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20/24

面倒

夏休みって本来は夏が熱くて勉強するのに不適切だから学校が休みになったんだろ?

それが始まったころよりも今はもっと夏が熱いのは確実なのに、わざわざエアコンを効かせて登校させるってどうなってるんだ?

などと理屈をこねても何も変わらないのはわかっている。

でもな・・・。


今朝も普通の授業日と変わらない時間に家のインターホンが鳴ってなって、一日が始まった。

行事予定表にははっきりと夏季休業と書かれているにも拘わらず。


補習が終わって、昼食の時間になる。

ほどなく、親しい男たちで集まって弁当を食べる。

話題はやっぱり女の子のことが多い。

今日は村田が由衣の話題を振ってきた。

「白川さんって彼氏いないの?真ちゃんはそれ知ってるよな。」

他のやつらも興味津々で俺を見る。

「いないよ。それは俺が保証する。今までもいたことないし。」

「今までも?何でかな。何人からも告られてるんじゃないの?」

「さあ、それは知らない。高校に入った後は一度だけ聞いたことがある。告られたって。」

「えっ。」

やつらの手が止まる。

「で?」

早く続きを話せとばかりに薬師寺がせかしてくる。

「断ったって。今は誰とも付き合う気はないって。」

みんなが安堵の息をつく。

「なんで?」

崎本が俺に聞く。

俺は由衣じゃないんだけど。

「あいつ、実は女が好きなんだ。」

「えっ!」

やつらの口が開いたままになっている。

こういうのはほどほどにしないと。

「ウソだよ。前に由衣から聞いたことあるけど、あいつ付き合うっていうのが面倒なんだって。俺と付き合ってるんだから他の男と親しく口をきくなとか言われるのが嫌なんだってよ。あと、一緒に帰るから待ってろとか。何て言うのかな、そう、束縛されたくないって。」

「でも付き合うってことになったら、男ならだれでも普通そう思うんじゃね。」

いかにも知ったげに言う崎本。

「だから、そういうのが面倒なんだって。そんなの自分の自由だし、誰にもそんなこと言う権利なんてないってさ。」

「へー、そうなんだ。男らしいな。」

と感心している村田。

「男らしいってなんだよ。あんなにかわいい子に。」

宮迫がつっ込む。

前々から俺たちの間で公言しているが、こいつも由衣が気になっている。

「でも、誰とも付き合う気がないっていうんだったら安心だな。」

と少し嬉しそうな村田。

「何が安心なんだよ。だれにもワンチャンもねぇじゃん。」

また宮迫がつっ込んで

「ほんと、そう。」

みんなが自虐的に笑った。


由衣のことをよく聞かれて、答えさせられる俺って何なんだろう?

真奈美とのことはクラスのみんなが知っているっていうのに。

少しは遠慮して欲しい。


その後、クラスの展示の準備に入る。

段ボールを切ったり貼ったり塗ったり。

俺は絵は描かないが字なら書く。

買い出しにも行く。

真奈美も本当に楽しそうだ。

最終下校時刻がすぐに来た。


その後は、漫研の活動だ。

昨日の反省を活かして今日からはきちんとしないと。

クラスの片付けが終ったらすぐに視聴覚教室に向う。

真奈美は友達との話があるから少し遅れるとのこと。


一番乗りだったら鍵を取りに職員室へ行かなければならない。

空いていてくれと願いながら扉に手を掛ける。

ガラガラと扉が開いた。

よかった。

中には部長だけが。

前にもこれによく似たシュチュエーションがあったな。

前の部長だったけど。

あの日のことは一生忘れない。


「真ちゃん、早いね。クラスのこと終わったの?」

作業の手を止めて話し掛けてきた。

先輩方からも真ちゃんと呼ばれている。

「はい。部長こそ早いですね。」

「部長はやめてよ。前の呼び方でいいよ。」

部長が照れる。

「でも、部長ですから。」

「私が嫌なの。そう呼ばれるのが。」

「じゃ、志保先輩にします。」

女子たちがそう呼ぶから俺もずっとそう呼んでいた。

部長と呼んだのは今日が初めてだ。

「うん、やっぱそれがいいわ。部の展示の準備は進んでる?といっても昨日からだけど。」

「はい。でも昨日は僕だけがお勧めの作品が決まってなくて、みんなにすごく怒られました。何やってんだって。」

言わなくてもいいことが自然に口に出た。

なぜだかこの人には不思議な安心感を感じて無防備になってしまう。

部長が「フッ」と笑う。

「そうなの、怒られたの。真奈美ちゃんにも?」

「はい。真奈美は漫画のことでやらないといけないことをやらないのって腹を立てますから。」

「由衣ちゃんにも?」

「由衣にはよく怒られてます。小さいころから。」

「そう。あなたたちって不思議な関係よね。」

「はい、僕もよくそう思うんです。高校生にもなってこれでいいのかなって。でも変わりようがないですし。」

またもや、普通は誰にも言わないことを自然に言ってしまった。

何でだろう?

「いいんじゃない。2人がいいのなら。私が言うことでもないけどね。せっかく早く来たのに話ばかりしてたら時間がもったいないね。ごめんね。自分のことをやって。」

部長も作業に戻る。

部長と面と向かって話すのは初めてだったから、俺はもう少し話したかったけど。


まずは、展示の模造紙のレイアウトの続きから。

コピー用紙に下書きをする。

こういうのを考えるのは好きだ。


1人、また1人と部員がやってくる。

賑やかになっていく。

普段からこうだったらいいのに。


だいぶ遅れて咲良が入ってきた。

これで今日も全員が揃った。

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