表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
@@@《滅びの王国と記憶の継承者》  作者: 米糠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/57

@41  地下区画への潜入

 


 @ 地下区画への潜入


 オルディア連邦の地下区画――そこは、表の賑わいとは無縁の闇が支配する場所だった。かつて貿易の要所として栄えたものの、時代とともに忘れ去られ、今では犯罪者や密輸業者が暗躍する迷宮のような区画となっている。


「本当にこんな場所に帝国の研究施設があるのか?」レオンが眉をひそめながら周囲を見回す。


「帝国が表立って活動できない以上、こういう裏の世界を利用するのは理にかなっているわ」カイが低い声で答えた。「オルディアの評議会の目を欺くには、表向きはただの廃墟に見える場所のほうが都合がいい」


「問題は、どうやって施設に侵入するか、ね……」セリスは辺りを慎重に観察しながら呟く。


 ミアが懐から小さな紙片を取り出し、そっと広げた。


「この地図によると、施設への入口は廃墟の奥にある“封鎖された地下道”の先にあるみたい」


「封鎖ね……となると、普通のルートでは入れないってことか」ライルが顎に手を当てて考える。


「鍵がかかっているか、あるいは帝国の兵が見張っているか……どちらにしても、強行突破は避けたいわね」


「なら、俺に任せろ」カイが不敵に笑い、腰の道具袋を軽く叩いた。「帝国の連中がどんな仕掛けを用意していようと、俺の手にかかれば開かない扉はないさ」


「……なら、慎重に行きましょう」セリスは決意を込めて頷いた。


 四人は物陰に身を潜めながら、廃墟の奥へと進んでいった。通路の先には、苔むした鉄扉が重々しく佇んでいる。


「ここが入口か」レオンが低く呟く。「……帝国の研究施設にしては、随分と古びているな」


「表向きは廃墟だからね。でも、鍵がかかっているなら間違いなくここが正解よ」ミアが言う。


 カイはしゃがみ込み、扉の鍵穴を観察した。


「ふむ……単なる錠前じゃないな。魔法で強化されてる」


「帝国の術式ね……解除できる?」セリスが問うと、カイはニヤリと笑った。


「もちろん。時間をくれればな」


 カイが細い金属の工具を取り出し、鍵穴に差し込んだ。カチャカチャと細かい音が響き、時折、指先から微かな魔力が流れ込む。


「……なるほど、帝国の奴ら、こんな小細工を仕掛けてやがったか」


「どういうこと?」ライルが尋ねる。


「魔法で仕掛けられた罠が組み込まれてた。下手に開けようとすると、ここにいる奴ら全員に警報が響き渡る仕組みだ」


「慎重に頼むわよ」ミアが念を押す。


「安心しろ。俺を誰だと思ってる?」カイは自信ありげに微笑み、細かい手つきで鍵を操った。


 やがて――


 カチリ


「……よし、解除完了だ」


 扉が静かに軋みを上げながら開いた。その先に広がるのは、薄暗い地下への階段。冷たい空気が肌を刺すように漂っていた。


「気を引き締めて。ここから先が本番よ」セリスは一歩踏み出し、暗闇へと足を進めた。


 帝国の研究施設――そこには、彼女たちの知らない“新たな脅威”が待ち受けていた。


 @ 帝国の研究施設


 階段を下りると、そこは湿った空気が満ちる薄暗い通路だった。壁には苔が生え、床にはかつての文明の名残のような石畳が敷かれている。しかし、その先に広がるのは決して廃墟ではなかった。


「……明かりがあるな」ライルが低く囁いた。


 通路の奥には、かすかに灯る魔導ランプの光が揺らめいている。帝国がここを拠点として利用している証拠だ。


「慎重に行こう。見つかれば一巻の終わりだ」セリスは声を潜めた。


 四人は物音を立てないように足音を消しながら進んでいった。


 やがて通路の先に、鉄柵のような扉が現れた。扉の向こうには広い空間があり、数人の帝国兵が見張りについているのが見えた。


「……この先が施設の本体か」レオンが呟く。


「正面突破は無理ね。別のルートを探さないと……」ミアが言いかけた、その時だった。


 ──ギィィ……


 突然、通路の奥から軋むような音が響いた。


「……誰か来る」カイが素早く壁際に身を寄せる。


 セリスたちも反射的に物陰に身を潜めた。


 そして、通路の奥から現れたのは──


「……白衣の男?」


 帝国兵に囲まれるようにして歩いてきたのは、一人の研究者らしき男だった。彼は痩せた体に白衣をまとい、顔には疲れの色が滲んでいる。


「間違いないな……帝国の研究員だ」ライルが低く囁く。


 研究員は帝国兵に促されながら、鉄柵の扉の前に立つと、腰にぶら下げていた魔導式の鍵を取り出した。それを鍵穴に差し込むと、扉は音もなく開く。


「……あの鍵があれば、中に入れるな」カイが鋭く呟く。


「どうする?」ミアがセリスを見た。


 セリスは数秒考え──小さく頷いた。


「鍵を奪うわ。でも、騒ぎは起こさずにね」


 カイが不敵に笑う。「了解。俺の腕の見せ所だな」


 そして、セリスたちは静かに動き出した──。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ