由衣の部屋と俺の部屋
6月に入ったばかりだというのにかなり暑い。
日当たりがよすぎてサウナのようになっている部室にはとても入れない。
仕方なく、俺と真奈美の3組の教室に由衣が来て活動している。
だがこれも少しの間だろう。
本格的な夏になったら、放課後はエアコンが切られるから、いくら風が通るといっても暑くて教室にもいられなくなる。
じゃあ、どこで活動する?
俺たちまるで流浪の民だな。
エアコンがあってお金の掛からないところはどこだ?
図書室?
でも図書室では話ができない。
俺たちはコミュニケーションをとってこそいくらだ。
本当に困った。
結局、俺の家か由衣の家ということになった。
真奈美は家が反対方向なので、俺たちの家から帰ると一時間近く掛かることになるが、それでもいいと言ってくれた。
今日は由衣の家で活動だ。
3人で由衣の部屋に入る。
開口一番
「へー由衣ちゃんの部屋、広いね、いいな。私、妹と一緒の部屋なんだよね。お兄ちゃんが自分の部屋持ってるから、しかたないんだけど。でもやっぱり、自分の部屋が欲しいな。」
真奈美がいかにも羨ましそうに部屋を見回す。
でもすぐにイタズラっぽい目に変わる。
「で、ここで真ちゃんとあんなことやこんなことしたんだ。」
エロい笑いを浮かべて由衣をからかう。
また俺の知らない真奈美が現れた。
「えっ?何のこと?そんなことしたことないって。ね、ね、そうでしょ。真ちゃんも言ってよ!」
由衣が慌てて俺に助けを求めるのがかわいくって、つい悪乗りしてしまう。
「えっ、真奈美には言ってないの?」
「何をよー!やめてよー!真ちゃんまで。」
「真ちゃん、よくここにに来てるんでしょ。2人はどこまでいったのかな~?」
こんな子だったのか?
今日の真奈美はいつもと全く違う。
てつもなくハイになっている。
「だから何もしてないよ。一度ギュッとしてもらったくらいだよ。・・・あっ!・・・本当に一度だけよ。私が友達と喧嘩して泣いてたとき。中2のときだからもうずっと前。ほんと、それだけだから。」
いくらパニクってるとは言え、そんなこと、自分から言うか?
でも、確かにあったな、そんなこと。
ただただ泣き続ける由衣にどうしたらいいかわからなくって・・・。
「そう。そこまでならOK。」
真奈美が親指を立てる。
「真ちゃんから聞いてたけど、すごいね、コミックスの数。」
「うん、お小遣いとかお年玉とか、ほとんど漫画に使ってる。」
「そう。漫研の鑑だね。」
「好きで集めてるだけだけど。」
「で、真ちゃんはただで読ませてもらってるんだ。」
「何か俺、悪者になってない?」
「悪者以外にないでしょ。なにかお礼でもしなよ。」
「ひどいな。それで由衣がいつもピーピーだからコンビニスイーツとかよく買ってやってるよ。」
「めったにないけど。」
「え、そんなこと言う?」
「ほんとだもん。」
「この前もロールケーキ買ってやっただろ。」
「この前って、先月のこと?」
「そんなに前になるか?」
「こりゃだめだわ。」
真奈美に呆れられた。
「せっかくだから活動しよう。」
真奈美が促す。
「そうだったな、そのためにここに来てるんだし。」
由衣はスマホに打ち込むからどこでもできる。
俺は手書きなので机がいい。
真奈美はパソコンを使いたいからどこがいい?
結局、由衣はベッドの上、真奈美は床の上ということになった。
真奈美は段ボール箱を机代わりにして由衣のノートパソコンを借りる。。
悪いと思って替わろうと真奈美に言ったが、いいと言われた。
互いに背中を向けて集中する。
涼しくなるまで、こんな形で活動することになるんだろうな。
明日は俺の部屋で活動することになっている。
片づけをして掃除もしておかないと。
前に掃除機を掛けたのがいつか覚えていない。
それにしても、由衣以外の女の子が俺の部屋に入る日が来るとは。
学校での最終下校時刻きっちりに真奈美は帰っていった。
俺もそうした。
翌日。
俺の部屋に2人が入る。
「へーこれが真ちゃんの部屋か~。」
昨日以上に真奈美のテンションが高いのがわかる。
絶対ヤバいぞこれは。
もう見ていてわかる。
「で、ここで真ちゃん、由衣ちゃんにあんなことやこんなことしたんだ。」
やっぱり。
いや、違う。
昨日は由衣に「俺と」だったが、今日は俺に「由衣に」になっている。
何で昨日と同じ「由衣と」じゃないんだ?
一字違いで大違いだ。
これじゃあ、俺がためらう由衣に、嫌がる由衣に何かしたってことじゃないか。
ない話とは言え、それはスルーできない。
でも、そこにつっ込んだらもっと話がややこしくなるからそこには敢えてつっ込まない。
「何もしてねーよ。ここじゃ。」
「へー、ぎゅっとしたことも?」
昨日の由衣の話を蒸し返す。
「ないって。」
由衣が答える。
顔が赤い。
やられてばかりじゃ癪だ。
「今度、真奈美の家に行こうか。で、いろんなことしようぜ。」
真奈美が一瞬で真顔になる。
「だめっ、まだよ!」
「まだって?」
すぐに俺の代わりに由衣がつっ込む。
真奈美の口が「あっ!」動く。
慌てる真奈美。
「あ、いや、そうじゃなくて・・・。」
もごもご言いながら、今度は真奈美が真っ赤になる。
面白くなってきたと言わんばかりの由衣。
「何で?付き合ってるんだし、もうそろそろいいんじゃない?」
さらなる攻撃で畳み掛ける。
昨日と今日の仕返しか?
「でも、まだだめだよ。・・・もう、やめようよ、私が悪かったから。ごめんって。」
「どうする?」
そんな真奈美がかわいくって由衣と目配せ。
許してやる。
それほどじゃなくてちょっと安心した。
「あれ?ここに貼ってたマイちゃんのポスターは?この前から水着のに変わってたよね。」
壁を指さしながら、やっぱりKYでしかない由衣が俺に尋ねる。
やめてくれよ。
昨日はずしたに決まってるだろ。
「へー真ちゃん、あのグループのファンなんだ。あの子たちって、水着の写真集とかよく出してるよね。」
真奈美がかなり冷めた目で俺を見る。
男たちには人気があるのだが、嫌っている女子が多いとよく聞く。
こんな言い方をするからには、ファンだって言ったらもっと冷ややかな目で見られこと間違いなし。
返事ができないでいると
「まぁいいけど。真ちゃんの自由だし。でも水着のポスターは、何か・・・ね。」
いかにも嫌そうな顔で由衣に振る。
「そうそう。マイちゃんって高校生だし。彼女ができた後もそれは、ちょっと・・・ね。」
それはいかがなものかと言いたげに真奈美と目を合わせる。
いいたいことを言わずに途中で切るから余計にイラつく。
そんなに悪いことをしてるか、俺?
ファンなら水着のポスターくらい普通だろ!
ネチネチ言いやがって。
今も貼ってりゃ言われてもしかたないけど、気を遣ってはずしたのに。
ヤケになってしまった。
「わかったよ。明日から真奈美と由衣の水着のポスターにする。それならいいだろ。明日にでも撮ってやるから水着持ってこいよ!」
「えっ!」
2人がドン引きする。
すぐに
「スケベ!」
「最低!!」
足早に帰ってしまった。
後悔先に立たず。
反省してます。




