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偵察

また新しい一週間が始まった。

漫研も活気にあふれている。

みんながテーマに沿った発表の作成にいそしんでいる。


俺は文字だけで絵を描かない主義なので早くできあがった。

自分の発表の分が仕上がった人は、展示に必要な全体のことをやることになっている。

手が空いているのは俺と咲良。

咲良は?

手際がいいのかこだわりがないのかはわからないが俺と同じくらいに早く仕上げている。

部長の指示で俺たちは今年のテーマについての説明を作ることになった。

文面は部長から渡されている。

文字数から文字の大きさや行の数や間隔などを決め、模造紙に線を引くことから始める。

俺がデカい定規を押さえて咲良が線を引く。

「真ちゃんのクラスって、展示の準備がかなり進んでるね。」

「そう?他のクラスのことを知らないからわからないけど。」

「私、友達と廊下を歩いてどこかにいくふりをしてよく他のクラスの偵察に行くんだけど、おそらく一番だと思うよ。内容も面白そうだし。」

「クラスに偵察部隊があるのか。次からは怪しいやつがいないかよく注意しておかないと。敵の偵察兵を見つけたらすぐに捕まえよ。」

「捕まえるって、怖いこと言わないでよ。」

咲良が笑う。

「咲良のクラスは進んでる?」

「まあまあかな。女子は一生懸命にやってるけど男子がイマイチ。ふざけるのが多いから。」

「それはどこも同じじゃない?」

「そうかな。何か無駄な時間が多いよ。」

線を引き終わる。

「やっぱ字は上手い人が書かないとな。俺の字は癖字だから書けないよ。」

「私も字が丸っこくなるからダメ。」

「じゃあここまでにしてだれかに書いてもらおう。」

「うん。美鈴がいいんじゃない。字が綺麗よ。ペン習字してたらしいから。」

「そりゃいいわ。」

「私が何だって?」

自分の発表を作っている美鈴が、だいぶ離れたところから声を掛けてきた。

「テーマの説明の字を書いて欲しいなって。」

「書けって言うんなら書くけど。それにしてもあんたたち雰囲気いいじゃない。真奈美、真ちゃん浮気してない?」

おもしろく言う。

「してねえよ。」

俺が先に答えてしまった。

「へー真奈美が怖いんだ。ウソウソ。それに咲良にも彼がいるもんね。」

「美鈴、それは言っちゃダメだって。」

慌てる咲良。

でもすぐにニヤッとして

「だったら私も言っちゃうよ。美鈴のこと。」

「ごめんごめん。それはなし。」

謝ってももう遅い。

「えっ、美鈴にも彼がいるの?知らなかった。」

萌が焦る。

「私だけ?」

周りを見回す萌。

咲良と美鈴にいて萌にいないとは。

2人に悪いけどすごく意外だ。

「だいじょうぶだよ、萌。由衣がいるから。」

由衣を見ながら萌をなぐさめるフリをする。

「真ちゃん、何それ。」

由衣が睨む。

「知ってるでしょ、私は付き合わないの。」

「何で?」

美鈴が怪訝そうな顔で尋ねる。

「面倒だからよ。」

「何が?」

「だから、付き合うのが。」

「付き合う何が面倒なのよ。」

ここで部長が割って入る。

「はいはい、それくらいにして。みんな、手が止まってるよ。学校でしかできないことがあるんだから、時間を大切にしよう。」

みんなが我に返り、作業に戻る。


まだ4か月ほどの付き合いだけど、部長、変わったな。

俺たちが入部したころの部長だったら、さっきの話に一緒になってワイワイ言ってたんじゃないのかな。

役職が人を育てる、か。

生意気言うけどすっかり部長だ。


他にやることがないか部長に尋ねると、飾りつけのことはみんなでやるから、自分のことをやってくれと言われた。


咲良じゃないが、みんなの発表が気になって偵察したくなった。

自分の作業机に戻るフリをして一番前の列でやっている真奈美と由衣と副部長のを見る。

すごいな。

みんな、レイアウトに凝っているし、文字とイラストをバランスよく配置しているし、カラフルだ。

これなら読みたくなる。

黒一色で文字だけの俺のとは大違い。

特に副部長のはひときわ綺麗だ。

キャラのイラストも上手い。

つい立ち止まって見入ってしまった。

気配を感じたのか、副部長が顔を上げる。

「どうしたの?」

副部長は座っているから当然そうなるのだが、上目遣いで見られてドキッとした。

「いえ。」

慌てて自分の作業机に戻った。


では、部誌の原稿の続きを書こう。

提出するのはパソコンで打ってプリントアウトしたものになるが、考えるときは手書きじゃないと気分が上がらない。


腕組みして頭をひねっているところに、由衣が近付いて来た。

ひょっとして偵察か?

と思ったら素通りして言った。

ゴミを捨てに行ったのか。

まぁそうだろう。

俺のを偵察してもな。

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