字が汚いポスター
「……多いな」
「……そうだね」
掲示板に貼られてるポスターの数を見て俺達は絶句していた。この桜礼学園はそんなに部活は多くないはずなんだが、なぜか掲示板には100枚を超えるほどの部員募集中のポスターが貼られていた。……よく見ると、同じ部活のポスターが何枚も貼られていた。
「……何枚張ってるんだよ」
「……いっぱい入部して欲しいんじゃない?」
「この野球部なんか同じポスター10枚くらい張ってるぞ」
「……まあ野球は人数多い方が有利だからね。多分」
「多分かよ」
美春にジト目を向けつつ、ふと目に入ったポスターに目をやる。
↓イメージ
「字きったな! 掲示板に貼るなら綺麗に書けよ!」
「うわ、なにこれ。汚」
ついそんな声が出てしまった。
妹はその汚いポスターをまじまじ見ていた。え? 読めるの? いやいや、こんなに字が汚かったら読めないでしょ。
「この文芸部、あと1人入部しないと廃部なんだって」
「読めるんかい!」
読めるのかよ! どうやって読んだんだ一体!? ……ちょっとまって今何て言った?
「……今なんて言った?」
「あと1人入部しないと廃部」
「その前」
「この文芸部」
「文芸部!?」
俺はもう一度そのポスターを見る。
「多分お兄が思ってる文芸部じゃないと思うよ?」
「どういゆこと?」
「多分ラノベとかじゃなくて普通の小説とか読むとおm」
「いいや! 違うね! ここにラノベって書いてあるね」
「読めるじゃん」
「そしてここに『オタク話に花咲かせよう』って書いてあるね。うん?」
なんか話の後に『し』って書いてる気がするけど気のせいだよね? 高校生にもなって小学校で習う漢字、間違えないよね? さすがにね? うん、もう一度確認しよう。見間違えかもしれない。
「……間違えてる」
……まあ、誰だって間違えはあるし、そもそも今は入部する部活決めてるんだから字の間違えなんて関係ない。……俺、この文芸部に入部しようかな。
だってオタクがこの部活に2人いるんだよ。入るしかないじゃん。そして友達になって、青春を満喫しよう。
「美春、俺文芸部に入部する」
「いいじゃん、お兄にぴったりだよ」
「それは罵声?」
「褒め言葉だよ」
……とりあえず俺はその文芸部の部室に向かうことにした。
「あ、私部活あるから」
「おう、がんばれ」
「ありがと、じゃあ文芸部の人達によろしくね」
そういって美春は体育館に向かっていく。
美春を見届けてから、俺も文芸部の部室に足を向けて歩き出す。
(どんな人達だろう、いい人達だといいな)
そう思いながら向かう翔流であった。