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現実

朝、目覚めてすぐに思った。

昨日のことは現実だったのだろうか。

ここのところそんな感覚が多い。

よほど今までに経験したことがないようなとんでもないことがたくさん起きているからだろうな。


スマホを手に取る。

LINEを開く。

一昨日のやり取りや昨日の夜のがしっかりと残っている。

やっぱり現実だったんだ。

そのときLINEの通知音が鳴った。

由衣からだ。

「起きてる?」

「うん。今起きたところ」

「もう少ししたらそっちに行っていい?」

目的がわかっているから面倒だ。

でも無下にはできない。

「いいよ」

「じゃ」

それで終わった。

とりあえず顔を洗って何か食べておこう。


20分ほどしてインターホンが鳴った。

部屋の窓を開けて下に向かって叫ぶ。

「鍵は開けてる!」


由衣が入ってきた。

今日はデニムのスカートでかなり短い。

いつもならそれをチラ見しながら話をするのだけど、今日はそんな余裕すらない。

由衣をこんなに警戒するのは初めてだ。

いつものようにベッドに座る由衣。

どこから攻める気だ?

「どうだった、昨日は?」

あまりにもざっくりとしたことを聞かれて、何を答えたらいいのかわからない。

「楽しかった?」

「ああ。」

とってもは付けない。

「もう。いろいろ聞かせてよ。」

もどかしいのがわかる。

まずはあのことを言っておかないと。

休みが明けたら、やがてはクラスのやつらや漫研の連中にもわかることだし。

そしたら由衣にも当然バレることになる。

何ですぐに教えてくれなかったのかと怒られることは必至。

なら先に言っておくのが得策だ。

「真奈美と付き合うことになった。」

「そうなの。・・・えっ?ええ~!!」

由衣は人の話を聞き流して生返事をすることがよくある。

おそらく今のも。

で、事の大きさがわかってびっくらこいだといったところか。

「ほんと?」

「うん。」

「私を驚かせといて、後でウソだよーんとか言う気じゃないよね。」

「そんなんじゃない。本当。」

由衣がしばらく黙る。

現実を受け入れるのに時間が掛かっているようだ。

目をパチパチさせている。

すぐに落ち着きを取り戻すと、興味津々が服を着て俺に詰め寄ってきた。

「どっちが先に告ったの?」

「真奈美からかな?そういう話をしてきたのは。好きって言ったのも。でもはっきり告ったのは俺から。」

「何て告ったの?」

「付き合ってくれないかって。」

「え~真ちゃんがそんなこと言うんだ。」

由衣の顔が赤くなる。

何だそれ。

お前に言った訳じゃないのに。

ん?

何でこんな恥ずかしい話を俺は普通に話してるんだ。

マズいな、小学校のときからずっとそうだ。

由衣には何でもそのまま話す癖がついてしまっている。

このままでは聞かれていないことまでしゃべってしまいそうだ。

気を付けないと。

必要最小限にしないと。

「どこに行ったの?」

「映画。」

「どこで告ったの?」

「ファミレス。」

「うっわーすごい。」

何がすごいのかわからないが、一段とテンションが上がる。

「二人でファミレスなんて上がるだろうなー。」

一人で興奮している。

「本当にこれまでに真奈美ちゃんと何もなかったの?」

あのことは言わない方がいいというより言えない。

そう考えた分、少し間が空いてしまった。

「うん。」

「またウソついた。」

「ウソじゃない。」

「ウソよ。わかるもん。」

「わかったよ。でも言えないこともある。真奈美のことでもあるし。」

由衣が一呼吸空ける。

「そう、だよね。何でもは言えないよね。」

しつこく聞いてくるかと思ったが、意外にすんなりと引いてくれた。

「休み中にまたどこかに行くの?」

「それは決めてない。明日はおばあちゃんのところに行くって言ってた。神戸の。」

「そう。早く決めないとお休みが終わっちゃうよ。あと3日になっちゃったし。」

「そう言われてみたらもともと5日しかないもんな。明日の昼で折り返しって信じられないよ。で、お前はどこかに行ったりしないの?」

「明日、中学のときの友達に会うよ。ヨッちゃんとカナに。」

俺も知ってる子で、商業に行った子と私立に行った子だ。

「そうか。よろしく言っといて。」

「うん。」

「真ちゃんとどこかに行きたいなって思ってたけど、もうそれはNGになっちゃったね。」

そうなるのか?

春休みは一緒に水族館に行ったっけ。

もうそういうのさえなくなるのか?

「もうここには来ない。朝も別々に行こう。真ちゃん、ずっとそうして欲しいって思ってたんでしょ。それに、悪いし。」

真奈美にか?

まさか、由衣の方からそんなことを言うなんて。

「待てよ。そんなこと・・・」

その次の言葉がありすぎて選べない。

「ダメだよ、ちゃんとしないと。すぐにフラれちゃったらしゃれにもならないよ。」

無理して笑ってるが目は潤んでいる。

「じゃあ帰るね。」

返す言葉が見つからない。

返事をするだけでよかったのかもしれないが、そうしたら由衣が言ったすべてを受け入れたことになるから。


由衣が帰って一人になると、頭が完全にフリーズしてしまった。

何も考えられない。

少しずつ整理できるようになってきたら、全てが変わってしまうことに気付いて、心が押しつぶされそうになる。

真奈美のことは好きだ。

あんなかわいい彼女ができてこんなに嬉しいことはない。

でも、由衣とはただの幼馴染でさえなくなってしまった。

こんなことになるなんて。

真奈美との新しい関係を深めながら、由衣とも今の関係でいたいなんて虫がよすぎるのか。

現実は厳しいな。

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