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2.勇者の血筋

(あっ…終わったわ。)


 せめて測定器を隠してからエルに助けを求めるべきであった…それも今となっては後の祭りである。


 ロイドの脳内にこのあと起こる未来を数十通り駆け巡った。そのうち3つほどは最悪の結末、残りは口にするのことも悍ましい末路であった。


「誰がこれをやったのかと聞いているのだよ。ロイド君?」


 とても透き通るような美しい声がロイドの耳を駆け抜けていくが、ロイドの汗は止まることなく背中を流れ続けている。


「あ、あたしです!」


 その時、猛獣、もとい可憐な少女が手を挙げて申し出た。ロイドにはそれが自殺行為としか見えなかったが、想像していた未来とは別の反応がエルから出たのであった。


「すばらしい!!これは並大抵の攻撃では傷一つつかないように設計しているのだ。それをここまでにするとは…」


 金髪の悪魔、エルはまるで宝石でも見るかのように所々から煙を出し、間の抜けた音を出し続けるガラクタを見つめていた。


「いやぁ、そんなそんな。照れちゃいますよ。」


 同じくロイドが猛獣扱いする少女アリサも顔を赤らめてなんだかクネクネしている。


「あの…すいません。これって俺の責任とかには…」


 置き物と化していたロイドは恐る恐るエルに問いかけるとようやくガラクタから目を離した。


「責任?ああ、そうだね。ここまでなるのを止められなかったから給料から差し引かせてもらうよ。」


 余計なことを聞くんじゃなかった。いや、この程度で済んでよかったのか?ロイドが意味もない思考を巡らせている間に、エルは少女に近づいていた。


「それにしても君は一体何者だ?名前は何という?」


 エルは興奮を抑えきれないのか、顔を近づける。アリサもまんざらでもないのか引こうともしない。事情を知らない人間がこの絵面を見るとしばらく見惚れることだろう。


「アリサ・コレットといいます!冒険者登録で来たんですけど。」


「コレット…コレット…。」


 何か思い当たる節があるのか、エルは考える素振りを見せる。そしてハッとした顔で再びアリサに問いかける。


「コレットというのはあのコレット家か!」


「えっと、たぶん、恐らく、そのコレット家です!」


 二人の成り立っているようなそうでないような会話にロイドが割り込む。


「その、コレット家ってなんなんですか?あと、弁償はどうにかなりませんか?」


「悪いが弁償については無理だ。諦めてくれ。そしてコレット家というのは魔王様に挑んだ勇者、レイバック・コレットの一族ということだ。」


 レイバック…エルが書いた近代史に載っていた名前だということを思い出したロイドはアリサをまじまじと見つめた。そしてアリサはロイドに少し嫌悪感を抱くのだった。

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