この文芸部にはオタクが集まる
◇
現在、俺がいる場所は東校舎1階にある文芸部の部室前。今更だがこの桜礼学園は西校舎、東校舎に分かれている。
もうかれこれ5分はこの周辺をうろうろ巡回している。
なぜこんなことしてるか、それは、
(すげえ緊張する!)
こういうのってすごい緊張しない!? だってこの中には知らない人が(多分)2人いるんだよ! しかも先輩だよ! そりゃあ緊張するわ!
「(う~~)」
俺は誰にも聞こえないくらいの小さな声でうめき声をあげる。
(美春連れてくればよかった)
気付けばそう考えていた。
(美春がいたら普通に部室の中に入って、雰囲気いい感じにしてすぐに友達になれたのに、なんであいつを部活に行かせた俺!)
自分の妹を何だと思っているのか、そして本当に兄かと思う思考をしているが、翔流の誕生日は5月15日、美春は2月12日。よって残念なことに翔流が兄になってしまっている。
「……」
もう何度目か分からないが、部室のドアの前に立つ。よし、今度こそ入るぞ。
ドアノブ(スライド式)に手を掛け、ドアを開け……ようとしたが、ドアノブから手をはなしてしまう。そしてまた部室の周辺をうろうろする。
(……なにやってんだろ、俺)
約5分間、この周辺をうろうろして、部室に入ろうとして、入らなくて、それをこれで3回繰り返した自分が馬鹿らしくなって、俺は今度こそ部室に入る。
「失礼しm」
「もうだめだ、お終いだ」
「大丈夫だ竹田、まだ1週間だ。廃部まであと2週間はある」
「そんな絶望した顔しながら言われても説得力ねえよ!」
「……」
「「……え?」」
部室のドアに入ったら、机に向かい合わせで突っ伏した2人が絶望した顔をしたまま話していた。
そして3秒ぐらい沈黙が流れた後。
「「入部希望者ですか!?」」
急に椅子から身を乗り出して近づいてきたので、俺は1歩後ずさってから口を開く。
「そ、そうですけど」
「「よっしゃーー!!」」
今度は2人同時に喜んでハイタッチをしている。それほど嬉しいのだろう。
「どうぞ座ってください」
背が少し高く髪型がサイド分けの人は、喜んだ後はすぐに表情を戻し、敬語で椅子に案内される。表情筋どうなってんの? そして少し肌が焼けてる人は、冷蔵庫をあさって「ジュースあるかな?」と言っている。
「それではこれより入部面接を始めます」
「なんか始まったんだけど」
「いいぞ君、この部活ツッコミ役いないから、どんどんツッコんでけ」
なんか始まったと思ったら褒められたんだけど。
「こちらオレンジジュースです」
「あ、どうも」
あ、真面目そうだと思ったけど、この人もボケなのね。
「それではまず名前とクラスを」
「1年2組、竹内 翔流です」
「そすですか、私は竹田 猛と申します」
「私は長高 咲と言います」
竹田さんの隣にいつの間にか長高さんが座ってんだけど。いつ座った?
「では最後の質問です」
「もう最後かよ」
「今期の春アニメは何を見ていますか?」
「GO(正式名所:グリニカル・オンライン)5期にアニ部(正式名所:アニオタ部)、兄妹転生(正式名所:兄妹そろって異世界転生)それから、なつけい(正式名所:夏のけいおん部)、eスポ(正式名所:eスポーツ部の青春物語)………………(23個答えた)ぐらいですかね」
「「合格! これからよろしく!」」
「こちらこそ」
2人が手を差し伸べてきたので、俺はその手を掴んで握手をした。
多分、2人は俺がアニオタかどうか調べたかったんだろうな。だからこんな質問をしたんだろう。
そうして俺はこの文芸部に入った。
これから俺の輝かしい高校生活の青春が今、始まる!
~次の日~
「最近、覇権クラス多いな」
「だな」
「そうだな」
現在、放課後。場所、部室。3人はイスにダラーンとして雑談(ラノベとかの雑談)をしながらラノベを読んでいた。
(……思ってたのと違う)
俺が思い描いていたのは(以下略)。
(けど、こういうのも良いな)
そう思った翔流であった。