どうなってる?
インターホンが鳴った。
鳴るはずのないインターホンが。
モニターを見る。
由衣だ。
何で?
慌ててカバンを持って出る。
「おはよう、真ちゃん。」
並んで自転車をこぐ。
「昨日ね、妹がね・・・。」
一昨日までと変わらない朝になっている。
どうなってるんだ?
聞きたいけど聞けない。
聞いたら一瞬でこのシュチュエーションが消えてなくなってしまいそうで。
何もなかったかのように俺も演じる。
本当にどうなってるんだ。
ひょっとして昨日のことは俺の夢の中でのことで、本当は昨日という日は存在しなかったんじゃないのか?
いや、俺はパラレルワールドに迷いこんでしまったのか?
もしかしてこれはタイムスリップ?
漫画じゃよくあることだから、現実に起こっても不思議じゃない。
でも、ありえないことばかり考えてもしょうがない。
それでもいろいろ考えてしまって、由衣の話など入ってこない。
それはいつものことだが。
教室に入る。
「真ちゃん、おはよう。」
真奈美が寄って来る。
「どうだった?今朝は。」
「どうって言われても、どうなってるんだかわからないよ。もう一緒に行かないって自分から言っといて由衣が来たし。」
「それ、嫌なの?」
「嫌じゃない。」
「嬉しいんじゃない?」
「まぁ。小学校のときからずっとそうだったし。」
「やけに素直ね。」
「そうかな。でも何でだろう。」
「なんでって、もとに戻っただけじゃない。」
「もとに?」
「もとの由衣ちゃんに。だから真ちゃんも戻ったらいいだけ。神様がチャンスをくれてるんだから、これを逃したらまた昨日の由衣ちゃんになっちゃうよ。」
「そうなの?」
「そう。それでもいいの?」
「いや・・・。」
「じゃあ、真ちゃんも、ね。」
嬉しいことではあるが、やっぱり何がどうなっているのかがさっぱりわからない。
放課後までずっと「?」が俺の周りを回り続けた。
でも真奈美が言ったことは本当かもしれない。
今が続くように、俺も何もなかったようにもとに戻らないと。
放課後。
「真ちゃん。」
由衣が来た。
これももとに戻っている。
いや違う。
「じゃ、行こうか。」
真奈美が言う。
「うん。」
由衣が答える。
3人で部室に向かう。
これは初めてのパターンだ。
部室には珍しく1年生の三人娘がいた。
しゃべっているだけだが。
「せっかく部室に来てるんだから少しは活動しろよ。」
からかってみる。
「してるよ、真ちゃん。これが私たちの活動だもん。」
萌がおもしろそうに返事する。
「漫研の活動、部活動よ。」
真奈美が突っ込む。
「だから、これが私たちの漫研の部活動。」
咲良がまた同じことを言う。
自分で言っておきながら吹き出している。
真奈美が3人に
「そうだ、もう少しでストーリーができあがるから、また読んでくれない。」
「え~。絵があったらまだましだけどストーリーだけ?真奈美の話っておもしろくないんだよね。」
美鈴が毒舌を吐く。
一番おとなしそうに見えて一番辛辣な子だ。
「そうだよ。私らより彼に読んでもらったらいいじゃん。」
咲良がチラッと俺を見る。
漫研内でも公認になっている。
「何言ってんの、咲良。もう読んでもらってるに決まってるでしょ。」
萌もチラッと俺を見る。
何か含みがあったらたまったもんじゃないが、この3人は明るくて嫌味がないから、話していても聞いていても楽しい。
つい3人のペースに巻き込まれて、俺たちも雑談だけで活動が終わってしまった。
一昨日までのように由衣と帰る。
真奈美は反対方向だ。
やはり気になる。
今日のことが。
由衣がしゃべり始めたら止まらなくなるので、その前に聞いてみる。
「なぁ、何があった?」
「何がって?」
「昨日、真奈美と話したよな。」
「うん。」
「それで?」
「別に、特別な話はしてないよ。」
ウソなのはわかるけど、それ以上は聞けない。
もうどうでもよくなってきた。
教えてもらえそうにもないし。
「また真ちゃんの部屋に行ってもいいよね。」
「うん。そんなこと聞かれたの初めてじゃないかな。ちょっとは遠慮してるってこと?」
「ううん。聞いてみただけ。うちにもおいでよ。」
「わかってる。また漫画を読みに行くわ。」
「漫画を読みに?それだけ?」
「じゃあ、どら焼きを食べに。」
「いつもあるわけじゃないよ。」
2人で笑う。
やっぱり俺の毎日はこうじゃないとな。




