが入ってきた。

真奈美からだ。

漫研の部員のみんなとはLINEを交換している。

とは言え、由衣以外とはまだ送ったことも送られたこともなかったが。

真奈美とはさっきまで一緒に部室にいて話していた。


ゴールデンウィーク前というのもあって、部室は賑やかだった。

ゴールデンウイークやシルバーウイークといった長期の休日の前や終業式の放課後には全員集合という謎の決まりがある。


一番浮かれていたのはやはり2年の2人の先輩。

2人とも彼氏がいるようで、この連休中をどう過ごそうかという話で盛り上げっていた。

それとは対照的に1年生はおとなしくしている。

いかにも早く帰りたいオーラを出して。

部長から連絡事項が中心の話があり、すぐに解散。

またいつものように、俺と由衣と真奈美の時間になった。


真奈美も話があるのなら、そのときに言ってくれたらよかったのに。

何でわざわざLINE?

何の用だろう?


「ゴールデンウィークで空いてる日ある?」

ひょっとして俺を遊びに誘ってるのか?

まさかな。

少し恥ずかしいが正直に答える。

「今なら全部空いてる。」

「よかった。一緒にどこかに行かない?」

やっぱり?

「俺と?」

「そうに決まってるでしょ。」

「何で?」

これはダメだろ。

少し間が空いて

「嫌ならいいけど。」

悪いことをした気になってしまった。

「嫌じゃないけど」

嫌じゃないけど、2人で出掛けるのはいろいろとマズいだろと言いたかったのだが、そこまで書くときついかなと思ったのと、俺の言いたいことは伝わるだろうと思ってそこでやめたのだが。

「ホント?じゃあ、決まりね。いつにする?」

えっ、そうなる?

言葉ははっきりと最後まで言わないと真意は伝わらないんだな。

なんて言ってる場合か。

マズい、もう断れる雰囲気じゃなくなってる。

でも、あまりに急な展開に頭が付いていかない。

間を置きたい。

「少し考えさせて。」

全部を考えさせて欲しいいというつもりで言ったのだが、これまた伝わらない。

「わかった。日が決まったら教えて。」

もう一緒に出掛けるのは決定事項になってしまっている。

返事を送るのをためらっていると

「絶対よ!」

仕方がない。

「わかった。」

真奈美からの返事はなかった。


これは困った。

成り行きでこうなってしまったものの、まだ気持ちは整理が付いていない。

というより、まだ受け入れられていない。

真奈美が嫌いなわけじゃない。

むしろ好きなタイプだ。

でも、2人でデートは急すぎる。

どうしたものか。

何か困ったことがあったらいつも由衣に相談してきたが、今回のこればかりは。

真奈美の立場もあるし。


本当に困っていると、神様は見てくれているのだろう。

インターホンが鳴った。

由衣だ。

何か手さげ袋のようなものを持っているが、モニターが小さいのでよくわからない。

ドアを開ける。

「昨日ね、愛媛のおばあちゃんからいっぱいミカンが送られてきたの。食べて。」

袋いっぱいに詰められたミカンを受け取る。

「ありがとう。」

笑っている場合じゃないけど精一杯の笑顔を作って受け取る。

でも由衣はやっぱり騙せない。

「何かあったね。真ちゃん、困ってるでしょ。」

何でわかる、一瞬でそこまで。

「いや、別に。」

簡単に心を見透かされて、動揺が隠せないのが自分でもわかる。

なんとも情けない。

「とにかく上がるね。」


いつものようにベッドに座ったら

「何があったの?」

本当は相談したくてたまらないのだが、真奈美のことを思うと言えない。

「いや。」

「私には言えないこと?」

返事に困る。

言いたいけど言えないから。

由衣が寂しそうな顔をする。

「そうよね。もうお互い言えないことあるよね。真ちゃんがいつも言ってるけど、私たち、もう高校生だもんね。ごめん、おせっかいで。」

帰ろうとして立ち上がる。

「待ってくれ!」

反射的に叫んでしまった。

驚く由衣。

「座ってくれ。」

由衣がゆっくりとまたベッドに座る。

どこから話したらいいのだろう。

しばらく考えて

「さっき、真奈美からLINEが入った。ゴールデンウィークにどこかに行かないかって。」

由衣がぷっと吹き出す。

「なんだ、そんなことか。どんな大変なことが起こったのかって思って心配したよ。」

本当に安心した顔をする。

「いいじゃない。行ってきなよ。真ちゃんはどうせ特に予定はないんでしょ。」

そうなるか。

まぁ、そうなるよな。

由衣は俺の彼女じゃないんだから、止める理由がない。

止めてくれとまでもは言わないが、それでも真奈美とのデートを勧めなくても・・・。

「嫌なの?」

「嫌じゃじゃないけど、急だし。今までにそんな話したことないし。」

「真奈美ちゃんのこと嫌いなの?私の次にたくさん話してるんじゃないの?」

言われてみれば確かにそうだ。

ずっと、放課後は部室で一緒だ。

「嫌いじゃない。」

「ならいいじゃない、遊んで来たら。友達とどこかに出掛けようってだけで、そんなに難しく考えなくていいのに。真奈美ちゃんもきっとそうだよ。で、返事はしてないの?」

「何か押し切られた感じで、どこかに行くのは決まってる。」

「ならもう考えることは何もないじゃない。さすが真奈美ちゃん、やる~。」

完全に面白がっているな、こいつ。

「で、いつがいいかって聞かれてるところ。」

「じゃあ早く返事してあげなよ。デートの日が決まったら教えてね。で、その次の日は空けといて。」

何が言いたいかがわかりやすすぎる。 

足取り軽く由衣が帰っていった。


その後、すぐに真奈美にLINEを送る。

「いつでもいいよ。真奈美に合わせる。」

「ほんと?」

「うん。」

「じゃあ、明日は?」

「いいけど、急だな。」

「ダメ?」

「いいよ。明日は何の予定もないし。」

「さっき、全部空いてるって聞いたんですけど。(笑)」

「そんなこと言ったっけ?」

「うん。なんなら、毎日一緒にどこかに出掛けてもいいよ。」

マジかよ?

返事に困って固まっていたら

「冗談よ。ひょってして本気にした?」

からかわれたのか。

よかった、冗談で。

「いやそれはないよ。で、どこか行きたいところとかある?」

「映画。前から見たいって思ってたのがあるの。いい?」

「うん、いいよ。映画なんて久しぶり。」

「よかった。」

こんなやり取りをしていると、女の子と付き合った経験もないのに、彼女との会話ってきっとこんな感じなんだろうなって思えてきた。

楽しい。

いいな、こんなの。

話しているうちにどんどん気持ちが高まる。

真奈美への気持ちが変わっていく。

「上映時間を調べてまたLINEするね。」

「うん。」

LINEが来るのを楽しみに待っている俺がいる。


その後すぐに待ち合わせの時間と場所が決まった。

明日は人生初のデート。

こんなにドキドキするなんて。

今夜は眠れるかな。

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