世界中のカレンダーが止まった日
俺は人生の成功者だった。若くして研究が成功し、メディアからの取材の連絡が後を絶たない。そんな順風満帆な人生を送っていたはずだった、今日までは。
「ユリス・レジェだな、お前を窃盗罪で逮捕する」
ある日、急に警官が家に訪れたと思ったらそのまま刑務所に連れて行かれた。他人の研究を盗んだ窃盗罪だそうだ。意味が分からない、そもそも盗んでないし、いきなり刑務所っておかしいだろ。
「おい! 俺は盗んでない! 裁判をしろ、裁判を!」
いくら叫べど刑務官は無視し、ただ食事を運んでくるだけだ。クソっ、こうなったら脱走するしかない。俺の人生をここで終わらせるもんか!
この刑務所は、一つの檻に五人の罪人がいた。そいつらも俺と同じように、急に身に覚えのない罪で捕まったらしい……。やはりここは、何かおかしい。
そして俺達の脱獄計画が始まった。五人で計画を立てる。誰一人が欠けても成り立たない計画だ。そして、運命の日は訪れた。
脱獄の途中で刑務官に見つかり、仲間に助けられ、裏切られ、裏切った。出口が見える、あそこにたどり着けば自由だ。もう一緒に逃げた仲間はいない、皆捕まった。最後の力を振り絞り、俺は扉をくぐった。
あぁ、外だ。俺はやりきったんだ。何ヶ月ぶりに見る、ありふれた日常の景色――。
「……ここは……どこだ? 何でこんな……。……えぇ?」
そこは知らない世界だった。前はあったはずの明るい街は消え、寂れた灰色の景色が広がっている。家やビルはほとんどが崩れており、人が誰もいない。訳がわからなくなり下を見ると、まだ使えそうなラジオが落ちていた。何か分かるかもしれないと、電源ボタンを押してみる。
「緊急速報です。我々が生きるこの地球に、小惑星の衝突の危機があることが分かりました。この小惑星が衝突すると、世界中の社会機能が停止すると思われます。それを受け、世界の国々で今の文明を再建できる可能性がある人々を、逮捕という形で特殊シェルターに保護することに決まりました。小惑星の衝突はニヶ月後と予測されています。世界では――」
自分達だけ生き残る。必ず保護されることを受け入れない者が出てくるだろう。だから俺達はこの事を知らされず保護されたんだ。
俺達を閉じ込めていたのは、檻ではなく盾だった。
――小惑星が衝突したその日から、世界中のカレンダーは進んでいない。




