表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
@@@《滅びの王国と記憶の継承者》  作者: 米糠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/57

@15  王の技と将軍の誇り



 @  王の技と将軍の誇り



セリスの剣が閃き、ヴァルドリッヒの刃と激しく交錯した。


 ガキィン!!


 剣圧がぶつかり合い、衝撃波が周囲の瓦礫を吹き飛ばす。


 セリスの動きは、明らかに今までとは違っていた。


 ——これは、私の技じゃない。


 ——王の記憶が、私に教えてくれている。


 彼女の身体が無意識に、かつての王が操っていた剣技をなぞる。


 ヴァルドリッヒは目を細めた。


「なるほど……確かに王族の力、‘記憶の継承’は侮れん。だが——」


 彼は一歩踏み込み、巨大な剣を横薙ぎに振るう。


 その一撃は、まるで暴風のような破壊力だった。


 セリスはそれを見切り、すんでのところで回避する。


 しかし——


「——ッ!」


 完全にかわしきる前に、強烈な衝撃波が体を叩きつけた。


 ドンッ!!


 セリスは地面に転がる。


 ライルが即座に駆け寄ろうとするが——


「動くな、小僧」


 ヴァルドリッヒが剣を肩に担ぎながら、威圧的に言い放った。


「これは——王族の戦いだ」


 その言葉に、ライルは悔しそうに歯を食いしばる。


 セリスは痛みを堪えながら立ち上がった。


 ——私は、まだ負けてない。


 ヴァルドリッヒの目がわずかに細まる。


「……立つか。ならば問おう——」


 彼は剣を正眼に構え、静かに言葉を紡ぐ。


「お前は、王として何を成そうとする?」


 その問いに、セリスは息を整えながら答えた。


「私は……この力を、過去を知るためだけじゃなく、未来を選ぶために使う!」


 彼女の瞳が強く輝く。


「エルセリアの真実を知り、その上で——私が望む道を選ぶ!」


 ヴァルドリッヒは一瞬、沈黙した。


 そして——


「クク……面白い」


 彼は不敵に笑うと、再び剣を構えた。


「ならば見せてみろ、お前の‘王の剣’を!」


 次の瞬間、二人の剣が再び激突する——!


 ガキィン!!


 衝撃が走り、足元の石畳が砕ける。


 ヴァルドリッヒの剣は重く、速い。

 一撃ごとに圧倒的な威圧感を伴い、まるで戦場を切り拓く巨人のようだった。


 それでも、セリスは引かなかった。


 王の記憶が導くままに、彼女は相手の刃をいなす。


 カンッ、カンッ!


 鋭い剣戟が響く。


 ヴァルドリッヒは僅かに目を細めた。


「……なかなかやるな」


 戦いの中で、セリスの動きが研ぎ澄まされていくのを感じていた。


 先ほどまでぎこちなかった動きが、徐々に洗練されていく。

 それは、彼女自身の成長であり、記憶の継承によるものでもあった。


 だが——


「まだ甘い!」


 ヴァルドリッヒが一歩踏み込み、強烈な突きを放つ。


 セリスは咄嗟に回避するも、僅かに肩をかすめ、鋭い痛みが走る。


「くっ……!」


 その一瞬の隙を突き、ヴァルドリッヒの大剣が振り下ろされた。


 ドゴォッ!!


 地面が抉れ、爆風のような衝撃が周囲に広がる。


 ライルが叫んだ。


「セリス!!」


 だが、セリスは土煙の中から立ち上がっていた。


 目には揺るぎない決意が宿っている。


「……あなたは強い。でも——」


 彼女は剣を両手で握り直し、静かに息を整えた。


「私も、負けるわけにはいかない!」


 その瞬間——


 セリスの銀髪が、かすかに金色に染まり始めた。


 ヴァルドリッヒの瞳が僅かに見開かれる。


「……ほう?」


 王の力が覚醒しようとしていた——。


 セリスの髪が淡く金色に染まり、その青い瞳には王の意志が宿っていた。


「ほう……それが《記憶の継承》か」


 ヴァルドリッヒは剣を構え直す。


「ならば、その力が本物かどうか、この剣で試させてもらおう」


 ヴァルドリッヒが疾風のように踏み込んだ。

 大剣が空を裂き、圧倒的な力でセリスを襲う。


 しかし——


 カンッ!


 鈍く響く音とともに、セリスは確かにその一撃を受け止めていた。


 ヴァルドリッヒの目が僅かに細められる。


「……さっきまでとは別人のようだな」


 セリス自身も驚いていた。


 身体が軽い。視界が広がる。

 剣の動きが、まるで手足の一部のように自然に感じられる。


 ──これは、かつての王たちの戦いの記憶……!


 彼女の意識の奥底で、無数の剣閃が交錯する。

 かつての王たちが戦場で振るった剣戟が、彼女の中に流れ込んでいた。


 ヴァルドリッヒが次の一撃を放つ。


 セリスは一歩踏み出し、鋭い回転とともにその剣をいなした。


「なにっ——」


 ヴァルドリッヒの体勢が崩れる。


 その隙を逃さず、セリスは刃を閃かせた。


 シュッ——


 風を切る音。


 ヴァルドリッヒの頬に、浅く一筋の切り傷が走る。


 それを感じた瞬間——


 彼は、笑った。


「……なるほど。これは、面白くなってきた」


 ヴァルドリッヒの闘気が、一段と高まる。


 それを見て、セリスも覚悟を決めた。


 ここで退けば、王の道は閉ざされる。


 だから——


「来なさい、ヴァルドリッヒ!」


 ヴァルドリッヒの目が鋭く光る。


「上出来だ、セリス・エルセリア」


 彼の大剣が大地を砕くような勢いで振り下ろされる。


 セリスは即座に後方へ飛び退き、剣を構え直した。

 彼女の中に流れる記憶——エルセリア王家の歴代の戦いの軌跡が、次の動きを導いていた。


 (この剣は、ただの武器じゃない。これは、王の意志……)


 目の前の敵は、決して侮れぬ強敵。

 だが、今の彼女には確かな自信があった。


「王の剣が、私を導いてくれる……!」


 ヴァルドリッヒの攻撃が、矢継ぎ早に繰り出される。


 しかし——


 セリスの身体は迷いなく動いていた。

 剣が空を裂き、確実にヴァルドリッヒの刃を受け流す。


「……悪くない。いや、むしろ驚いたぞ」


 ヴァルドリッヒが僅かに笑みを浮かべる。


「だが——まだ足りない」


 彼の瞳が猛禽のように鋭く光り、一瞬で間合いを詰める。


 (しまっ——!)


 気づいたときにはもう遅かった。


 ヴァルドリッヒの膝蹴りが、セリスの腹部を強かに打つ。


「——ぐっ!」


 衝撃が全身を駆け巡る。

 セリスの身体が宙を舞い、地面に叩きつけられた。


「セリス!」


 ライルの声が響く。


 立ち上がろうとするが、身体が思うように動かない。

 ヴァルドリッヒの圧倒的な戦闘技術が、彼女との力量差を見せつけていた。


「まだまだ甘いな、王の継承者」


 ヴァルドリッヒがゆっくりと歩み寄る。

 彼の剣先がセリスの喉元に向けられる——


 だが、その時——


 ピシッ……!


 空気が揺らぐような気配が走った。


「……何?」


 ヴァルドリッヒが眉をひそめる。


 セリスの周囲に、淡い光が満ちていた。

 そして——


 彼女の瞳に、新たな記憶が流れ込んでくる。


 ——王よ、誇りを忘れるな。我らが剣は、民を守るためにある。


 (これは……かつての王の記憶……!?)


 視界が鮮明に広がる。

 身体の痛みが薄れ、剣を握る手に力が戻る。


「……なるほど」


 ヴァルドリッヒが剣を構え直す。


「ようやく、次の段階に進めそうだな」


 宿命の戦いは、ここからが本番だった——!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ