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手伝い

やっと週末になった。

午前中は補習でその後クラスの展示の準備、そして漫研の活動。

帰ったら宿題と部誌の原稿の作成。

異常なほどに一日が充実している。

これは皮肉なんだが。

しつこいけど、今は夏休みのはずなんだけど。


今日は土曜日。

長い一週間だった。

正確には平日の5日間だが。


今日は真奈美が由衣の家に来て、漫画の原稿を手伝うことになっている。

昨日、真奈美からそう聞いた。

平日ではそんな時間はとてもとれないから休日になる。

俺も手伝ってやりたいが、深い事情があってそれはできない。

ならば応援してやろう。


「私、到着」

10時前に真奈美からLINEが入った。

こういうときは普通は由衣から入るのに。

インターホンを押すと、真奈美が鍵を開けてくれた。

なんで真奈美?

今日の真奈美はパンツルック。

活動的な真奈美にはこれもよく似合ってる。


由衣の部屋に入る。

真奈美が出てくれた理由がわかった。

悲惨な顔で絵を書いている由衣。

そんな由衣を見たら、ついからかいたくなる。

「なんだ、その顔は。死にそうじゃね?」

普段ならムッとして言い返してくるはずなのだが、聞こえていないがごとくにそのまま描き続けている。

「どうしたの、由衣は?」

真奈美に聞く。

「原稿の完成が心配で、他には何も考えられないんだって。」

「そうか、残念だな。差し入れがあるけど、そんなの食ってる暇ないな。」

「えっ。」

由衣が顔を上げる。

「それは別。少し休憩しよう。朝からずっと描いてたから、もう疲れてきたよ。」


由衣が紅茶を入れてくれた。

差し入れはコンビニのスイーツ。

「真奈美は何を手伝うの?」

「ん~漫画家のアシスタントがやってるようなことかな。背景を描いたり、消しゴムとかベタとかホワイトとか。キャラは由衣ちゃんでないと描けないから、それ以外のこと。」

「そうか、いろいろやるんだな。俺にできることはないかな。」

由衣が慌てる。

「いいよ、真ちゃん、気持ちだけで十分。」

かなり警戒している。

「消しゴムくらいなら。」

「いいって。真ちゃんは見ててくれるのが一番助かるよ。」

いくら気持ちに余裕がないからって、ひどい言われようだ。

「そうそう、由衣ちゃん、スクリーントーン持って来てるから、気に入ったのがあったら言って。使うから。」

「ありがとう、真奈美ちゃん。私あんまり種類持ってないから嬉しいし助かるよ。」

「俺、それやろうか?」

冗談だけど。

「いいって!」

由衣が泣きそうな顔になる。

これもひどい。


休憩は30分ほどで切り上げて、由衣は続きを描き始める。

真奈美はまず背景から。

人物だけ描き終わっている原稿が真奈美に渡される。

俺も横から覗き込む。

確かに、これに背景を入れていくだけでもかなり時間を食いそうだ。

スッスッと鉛筆で線を入れながら真奈美が描き込んでいく。

上手い。

慣れてる。

「へー、すごいな。さすがに年季が入ってるな。」

感心する。

「年季って。私、中2くらいからだよ。描き始めたの。」

「そうなのか。じゃ、俺も2年ほど本気でやったら描けるようになるかな?」

真奈美が返事に困って、背景に集中するふりをする。

うつむいて、俺にわからないように笑っているつもりなのだろうが、わからないはずがない。

肩が揺れているから。


背景が描けたら消しゴム、ベタ塗りやトーン貼り、ホワイト。

流れるよう真奈美が仕上げていく。

いつの間にか、由衣も手を止めて見入っている。

「すごい・・・。」


気が付けば、西日が部屋に差し込んでいた。

とりあえず、由衣が描けているところまでの分は仕上がった。

でも、とても半分にはおよばないらしい。

漫画を描くってこんなに大変だとは。

よほど好きじゃないとできないな。

楽しいだけじゃなくて苦しいことも多そうだし。

俺のように字だけ書くのとは大違いだ。

絵を描くにしても、3人娘のようにイラストを描くくらいがちょうどいいんじゃないのか?

知らずに勝手なことを言うけど。


それにしても由衣は、帰ったら勉強をして絵を描いての毎日で、寝る時間はあるのか?

由衣に聞いてみた。

「うん、私、寝ないと体調が悪くなるからちゃんと寝てるよ。でもその分、帰ったら宿題と予習と漫画以外のことはしない。スマホも触らないよ。」

自分に厳しい生活してるんだ。

つい

「今日の真奈美のを見てやることわかったから、言ってくれたらいつでもできることを手伝うよ。」

本当に心からの親切心で言ったのに

「ありがとう。でもそれしてもらったら、本当に寝る時間が無くなっちゃう。」

真奈美が今度は遠慮なく大きな声で笑った。

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