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ダメな男

もうそろそろ家を出ないと学校に遅刻してしまう。

ゴールデンウイーク明け初日の今日。

いつもの時間にインターホンは鳴らなかった。

ずっと待っていたが、ついにインターホンが鳴ることはなかった。


自転車をこぎながら、頭の中を思いが巡る。

入学式の翌日に、もう高校生になったんだから一緒に登校するのはやめると宣言して、由衣を残して1人で学校に向った。

なら、その通りになったじゃないか。

その日の放課後、俺の部屋に来た由衣に「高校生にもなって一緒に登校するとか俺の部屋に来るとかおかしい。距離を置け」って言った。

少し前に由衣がそうするって自分から言った。

ならそれでいいじゃないか。

俺が由衣に望んだ通りになったじゃないか。


違う。

そうじゃない。

本当はこんなの望んでいない、1ミリも。

甘えていたんだ、由衣に。

由衣がずっと変わらずに仲よくしてくれるのが嬉しくて恥ずかしくて。

でも、俺の気持ちが少しも伝わらないことが辛くて。

逆切れみたいに関係を断とうとして。

どうしてもっと素直になって由衣を大切にしなかったんだろう。

由衣はいつもやさしく俺のそばにいてくれてたのに。


1人で登校した日もあった。

でも明日は隣に由衣がいるって思うのが当たり前だった。

いや、当たり前だったから、そんなこと考えもしなかった。

でも、明日も明後日もその先もずっと由衣はいない。


教室に入る。

真奈美の前で落ち込んではいられない。

俺に気付いた女子が、近くにいる真奈美に声を掛ける。

「真奈美、彼が来たよ。」

真奈美が振り向く。

「真ちゃん、おはよう。」

親しい友達にはもう話しているんだ。

いや、もうあの日に言ったのかも。

「今日も部に行くよな。」

「うん。休み中にかなりできてきたよ。」

「そう。できたらまた読ませて。」

「うん。また感想聞かせて。」

「わかった。俺のも読んでくれよな。」

「うん、読ませて。」

自分の机に向う。

「朝から暑いな~」

真奈美にそんな声が飛んでいた。


放課後、由衣は誘いに来ない。

真奈美と部室に行く。

だれもいない。

「由衣ちゃん、今日は?」

「さあ、知らない。」

「何も聞いてないの?」

「うん。」

「何で?一緒に来たんでしょ。」

答えないと。

その答えにはイエスかノーで答えることはできる。

答えはノーだ。

でもそう答えたら次の質問が飛んでくることがわかっている。

そしてまた次のが。


俺が答えないのを訝しそうにする真奈美。

「由衣ちゃんと何かあったの?」

ストレートに聞いてくる。

どこからどう答えたらいいのか。

「あったんだ。何?」

沈黙はイエスになってる。

「それ、私が絡んでるでしょ。」

またもやどう答えたらいいんだ。

「やっぱりそうなんだ。」

何も答えていないのに会話が進む。

「私のこと、言ってるよね。」

「うん。」

これは事実で隠してもしょうがない。

「で、由衣ちゃん、何て?」

「彼女ができたんだから、一緒に学校行くのや俺の部屋に来るの、やめるって。真奈美に悪いって。」

「何で。私、そんなこと思ったこともないよ。」

「きちんとしないとって言われた。」

「きちんとって何?私、由衣ちゃん好きだし、由衣ちゃんと真ちゃんと私で部室で話したりするのすごく楽しいよ。ずっとこのままでいたいよ。真ちゃんと由衣ちゃんにも今までもままでいて欲しいよ。どうして・・・。」

気持ちが昂って言葉に詰まる。

自分を落ち着かせるように、真奈美がふーっと大きな息を吐く。

「どうしようかな。由衣ちゃんと話したいな。このことで真ちゃんが落ち込んでるし。」

「えっ?」

「こんな真ちゃん、見てられないよ。」

「ごめん。」

「謝らないで。休み前の関係に戻りたいな。それが無理でも少しでもそれに近い関係に。今日、LINE送ってみる。」

いい子だな、真奈美は。

行動力もあるし。

それに比べて俺は本当にダメな男だ。

自分からは何もできない。


その夜、真奈美から由衣にLINEが入った。

「由衣ちゃん、会って話がしたい」

「何の話?」

「そのときに言う」

「真ちゃんのこと?」

「それもある。でもそれだけじゃない」

なかなか返事がない。

「わかった。明日部室に行く」

「ありがとう。待ってる」

「1人で来てね」

「うん」


そのことを知らせるLINEが真奈美から俺に入った。

そうか。

そうなったか。

よかった。

真奈美と由衣が話ができそうで。

真奈美に感謝だ。

それと同時に自分のダメぶりに情けなくなる。

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