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@@@《滅びの王国と記憶の継承者》  作者: 米糠


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@37   迷宮の奥へ—さらなる試練と記憶の解放

 


 @  迷宮の奥へ—さらなる試練と記憶の解放


 封印された扉が開き、セリスたちは慎重に中へと踏み入れた。そこはかつての王国の遺跡。時間とともに崩れかけた柱や壁が並び、薄暗い空間には古の魔力が漂っている。


「ここが……“聖なる泉”の手がかりが眠る場所か」ライルが周囲を警戒しながら呟く。


「見た感じ、ただの遺跡じゃなさそうね」ミアが壁に刻まれた紋様を観察する。「この模様……王家の紋章に似ているわ」


「でも、そう簡単には進ませてくれないって雰囲気だな」カイが苦笑しながら遺跡の奥を覗き込む。


 その言葉通り、次の試練がすぐに襲いかかってきた。


 遺跡の奥から、低く響く唸り声が聞こえた。


 ゴゴゴゴ……!


 壁に埋め込まれていた石像がゆっくりと動き出し、青白い光を帯びながらセリスたちの前に立ちはだかる。


「動く石像、ね……!」ミアが鋭く目を細めた。「ただの魔力じゃないわ。これは、王家の守護者よ!」


 王の番人——古代の守護騎士


 身の丈を超える大剣を構え、セリスたちに敵意を向ける。


「つまり、突破しないと先には進めないってことか」ライルが剣を抜く。


 ギィィン!


 守護者が動いた。巨大な剣を振り下ろし、地面を割るほどの衝撃が遺跡内に響く。


「くっ……重すぎる!」ライルが剣で受け止めるが、衝撃で後退する。


「ならば、俺が行く!」レオンが獣のような機敏な動きで守護者の背後に回り込む。「風牙裂斬!」


 ザシュッ!


 レオンの鋭い爪が守護者の背を切り裂いた。しかし——


「効いてない……?」レオンが驚愕する。


 守護者の体が瞬時に再生する。


「普通の攻撃じゃ倒せない……ならば!」セリスが剣を構える。「“記憶の継承”——王の剣の力!」


 青白い光が剣に宿り、セリスは一気に跳躍した。


「王の断罪——輝ける刃!」


 守護者の中心へと剣が突き立てられる。青白い光が広がり、守護者の魔力が徐々に薄れていく。


「……王家の力……確認……試練……突破……」


 守護者の声が響き、光となって消滅した。


「……突破したみたいね」ミアが安堵の息をつく。


 その瞬間——奥の壁が開き、隠された部屋への通路が現れた。


「ここが、目的の場所か?」カイが慎重に足を踏み入れる。


 そこは広い石造りの部屋。中央には王家の紋章が刻まれた台座があり、その上には一冊の古びた書物が置かれていた。


 セリスがゆっくりと近づき、その本を手に取る。


「これは……!」


 ページをめくると、そこには古代文字で書かれた文献が並んでいた。


 “聖なる泉——王家の血が開く、記憶の源”


「“記憶の源”……?」ライルが覗き込む。


「ここにあるわ。“聖なる泉”は……帝国の支配するアヴァルス峡谷の地下に存在する……」ミアが文字を解読しながら呟く。


「帝国の支配下か……やっぱり簡単にはいかないな」カイが肩をすくめる。


 セリスは本を握りしめる。この泉に辿り着けば、全ての記憶を取り戻せるのかもしれない——


 その時——


 視界が揺れた。


「っ……また……記憶が……!」


 セリスの頭の中に、強烈な光景が流れ込んできた。


 ——王城の大広間。父王が厳かな表情で語る。


「セリス、王家には最後の使命がある」


「聖なる泉の力を継ぐことができるのは、王家の血を引く者だけ……」


 ——場面が変わり、炎に包まれた玉座の間。剣を持つ帝国の宰相・ガルヴァン・ローゼンが、冷たい目でこちらを見下ろしていた。


「王家の血筋は、この世から消し去る。記憶の継承など、決して許さぬ……!」


 ガルヴァンが剣を振り下ろし、王の書庫が崩壊する光景——


「っ……!!」


 セリスは息を荒くしながら、現実へと戻ってきた。


「セリス!  どうした!?」ライルが肩を支える。


「私は……私は……!」セリスは震える手で古文書を握りしめる。


 そして——瞳に確かな決意を宿し、仲間たちを見つめた。


「“聖なる泉”へ行くわ……帝国に奪われた、王家の記憶を取り戻すために!」


 その言葉に、ライル、ミア、カイ、レオンの四人も力強く頷いた。


 こうして、セリスたちは新たな目的地へと向かうこととなる——帝国の支配下にある“アヴァルス峡谷”へと。



 *** 帝国との決戦に向けて


 交易都市の夜は活気に満ちていた。市場の明かりが通りを照らし、行き交う人々のざわめきが空気を満たしている。しかし、セリスたちにとっては、ここでの時間はもう長くはなかった。


「帝国支配下のアヴァルス峡谷に向かう」——それは、決して容易い旅ではない。


 帝国の監視をかいくぐる手段、戦いに備える装備、そして何より“聖なる泉”に関するさらなる手がかりが必要だった。



「さて、まともにやり合うつもりなら、しっかり準備しておかないとな」ライルが腕を組み、鍛冶屋を見上げる。


「俺も賛成だ。帝国の連中は強い。手ぶらじゃ厳しいな」レオンが鋭い目で周囲を見渡した。


 鍛冶屋の店主は頑固そうな老職人だったが、ライルとレオンの体格と目つきを見て、一流の戦士だとすぐに察したようだ。


「お前さんたち、ただの旅人じゃねえな」


「まぁな」ライルが肩をすくめる。「剣と防具を見ていきたい。できれば、対魔法戦にも耐えられるものがいい」


「ほう……なら、こいつはどうだ」


 店主が取り出したのは魔法耐性を持つ合金製の鎧だった。


「これは帝国の兵士たちも使う最高級品だ。簡単には手に入らねえが……お前さんたちなら、安くしとくぜ」


「助かる。ありがたい」ライルは礼を言い、鎧を受け取った。


「おっさん、俺には何かあるか?」レオンが腕を組む。


「お前さんは……そうだな、獣人の力を活かせる“魔導篭手”なんてのはどうだ?」


「ほう……」レオンは篭手を手に取り、しっかりと装着する。「これなら魔法攻撃も防げるな。気に入った」


 こうして、ライルとレオンは装備を整えた。



 一方、カイとミアは交易都市の裏通りへと足を踏み入れていた。


「いい情報が手に入るといいけど」ミアが不安げに言う。


「大丈夫、大丈夫。こういうのは俺の得意分野だ」カイが軽くウインクをしながら先導する。


 彼らが訪れたのは、情報屋が集まる酒場だった。店内にはさまざまな種族の人間が集い、ひそひそと密談を交わしている。


 カイはカウンターに座り、店主に銀貨を一枚滑らせた。


「ちょっと聞きたいことがあるんだがな……“アヴァルス峡谷”について、何か知ってるか?」


 店主は銀貨を手に取り、カウンターを拭きながら答えた。


「最近、帝国の動きが活発になってるって噂だ。特に……新たな禁制区域ができたらしいぜ」


「禁制区域?」ミアが眉をひそめる。


「そうだ。普通の兵士すら近づけない場所だとか。そこには……何か“特別なもの”があるらしい」


 ミアとカイは顔を見合わせた。


 “聖なる泉”がある場所こそ、帝国が警戒を強める理由なのではないか——


「なるほどな。助かったよ、親父さん」カイが笑って銀貨をもう一枚渡した。「これは礼だ」


 こうして、帝国が“聖なる泉”を厳重に管理していることが明らかになった。



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