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23/27

今日は部誌の原稿の締め切り日だ。

毎週土曜日に真奈美が由衣を手伝いに来て、由衣のも何とか間に合った。

今年は入学してからというのもあって期間が短くてギリギリになったし、真奈美にも迷惑を掛けたので、来年の分は今日から作り始めるらしい。

まずはストーリーから。


原稿が一度で通ることはまずないので、そのコピーを提出することになっている。

それを集めて綴じたものを、順番に持って帰って読む。

誤字脱字、文のねじれ、不適切な表現など気が付いたか所に赤字で線を引いたり書き込んだり訂正したりして、1日で全てに目を通して次の人に回さないといけない。

これはなかなかハードだ。

とは言え、原稿は上がっているので、家で部の関係でやることはないから何とかなるが。


最後の部長のチェックが終って各自に返される。

返されてビックリ。

というより大ショック。

黒より赤の方が多いんじゃないかってくらいに赤が入っている。

パソコンで変換させているから誤字はほとんどないが、それ以外のことでいろいろと書き込まれている。

「この表現には問題があります。人権侵害です」とか「この部分は言葉が下品すぎます」とか。

ひどいのになると「ちょっと何を言っているのよくかわからないんですけど」とサンドウィッチマンのようなことが書き込まれている。

これを直すのか?

俺の文章でなくなるよ。

半泣きになる。

でもスケジュールがタイトなので、直したものを明日に提出しなければならない。


真奈美や由衣はどうなんだろう。

真奈美は?

「結構、赤が入ってたよ。セリフの誤字があったり、指の数が1本多いとか、ベタがはみ出してるとか。」

由衣は?

「私も。でも思ってたより少なかったよ。真奈美ちゃんが手伝ってくれたところはほとんど何もなかった。さすがだね。で、真ちゃんは?」

俺のを見せる。

「えっ!」

「だろ。」

「いやいや、これはないよ。」

「そう思うだろ。」

「じゃなくて、元の原稿がひどいって言ってるの。」

真奈美も

「私もいっぱい書き込んたけど、何度も読み直してこれ?ひどいな。もっともっといろんな文章を読んで勉強したら。」

やはり漫画に関することには容赦がない。

泣きっ面に蜂、弱り目に祟り目、まさに踏んだり蹴ったり。

聞くんじゃなかった。


直した原稿は、部長と副部長がチェックする。

みんなに回すとさらに8日掛かるから。

もうどうしてもというところ意外は直されないと聞いていたのに、やはり赤いのが返ってきた。

どうすりゃいいんだ。

かなりきつい口調で部長が俺に

「真ちゃん、もう一度直した原稿出して。このままじゃ載せられないから。文章だけなんだからすぐに直せるよね。予定が遅れるから絶対明日よ。あ、今日って金曜日か。じゃあ、月曜日に絶対よ。」

あの優しい部長をこれだけイラつかせるなんて。

自分で自分が嫌になる。

もう、絶対にダメ出しされないものを作らないと。


それを聞いていた真奈美と由衣が心配そうな顔をする。

「志保先輩、だいじょうぶかな。」

「心労で倒れないといいけど。」

そっちの心配か。


「ねえ、この後USBメモリに入れてうちに持っておいでよ。一緒に直してあげるから。」

「明日休みだし、私もこれから由衣ちゃんの家に行くから。」

自分の文章を直すのを手伝ってもらうのか。

そんなのありか?

少し考えた末に結論を出した。

ありがたい話と思うことにしよう。

持つべきものは優しくて頼れる幼馴染と彼女だ。

この際、変なプライドは捨てないと。

もう後がないんだから。


言われた通りにUSBメモリにファイルをコピーして由衣の家に持っていく。

由衣のノートパソコンに挿してファイルを開く。

赤が入った原稿をその前に置く。

「2回直してこれ?」

由衣があからさまに呆れた声を出す。

「志保先輩も頭痛いだろうな。」

真奈美も呆れ果てている。

「じゃあ、直そうか。」

「うん。」

パソコンの前を2人が陣取る。

俺は?

2人の間から覗き込む。

「まずここからだね。」

と由衣。

「こんなのどうかな?」

カチャカチャと打つ。

「いいね、よくなった。」

俺の文章なのに、俺が入れない。

「次、ここだね。これじゃ何言ってるんだかわからないわ。」

「ほんと。こうしてみようか。」

カチャカチャカチャ。

「真奈美ちゃん、ナイス。」

「次はここだね。」

俺の文章がどんどん変わっていく。

もう原型を留めていない。


「これで最後ね。」

「うん。最後だからこれくらいいってみようか。ちょと過激かな?」

「全然。うん、これで締まったね。」

「終わったー、イエーイ!」

2人がハイタッチ。

俺は最初から最後まで見てただけ。

プリントアウトして読んでみる。

なかなかいい文章になっているじゃないか。

さすが俺、ということにしておこう。


明けて月曜日。

部長に手渡す。

不安いっぱいの部長。

その場で読み始める。

「ん!」

読み進むうちに、どんどん表情が明るくなっていく。

読み終えてフーと息を吐く。

「うん、これでいこう!」

「はい。」

「すごくよくなったね。」

「ありがとうございます。」

喜ぶべきじゃないかもしれないが、褒めてもらえると嬉しくなる。

余韻に浸って原稿を読んでいる俺。

部長が俺の背中の向こうで見ていた2人のところに行く。

親指を立てて、小さな声で

「グッジョブ!」

2人もニッコリ。

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