@14 王の剣と将軍の刃
@ 王の剣と将軍の刃
セリスの手に握られた剣は、淡い光を帯びていた。まるで彼女の決意に呼応するかのように。
ヴァルドリッヒ・カインツは、その光をじっと見つめた後、低く笑った。
「なるほど……王家の剣か。エルセリアの血を引く者として、相応しい武器を手にしたというわけだ」
そして、一歩前に出る。
「だが——それが貴様の生死を分けるほどの力を持つとは限らん」
彼の足元の土がわずかに沈む。
その刹那——ヴァルドリッヒの姿が消えた。
「——ッ!?」
セリスの目には、彼の動きがまるで見えなかった。
「セリス!」
ライルが叫ぶと同時に、ヴァルドリッヒの刃が迫る——
だが、その時、セリスの剣が自ら動くように輝いた。
ガキィン!!
火花を散らして、ヴァルドリッヒの剣が弾かれる。
「ほう……?」
ヴァルドリッヒが微かに目を細めた。
セリス自身も驚いていた。まるで剣が導くように、彼女の腕が動いたのだ。
「これは……」
頭の中に、誰かの記憶が流れ込んでくる。
——王の剣を握る者に伝えられる、過去の剣技。
それは、かつてエルセリア王国の騎士たちが磨き上げた剣の記憶。
「セリス……お前ならできる」
遠い記憶の中、王の騎士が微笑む。
「剣はただの武器ではない。お前の意志が、その刃を導くのだ」
——そうだ、私はもう逃げる者じゃない。
セリスは深く息を吸い込むと、王の剣をしっかりと握った。
「……行くよ!」
今度は、セリスの方から踏み込む。
ヴァルドリッヒの目が鋭く光る。
「ほう……!」
セリスとヴァルドリッヒの剣が交錯し、火花を散らしていた。
「フン……思った以上にやるな、小娘」
ヴァルドリッヒは、戦いの中でセリスの成長を感じていた。
——いや、違う。
彼女の剣は、もはや”彼女一人”のものではない。
「王の記憶……か」
ヴァルドリッヒは低く笑う。
「だが——まだ甘い!」
次の瞬間、彼の剣がまるで雷のような速さで閃いた。
セリスは反射的に剣を構え、防御する。
ガキィン!!
衝撃が腕に伝わる。
ヴァルドリッヒは一歩も引かず、さらに刃を振るった。
「セリスッ!」
ライルの声が聞こえた。
だが、セリスは逃げなかった。
——逃げない。私はもう、王族として戦うと決めたんだから。
彼女は剣を強く握りしめ、ヴァルドリッヒの攻撃を受け止めた。
その瞬間、剣が再び輝き——
記憶が、溢れる。
目の前に広がるのは、遠い昔の王国の光景。
戦場に立つ、一人の騎士。
《王の剣》を手に、敵を退ける姿。
その戦い方、その技……
「……わかった」
セリスは目を開いた。
そして——
「——これで終わりよ!」
彼女の剣が、王家の技とともにヴァルドリッヒに迫る!




